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第4話
首謀者さん電波ジャック ①
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「……いやだから、学校中の皆が生気を失ってるんすよ!はい、水鉄砲で撃たれて!あ、銃ではなくて、水鉄砲で……はい、多分変な成分とかが入ってて……え?いや死んではいないんすけど、いや、ふざけてるわけじゃなくて、あ、ちょっ!………」
プツリ、と電話が切れた。
「……まったく信じてくれねぇ」
「ダメ元の110番だったけど、やっぱダメね……」
「廃人」だらけと化した高校で、なぜか俺たちを追ってくるグラサン男を退けた俺、早見跳彦……と佐原さんは、警察に電話するも全く相手にされず、どんよりとため息をついた。
佐原さん曰く、校門も閉じられていて、見張りもいて、学校から出るのも難しい状況だという。
「まあ信じろっていうほうが無理な話か……。ていうかさ」
「なに?」
「なんで隠れ場所、ここなの?」
あの後、依然状況はまったくつかめないまま、さらなる追手が来る前にどこかに身を隠そうとした俺たちは今……
女子トイレにいた。
「見た限り、あのグラサンのやつらはみんな男だし、少しでも入るのためらってくれれば、もうけもんでしょ?」
「…………」
黙って辺りを見回す。
なんだかんだ生まれて初めて(当然だ)足を踏み入れた「女子トイレ」という異質な空間に、妙な気恥しさを覚えていると、佐原さんが冷ややかな目でこちらを見ていた。
「なにそわそわしてんのよ。……なんかキモいよ」
ピンチを救ってくれた人なのでとやかく言いたくはないが、ついさっき邂逅したばかりの佐原さんについて分かったことは、思ったことをオブラートにくるまずそのまま産地直送してくるきらいがある、率直に言えば口が悪い。
「きみ、早見くんでしょ、2組の」
佐原さんがそう言ってきた。なぜか向こうは一方的に俺のことを知っているようだった。
「あれ、なんか絡みあったけ」
「ないけど……まあ、なんとなく知ってるよ。野球部のピッチャー、“だった”って」
その少しだけ遠慮したような言い方に、ああ、と腑に落ちる。
佐原さんのいる3年7組には、野球部の“元”チームメイトも何人かいた。1か月前まで野球部だった俺の身にまつわる“いろいろな話”は、どうやら俺が思っている以上に、校内の人間の知るところになっているらしい。当人の名前と顔もセットにして。
いろいろと詮索されるのも嫌なので、「まあ俺のことはどうでもいいよ」と適当に受け流し、率直な疑問を投げかける。
「それより……シンプルに、今、この学校で何が起こってんのか教えてくれ」
「あたしだってよく分かんないっつーの」
佐原さんは肩をすくめた。
「朝、遅刻して学校きたら、既にみんな死んだみたいにやる気なくしてて……びっくりしてたら急に追っかけられて、そいつを蹴散らしたあと、別の敵に襲われてる早見くんに偶然遭遇したの」
「蹴散らした……って、そもそもよく蹴散らせたよな、そのとき一人だったんだろ?佐原さん」
「うん。たまたまあったこの竹刀使って。それと、蹴散らす前にその男はべらべらといろいろ喋ってくれたのは収穫かな。その水鉄砲についてとかね」
春乃はそう言って、俺が手に持っていた水鉄砲を指さした。さっき倒したグラサン男から奪ったものだ。
俺も水鉄砲をまじまじと見つめる。見た目上は、市販で売ってる、派手な色をした片手で持てるサイズの、特に変哲のない普通の水鉄砲に見えた。
「撃たれるとやる気を失くす、ねぇ……にわかには信じらんねえが実際この目で見ちまったからな」
遠目ながら、グラサン男に撃たれて崩れ落ちる友達のエビちゃん、そして、ついさっき、俺が放った水鉄砲の水を浴び、急激に生気を失っていくそのグラサン男の様子が、鮮明に脳裏に蘇る。
「何者なんだアイツら」
「ホントにね」
これからどうする?とか、あの「廃人」になったやつらを元通りにする方法ってあるのかな、とか、いろいろ頭の中に浮かぶけれど、お互い口にはしない。
疑問はつきないし、受け入れることも土台不可能なぶっ飛んだ状況だが、今俺たちが何か考えたところで事態が好転しそうにないのは目に見えていた。
朝から走り続けた疲労感も相まって、言葉の代わりに、はぁ……とほぼ同じタイミングで、二人でため息をつく。
ピンポンパンポーン。
突然、音がした。
俺と佐原さんはビクッとして、思わず辺りをきょろきょろする。廊下のスピーカーから聞こえる、校内放送のアナウンス音だった。
「は?何だ…?」
「「あ――…これマイク入ってんのかい?大丈夫かい?」」
続けて、男の声がスピーカーから流れてくる。
「校内放送……?」
「みたいだな」
なんのこっちゃ、という表情で、春乃と顔を見合わせる。
