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執筆の束の間の愛
しおりを挟むカタカタカタカタ
あるアパートの一室ではパソコンのタイプ音ばかりが響く。
そのブルーライトで浮かび上がるのは真顔でパソコンを叩き続ける俺。
傍から見たらヤバい奴に思われるかもしれないがここには生憎俺1人。
まぁ、俺も好きでキーボードを叩き続けているわけじゃないんだけどね。
仕事が小説を書くことだから仕方なく。
どうしてだろうか、趣味で書いていた時は執筆の時でさせ、ワクワクしながら書いていたもんだが仕事になってからはもう無心。
なんと言うか、辛いね~。
でも俺の作品を持ってくれている読者もいるから頑張って書きますけどね。
そう考えながら、指を動かしているといきなり、
「えっ?」
椅子がクルッと後ろに振り向き、誰かにハグされる。
「蓮、ただいま~」
「あ、なんだ楓か、焦ったー」
「なんでよ、さっき部屋の扉空けた時も『ただいま』って言ったじゃない」
「えっ、そうだったっけ。聞こえてなかったわ」
「でしょうね。そうだと思ったわ。それで?」
「えっ?」
「……」
「あっ、おかえりなさい」
「うふふ、よくできました」
「それでこの体勢は何?」
さっきからずっと楓にギューとされたまんまだ。
「嫌なの?」
「そういう訳じゃないけど」
「じゃあいいじゃん」
そう言われたら何も言えない。
「それにずっと執筆してたんでしょ。ちょっとぐらい休憩してもいいんじゃない?」
「……確かに。じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は楓に抱き返す。
温かい、なんだか安心する。
そんな僕の様子を見て、楓は満足そうにする。
「どう?」
「なんか疲れがほどけていくような感じがする」
「それは良かった。もう少し堪能していいよ」
「そうする」
俺はギューとそのまま楓に抱き着き続ける。
それから、少しして俺は楓から体を離す。
「もういいの?」
「うん、ありがとう。おかげで回復出来たよ」
「ホント?良かった。それじゃあ、ご飯作ってくるから執筆頑張ってね!」
「分かった、そうだ今日のご飯なに?」
「うふふ、それは出来てからのお楽しみ」
楓はそう言い残すとキッチンへと向かって行ってしまった。
俺はまたパソコンに向き合って、キーボードをまた叩き始める。
さぁ、今日の晩御飯はなんだろうか。
そんな些細なことを、でも幸せなことを考えながら、また俺は執筆を再開するのだった。
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