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真面目に、真剣に
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春さんにマッサージ様に用意した服を渡し、私は準備を進める。
すぐに洗い流す事も出来る様に、風呂場にマットをしく。
これは私が周囲を汚さない自信が無いせいでもある。
準備が整い、あとは春さんが来るだけなので、その前に一つ深呼吸。
これからあの人がやってくる。その姿に動揺しない様に。
「明ちゃん、入るよー?」
そして息を深く吐いたところで、春さんから声がかかる。
返事をする前にもう一つ深呼吸をしてから口を開いた。
「はい、どうぞ」
律儀に私が応えるまで春さんは待って、声が聞こえてからゆっくりと浴場への扉を開く。
そしてその姿を見て、私は固まってしまった。
深呼吸なんか何の意味無い。心なんか落ち着くはずが無い。
今の彼は短パンしか履いていない。上半身は肌だ。
男性だから当たり前なのだけど、それがなんだからすごくやらしい気がした。
看病の時は意識しないですんだはずなのに、春さんの半裸に見惚れてしまう。
こうやって見てみると、意外と筋肉がしっかりしている。
細くて可憐に見えるけど、脂肪が無いからって骨ばってはいない。
なんか、すごく、いけないものを見ている気がしてきた。
「明ちゃん、その、俺どうすればいいかな」
「あ、はい、このマットの上に寝転がってもらえますか?」
春さんに声を掛けられて意識が少し戻り、慌ててマットに転がってくれるようにお願いする。
おかしい。春さんが風邪をひいた時にしっかり見たのに、何でこんなにも照れるんだろうか。
うつぶせに寝転がろうとしている彼の背中を見ているだけで、驚くぐらいドキドキしてくる。
「これで良いかな」
「はい、じゃあ、始めますね」
鼓動の高鳴りを誤魔化す様に、いつも通りの声音で彼に応える。
無駄だと思いながらも、もう一度深呼吸をしてからローションを手にたっぷりをたらす。
そして彼の背中にゆっくりと伸ばしていく。
「あれ、なんかあったかいね」
「温めておきましたから。この方が気持ちいいみたいなんです」
「へぇー」
事前に体温より少し温かくしておいたので、ヒヤッとした感覚にならない。
心地よい温かさのままローションを追加できる。
お母さんで練習して解った事なのだけど、あんまり時間が経つと粘性が無くなってきてしまう。
なので追加で気持ち良さを途切れさせないために温めておいた。
「あー、なんか、今のこれだけですごく気持ちいいかも」
「あはは、それは良かったです」
まず春さんの背面に伸ばしているだけで、春さんは気持ち良さげにしていた。
それがなんだか嬉しくて、春さんの体を触っているという緊張は少し薄まって来た。
よし、この調子でやろう。真面目にやってればそのうち気にならなくなるはずだ。
春さんの体を全て、首元から足の指先まで背面から濡れるところは全て塗っていく。
塗り終わったのを確認して、彼の背中を見る。
それがまずかった。そこで一息つくべきじゃなかった。
「―――――っ」
てらてらとローションで光る彼の背中。
塗りたくっていないとはいえある程度濡れている事ではっきりとわかるお尻の形。
何より短い短パンだという事で、ちらっと見えているお尻のお肉。
ごくりと、唾をのむ自分を感じた。
目の前に好きな男性がほぼ裸に近い格好で寝転がっている。
そんな事実に心臓ががうるさいぐらいに高鳴る。
ほんの少し手を伸ばせば、春さんの――――。
「明ちゃん、どうしたの?」
「―――あ、いえ、すみません、手順を度忘れして、思い返していました」
「あはは、そっか。ゆっくりでいいからね」
「はい、すみません。ありがとうございます」
危ない、今かなり不味かった。
