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初の恋人とのお昼休み
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「それじゃあ行ってきます」
「あーい、いってらっしゃーい」
出発の挨拶をお母さんにして、日傘をさして外に出る。
普段と変わらない、いつも通りの朝。ただ少しだけ違う物がある。
それが少し楽しみでもあり、少し怖くもある。
いや、やっぱり楽しみの方が大きいかもしれない。
雛には朝方に少し電話で連絡を入れた。
色々と相談に乗ってもらったし迷惑もかけた。お礼も込めての今回の報告だ。
雛はおめでとうと言ってくれたけど、何だが微妙な声音だった。
どうかしたのか聞いても「あー、大丈夫、きにしなくていいから」と返すだけ。
ただ途中から「春さんが可愛かった」という旨の事しか言っていない自分に気が付いた。
多分惚気はもう良いからと思われたのだろう。ごめんね、雛。
春さんとの関係が変わった事が、こんなに嬉しいというのは自分でもちょっと不思議だ。
いや、勿論嬉しいのは当然だけど、ここまで浮足立つとは思っていなかった。
あれから、春さんが帰ってからずっと春さんの事ばかり考えている。
「喜んでくれるかな」
今日の私のカバンの中には二つのお弁当箱がある。春さんと約束した分のお弁当だ。
渡すときに喜んでくれるだろうか、口にしたとき満足してくれるだろうか。
今日は起きてからずっと、そんな事ばかり考えている。
春さんに会うのを楽しみにいつもの通学路を歩く。いつもの春さんと会える場所に向かって。
「・・・あれ?」
でも、そこに春さんは居なかった。
普段なら会える所で春さんに会えず、首を傾げながらそのまま学校に向かう。
何か用事でもあって、何時もと違う時間に出たのだろうか。
学校に入る前に携帯端末を取り出して彼に連絡を取ろうと思ったが、なんだか彼女になったとたん厚かましい態度をとる様な気がしてそのまま直してしまった。
「お昼休みには、会えるよね」
約束をしていたのだから、きっと待っていてくれる。
そう思ってそのまま学校に向かい、いつも通りの状況の中席に着く。
席に着くと、普段通り突っ伏したままの北島さんが挨拶をしてくれた。
「おはよ、今日もでかいね」
「おはよう北島さん。少し分けてあげたいんだけどね」
「いらねー。あたしもたいがいでかいっつの」
「あはは、確かに」
彼女も女の子としては大きい部類だ。
けど近年はこのぐらいの身長は珍しくなくなっているし、少し羨ましい。
私の身長が平均になる事はおそらくあり得ないだろう。
「なんか今日は少しご機嫌じゃん」
「ん、そう見える?」
「いつもの仏頂面が少し柔らかいよ」
「そう、ならいいかな」
どうやら今の私は他の人から見ても解るぐらい、感情が顔に出ているらしい。
でも以前と違い、楽しい気持ちの方であれば別に良いかな。少なくとも睨み顔よりは良い。
「・・・やった?」
「やって無い」
「なーんだ」
母よりも直接的な問いを投げてきた北島さんに端的に返す。
すると途端につまらなそうな態度になる北島さん。
なんでみんな、そんなに私の初体験を聞きたがるのか。
「あー、ねむ。徹夜するんじゃなかった」
「またゲーム?」
「あーうん、レトロゲーをなんとなく始めたら止まらなくなっちゃってさぁー」
その後は他愛もない世間話をしているうちに時間が過ぎていき、教師が教室に入ってくる。
いつも通りの授業風景が始まり、いつも通り淡々とこなしていく。
そして、昼休みの時間になって、カバンを持って立ち上がる。
いつもの、春さんとの昼食を楽しみに教室を出て、彼の元へ歩を進めた。
けど。
「・・・あれ?」
そこには、誰もいなかった。今日はゆっくり来ているのかなと思い、暫く待った。
