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ゆったり彼女は癒したい

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「……ねぇ、何かあった?」

「えっ?」


夕食を食べ終わり、一息ついた時に楓は不意にそう言った。


「……なんか、いつもと、顔が違う」

「そう?」

「うん、それに雰囲気も違う。……何かを、背負っているような感じ」

「……意外と分かるか。空気を悪くしていたようならごめん」

「ううん、謝らなくていいよ。君を癒すのも私の役目だから」


楓はほんわかとした笑顔でそう言う。


そうか、意外と分かるのか。
確かに今日はバイトで色々あったからなぁー。
でも、これを彼女に言うのも躊躇ってしまう

「別に辛いなら、無理に言わなくても良いよ。大丈夫」

「……ごめん」

「大丈夫だって、……ちょっと、そのまま私のそばでいて」


すると楓はなぜか俺の体をペタペタと触ってくる。


「ど、どうしたのいきなり?」

「うん?君の体を触ってるの」

「な、なんで?」

「なんかね、好きな人に触れているだけで、オキシクリーン?っていうやつが出て、幸せになるんだって」

「……あぁ、多分それはオキシトシンかな?」

「そうそれ。それが出て幸せになるんだって。どう、幸せ?」

「ちょっとこそばゆいけど、心地よい。」

「うふふ、そうみたい。さっきよりも少し表情が柔らかくなってる」

「そう?」

「うん。でもまだ足りないみたい。だから……ギュー」


楓は俺の体を触るのを止めて、抱き着いてくる。
いきなりで少し驚いたが、俺も抱き返す。

それから少し、二人の間では静寂が流れた。

温かいし、この静寂も嫌じゃない。
むしろ落ち着いてくる。


「ふふ、君の鼓動が伝わってくる。でもまだ、ちょっと早いみたい」

「楓がハグしてくれているからかな」

「そう言ってもらえて嬉しい。だけど、そうだとしても少し深呼吸しよう?」


スゥーハァー、スゥーハァー


「……少し落ち着いてきたみたい」

「うん、気持ちも少し楽になってきた」

「それは良かった。それはそうと……君の匂いは落ち着くな」


そう言いながら楓は俺の首元に顔をうずめてくる。
楓の鼻息が当たって、少し恥ずかしい。


「なんか、安心する匂い。気持ちがポワァってする匂いって……あっ、これじゃ分からないか」

「ううん、分かるよ。俺も楓の匂いを嗅いだらなんか安心する」

「好きな人の匂いってなんでこんなに安心するんだろうね?」

「好きな人の匂いだからこそ安心するのかもしれないね」

「それはそうね。ううん……」


モゾモゾと楓は首元に顔をグリグリと押し付ける。
可愛いな。

なんだか、心の中の蟠りが溶けていくような感じだ。
悩んでていたことがバカらしくなってきた。


「どう落ち着いてきた?他にして欲しいことある?」

「……それなら、キスしたい」

「キス?……フフッ、いいよ」



チュッ



「えへへ、君からねだってきてくれて嬉しいな。いつも私からお願いしたりするから」

「いつもは恥ずかしいけど、今日ぐらい良いかなと思って」

「良い傾向だね。いつもそうしてくれたらいいんだけど」

「それはちょっと恥ずかしいかな」

「なら、君が恥ずかしくならないまで私がこれからもし続けるよ」

「それを面と向かって言われると照れるな」


顔が少し熱くなる。
楓はそんな俺の顔を見てニッコリと優しく微笑む。



そして、俺たちは気が済むまでお互いの体温を感じ続けることにした。








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