完全に色々と思考が吹き飛んでいた。春さんが声をかけてくれなかったら何をしていたか。
ぶんぶんと頭を振って、先ほど生まれた思考を追い出そうとする。
けど、そう思えば思うほど意識してしまう。
だめだ、忘れようと思って忘れられるわけがない。
今は少し我慢してマッサージをどうにか進めよう。
さっきまで忘れかけてたんだ。作業に没頭すれば大丈夫だ。
そう決心し、春さんの背中に触れる。
「んっ」
「――――っ」
背中に触れると春さんの口から声が漏れた。
そのせいでまた体が熱くなり、心臓があまりにうるさくなっていく。
だめだ。止まるな。手を動かせ。そうしないとまた思考が飛ぶ。
とにかくお母さんで練習したマッサージを始める。今はそれで頭を埋めるんだ。
何とか手を動かし、彼の背中を揉み解していく。
けど、そのたびに彼が気持ち良さそうに声を漏らすせいで、一向に集中できない。
頭の中で「集中集中集中」と繰り返しながら、全く集中できずに、それでも練習のかいあって順調に進んでいく。
そこでふと、彼の声が止まった事に気が付いた。
ある意味夢中になっていたせいで、彼が静かな事に気が付けなかった。
そーっと彼を見ると、彼は寝息を立てていた。
「寝てる・・・」
お母さんも途中で寝ていたし、気持ち良いと寝てしまう物だと言っていた。
という事は、私はきちんとやれていたという事だろう。
良し、そう思うとちょっと落ち着いてきた。
それにねている彼にいたずらなんて、そんな後で罪悪感が湧くことは出来ない。
・・・でもちょっとキスするぐらいは良いよね。
少し狡いかなと思いながら、寝ている彼の頬に軽くキスをする。
既にディープキスもした仲だというのに、それだけでも胸に幸せが込み上げてくる。
ああ、春さんの寝顔可愛いなぁ。
「よし、ちゃんとやろう」
寝ていてもマッサージの効果はある。このまま全身しっかりやってしまおう。
そう決めると、さっきまで頭まで熱くなっていたのが嘘のように治っていく。
そして私の頭の中は「春さんに喜んで貰おう」という思考だけで埋め尽くされていった。
すぐに洗い流す事も出来る様に、風呂場にマットをしく。
これは私が周囲を汚さない自信が無いせいでもある。
準備が整い、あとは春さんが来るだけなので、その前に一つ深呼吸。
これからあの人がやってくる。その姿に動揺しない様に。
「明ちゃん、入るよー?」
そして息を深く吐いたところで、春さんから声がかかる。
返事をする前にもう一つ深呼吸をしてから口を開いた。
「はい、どうぞ」
律儀に私が応えるまで春さんは待って、声が聞こえてからゆっくりと浴場への扉を開く。
そしてその姿を見て、私は固まってしまった。
深呼吸なんか何の意味無い。心なんか落ち着くはずが無い。
今の彼は短パンしか履いていない。上半身は肌だ。
男性だから当たり前なのだけど、それがなんだからすごくやらしい気がした。
看病の時は意識しないですんだはずなのに、春さんの半裸に見惚れてしまう。
こうやって見てみると、意外と筋肉がしっかりしている。
細くて可憐に見えるけど、脂肪が無いからって骨ばってはいない。
なんか、すごく、いけないものを見ている気がしてきた。
「明ちゃん、その、俺どうすればいいかな」
「あ、はい、このマットの上に寝転がってもらえますか?」
春さんに声を掛けられて意識が少し戻り、慌ててマットに転がってくれるようにお願いする。
おかしい。春さんが風邪をひいた時にしっかり見たのに、何でこんなにも照れるんだろうか。
うつぶせに寝転がろうとしている彼の背中を見ているだけで、驚くぐらいドキドキしてくる。
「これで良いかな」
「はい、じゃあ、始めますね」
鼓動の高鳴りを誤魔化す様に、いつも通りの声音で彼に応える。
無駄だと思いながらも、もう一度深呼吸をしてからローションを手にたっぷりをたらす。
そして彼の背中にゆっくりと伸ばしていく。
「あれ、なんかあったかいね」