「「えー残党諸君に告ぐ」」
喋ってるやつとマイクが近いのか、必要以上に音量が大きく、ノイズのかかった耳障りな音質で男の声が、校内中に響き渡った。
「「この学校は……我々が乗っ取った」」
プツリ、と電話が切れた。
「……まったく信じてくれねぇ」
「ダメ元の110番だったけど、やっぱダメね……」
「廃人」だらけと化した高校で、なぜか俺たちを追ってくるグラサン男を退けた俺、早見跳彦……と佐原さんは、警察に電話するも全く相手にされず、どんよりとため息をついた。
佐原さん曰く、校門も閉じられていて、見張りもいて、学校から出るのも難しい状況だという。
「まあ信じろっていうほうが無理な話か……。ていうかさ」
「なに?」
「なんで隠れ場所、ここなの?」
あの後、依然状況はまったくつかめないまま、さらなる追手が来る前にどこかに身を隠そうとした俺たちは今……
女子トイレにいた。
「見た限り、あのグラサンのやつらはみんな男だし、少しでも入るのためらってくれれば、もうけもんでしょ?」
「…………」
黙って辺りを見回す。
なんだかんだ生まれて初めて(当然だ)足を踏み入れた「女子トイレ」という異質な空間に、妙な気恥しさを覚えていると、佐原さんが冷ややかな目でこちらを見ていた。
「なにそわそわしてんのよ。……なんかキモいよ」
ピンチを救ってくれた人なのでとやかく言いたくはないが、ついさっき邂逅したばかりの佐原さんについて分かったことは、思ったことをオブラートにくるまずそのまま産地直送してくるきらいがある、率直に言えば口が悪い。
「きみ、早見くんでしょ、2組の」
佐原さんがそう言ってきた。なぜか向こうは一方的に俺のことを知っているようだった。
「あれ、なんか絡みあったけ」
「ないけど……まあ、なんとなく知ってるよ。野球部のピッチャー、“だった”って」
その少しだけ遠慮したような言い方に、ああ、と腑に落ちる。
佐原さんのいる3年7組には、野球部の“元”チームメイトも何人かいた。1か月前まで野球部だった俺の身にまつわる“いろいろな話”は、どうやら俺が思っている以上に、校内の人間の知るところになっているらしい。当人の名前と顔もセットにして。
いろいろと詮索されるのも嫌なので、「まあ俺のことはどうでもいいよ」と適当に受け流し、率直な疑問を投げかける。
「それより……シンプルに、今、この学校で何が起こってんのか教えてくれ」
「あたしだってよく分かんないっつーの」
佐原さんは肩をすくめた。
「朝、遅刻して学校きたら、既にみんな死んだみたいにやる気なくしてて……びっくりしてたら急に追っかけられて、そいつを蹴散らしたあと、別の敵に襲われてる早見くんに偶然遭遇したの」
「蹴散らした……って、そもそもよく蹴散らせたよな、そのとき一人だったんだろ?佐原さん」
「うん。たまたまあったこの竹刀使って。それと、蹴散らす前にその男はべらべらといろいろ喋ってくれたのは収穫かな。その水鉄砲についてとかね」
春乃はそう言って、俺が手に持っていた水鉄砲を指さした。さっき倒したグラサン男から奪ったものだ。
俺も水鉄砲をまじまじと見つめる。見た目上は、市販で売ってる、派手な色をした片手で持てるサイズの、特に変哲のない普通の水鉄砲に見えた。
「撃たれるとやる気を失くす、ねぇ……にわかには信じらんねえが実際この目で見ちまったからな」
遠目ながら、グラサン男に撃たれて崩れ落ちる友達のエビちゃん、そして、ついさっき、俺が放った水鉄砲の水を浴び、急激に生気を失っていくそのグラサン男の様子が、鮮明に脳裏に蘇る。
「何者なんだアイツら」
「ホントにね」
これからどうする?とか、あの「廃人」になったやつらを元通りにする方法ってあるのかな、とか、いろいろ頭の中に浮かぶけれど、お互い口にはしない。
疑問はつきないし、受け入れることも土台不可能なぶっ飛んだ状況だが、今俺たちが何か考えたところで事態が好転しそうにないのは目に見えていた。
朝から走り続けた疲労感も相まって、言葉の代わりに、はぁ……とほぼ同じタイミングで、二人でため息をつく。
ピンポンパンポーン。
突然、音がした。
俺と佐原さんはビクッとして、思わず辺りをきょろきょろする。廊下のスピーカーから聞こえる、校内放送のアナウンス音だった。
「は?何だ…?」
「「あ――…これマイク入ってんのかい?大丈夫かい?」」
続けて、男の声がスピーカーから流れてくる。
「校内放送……?」
「みたいだな」
なんのこっちゃ、という表情で、春乃と顔を見合わせる。
「「えー残党諸君に告ぐ」」
喋ってるやつとマイクが近いのか、必要以上に音量が大きく、ノイズのかかった耳障りな音質で男の声が、校内中に響き渡った。
「「この学校は……我々が乗っ取った」」
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