けど春さんは、昼休みが半分過ぎても、いつもの場所にはやってこなかった。
「あーい、いってらっしゃーい」
出発の挨拶をお母さんにして、日傘をさして外に出る。
普段と変わらない、いつも通りの朝。ただ少しだけ違う物がある。
それが少し楽しみでもあり、少し怖くもある。
いや、やっぱり楽しみの方が大きいかもしれない。
雛には朝方に少し電話で連絡を入れた。
色々と相談に乗ってもらったし迷惑もかけた。お礼も込めての今回の報告だ。
雛はおめでとうと言ってくれたけど、何だが微妙な声音だった。
どうかしたのか聞いても「あー、大丈夫、きにしなくていいから」と返すだけ。
ただ途中から「春さんが可愛かった」という旨の事しか言っていない自分に気が付いた。
多分惚気はもう良いからと思われたのだろう。ごめんね、雛。
春さんとの関係が変わった事が、こんなに嬉しいというのは自分でもちょっと不思議だ。
いや、勿論嬉しいのは当然だけど、ここまで浮足立つとは思っていなかった。
あれから、春さんが帰ってからずっと春さんの事ばかり考えている。
「喜んでくれるかな」
今日の私のカバンの中には二つのお弁当箱がある。春さんと約束した分のお弁当だ。
渡すときに喜んでくれるだろうか、口にしたとき満足してくれるだろうか。
今日は起きてからずっと、そんな事ばかり考えている。
春さんに会うのを楽しみにいつもの通学路を歩く。いつもの春さんと会える場所に向かって。
「・・・あれ?」
でも、そこに春さんは居なかった。
普段なら会える所で春さんに会えず、首を傾げながらそのまま学校に向かう。
何か用事でもあって、何時もと違う時間に出たのだろうか。
学校に入る前に携帯端末を取り出して彼に連絡を取ろうと思ったが、なんだか彼女になったとたん厚かましい態度をとる様な気がしてそのまま直してしまった。
「お昼休みには、会えるよね」
約束をしていたのだから、きっと待っていてくれる。
そう思ってそのまま学校に向かい、いつも通りの状況の中席に着く。
席に着くと、普段通り突っ伏したままの北島さんが挨拶をしてくれた。
「おはよ、今日もでかいね」
「おはよう北島さん。少し分けてあげたいんだけどね」
「いらねー。あたしもたいがいでかいっつの」
「あはは、確かに」
彼女も女の子としては大きい部類だ。
けど近年はこのぐらいの身長は珍しくなくなっているし、少し羨ましい。
私の身長が平均になる事はおそらくあり得ないだろう。
「なんか今日は少しご機嫌じゃん」
「ん、そう見える?」
「いつもの仏頂面が少し柔らかいよ」
「そう、ならいいかな」
どうやら今の私は他の人から見ても解るぐらい、感情が顔に出ているらしい。
でも以前と違い、楽しい気持ちの方であれば別に良いかな。少なくとも睨み顔よりは良い。
「・・・やった?」
「やって無い」
「なーんだ」
母よりも直接的な問いを投げてきた北島さんに端的に返す。
すると途端につまらなそうな態度になる北島さん。
なんでみんな、そんなに私の初体験を聞きたがるのか。
「あー、ねむ。徹夜するんじゃなかった」
「またゲーム?」
「あーうん、レトロゲーをなんとなく始めたら止まらなくなっちゃってさぁー」
その後は他愛もない世間話をしているうちに時間が過ぎていき、教師が教室に入ってくる。
いつも通りの授業風景が始まり、いつも通り淡々とこなしていく。
そして、昼休みの時間になって、カバンを持って立ち上がる。
いつもの、春さんとの昼食を楽しみに教室を出て、彼の元へ歩を進めた。
けど。
「・・・あれ?」
そこには、誰もいなかった。今日はゆっくり来ているのかなと思い、暫く待った。
けど春さんは、昼休みが半分過ぎても、いつもの場所にはやってこなかった。
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