「温めておきましたから。この方が気持ちいいみたいなんです」
「へぇー」
事前に体温より少し温かくしておいたので、ヒヤッとした感覚にならない。
心地よい温かさのままローションを追加できる。
お母さんで練習して解った事なのだけど、あんまり時間が経つと粘性が無くなってきてしまう。
なので追加で気持ち良さを途切れさせないために温めておいた。
「あー、なんか、今のこれだけですごく気持ちいいかも」
「あはは、それは良かったです」
まず春さんの背面に伸ばしているだけで、春さんは気持ち良さげにしていた。
それがなんだか嬉しくて、春さんの体を触っているという緊張は少し薄まって来た。
よし、この調子でやろう。真面目にやってればそのうち気にならなくなるはずだ。
春さんの体を全て、首元から足の指先まで背面から濡れるところは全て塗っていく。
塗り終わったのを確認して、彼の背中を見る。
それがまずかった。そこで一息つくべきじゃなかった。
「―――――っ」
てらてらとローションで光る彼の背中。
塗りたくっていないとはいえある程度濡れている事ではっきりとわかるお尻の形。
何より短い短パンだという事で、ちらっと見えているお尻のお肉。
ごくりと、唾をのむ自分を感じた。
目の前に好きな男性がほぼ裸に近い格好で寝転がっている。
そんな事実に心臓ががうるさいぐらいに高鳴る。
ほんの少し手を伸ばせば、春さんの――――。
「明ちゃん、どうしたの?」
「―――あ、いえ、すみません、手順を度忘れして、思い返していました」
「あはは、そっか。ゆっくりでいいからね」
「はい、すみません。ありがとうございます」
危ない、今かなり不味かった。
完全に色々と思考が吹き飛んでいた。春さんが声をかけてくれなかったら何をしていたか。
ぶんぶんと頭を振って、先ほど生まれた思考を追い出そうとする。
けど、そう思えば思うほど意識してしまう。
だめだ、忘れようと思って忘れられるわけがない。
今は少し我慢してマッサージをどうにか進めよう。
さっきまで忘れかけてたんだ。作業に没頭すれば大丈夫だ。
そう決心し、春さんの背中に触れる。
「んっ」
「――――っ」
背中に触れると春さんの口から声が漏れた。
そのせいでまた体が熱くなり、心臓があまりにうるさくなっていく。
だめだ。止まるな。手を動かせ。そうしないとまた思考が飛ぶ。
とにかくお母さんで練習したマッサージを始める。今はそれで頭を埋めるんだ。
何とか手を動かし、彼の背中を揉み解していく。
けど、そのたびに彼が気持ち良さそうに声を漏らすせいで、一向に集中できない。
頭の中で「集中集中集中」と繰り返しながら、全く集中できずに、それでも練習のかいあって順調に進んでいく。
そこでふと、彼の声が止まった事に気が付いた。
ある意味夢中になっていたせいで、彼が静かな事に気が付けなかった。
そーっと彼を見ると、彼は寝息を立てていた。
「寝てる・・・」
お母さんも途中で寝ていたし、気持ち良いと寝てしまう物だと言っていた。
という事は、私はきちんとやれていたという事だろう。
良し、そう思うとちょっと落ち着いてきた。
それにねている彼にいたずらなんて、そんな後で罪悪感が湧くことは出来ない。
・・・でもちょっとキスするぐらいは良いよね。
少し狡いかなと思いながら、寝ている彼の頬に軽くキスをする。
既にディープキスもした仲だというのに、それだけでも胸に幸せが込み上げてくる。
ああ、春さんの寝顔可愛いなぁ。
「よし、ちゃんとやろう」
寝ていてもマッサージの効果はある。このまま全身しっかりやってしまおう。
そう決めると、さっきまで頭まで熱くなっていたのが嘘のように治っていく。
そして私の頭の中は「春さんに喜んで貰おう」という思考だけで埋め尽くされていった。
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