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福引と博士と助手の話

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「グワーッ、また4等かー!」


僕と博士しかいない研究室では……なく珍しく買い物に来ていた商店街では博士のそんな情けない声が響く。


「あはは、博士、出てるの全部4等じゃないですか。僕を温泉旅行に連れて行ってくれるんじゃなかったんですか?」

「ぐぬぬ、うるさいなー。次は、次こそは1等を!おじさん、もう1回だ!」

「あいよ」


博士は大の大人がするべきではない必死な形相であの福引器を回す。


「金よ~、金よ、出ろ~」


……傍から見ると必死過ぎて怖いな。

そうして出てきた玉の色は……白だった。


「はい、また4等だね。そんじゃ、はい、4等のリンゴ」

「…………あ、はい、どうも」

「また4等でしたね。もう福引券も無いですし、帰りましょうか」

「……うん」

「もうー、なんでそんなに落ち込んでいるんですか。そんなに温泉旅行に行きたかったんですか?」

「そりゃそうだろ!……くっそー、君と一緒に温泉旅行に行きたかったのに、全部4等なんて……」

「なんで、そんなに僕と温泉旅行に行きたいんですか?」

「……いや、ん……いつも君には大変な思いや迷惑な思いをさせてしまっているから、少しはそれを癒してあげようかと……あと、ほんの少しだけの下心もあるけど……」

「博士……」


まさか、そこまで思ってくれていたとは……
最後の奴だけは安心できないけど。
……はぁ、仕方がない人だな。


「……ふぅ、博士、その連発した4等で貰ったリンゴ、僕にくれませんか?」

「これかい?うん、別にいいけど……何に使うんだい?」

「それは研究室に戻ってからのお楽しみという事で」


そうして、あることを思いついた僕は少し首を傾げている博士と共に研究室へと戻るのだった。





********





「はぁー、温泉旅行……」


……まだ未練タラタラの博士を横目に僕はあるものを仕上げる。


「よしっ!博士、出来ましたよ!」

「うん?何がだい……ってこれは……」

「そうです。アップルパイです!」


そう、僕は博士から貰ったリンゴで博士が好きなアップルパイを作ったのだ。


「ど、どうして、アップルパイを?いや、大好物だから別に良いのだけど……」

「……博士は僕のためにさっきまで温泉旅行を狙って頑張っていたじゃないですか。でも、ずっと4等続きで……。それで博士も落ち込んでしまって。だから、せっかくですから、このリンゴを使って博士の大好きなアップルパイを作って差し上げようかと。と言っても1等の温泉旅行にはまるでかないませんが」

「……」

「博士?どうしましたか?」

「……じょ、助手君、君という奴は……」


あ、これ、泣くな。
そう思って、身構えていると博士はすんでのところでグッとこらえて、清々しい笑顔でこう言う。


「……よしっ!それだったら、助手君の想いが篭もったアップルパイを是非とも今から食べようじゃないか!助手君よ、切り分けてくれ!」

「あははっ、分かりました!それじゃあ、お皿を持ってきますね」


そうして、僕たちは仲良く一緒にアップルパイに舌鼓を打つのだった。

……結局、博士は食べている途中で涙腺崩壊していたけどね。




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