パンドラ

【プロローグ】

　夜の風が木造の一軒家の窓を叩く。

　二階にある部屋で修一は布団に入り横になっていたが、孤独にさいなまれ眠れない夜を過ごしていた。

　毎日そんな夜を経験していく中で孤独とはなんなのかを理解していく。暗闇はより人の心を暗くする。得体の知れないなにかが部屋中を覆うような、そんな感じが堪らなく苦しい。

　今日一日を思い出すが、一つも楽しい出来事はありもせず、話す相手は両親の二人だけで会話にあまり必要性が感じられずに返事一つで大抵は終わる。

　そんな毎日の中でもたった一つの楽しみは読書。

ジャンルは問わず雑食に読む。小説、物理、法律、哲学と様々に読みあさる。そのためか学生時代の成績は優秀だった。だが、大学には進学せずフリーターの道を選んだ。

　修一は心理学にはどうしても抵抗があり興味を示せなかった。自分の心を変える答はソコにある。しかし知識を得たところで簡単に人は変われないことをよく知っていた。そんな諦めが心理学から修一を遠ざけていた。

　だが、本当は弱い自分を理解することから逃げているだけ、認めたくないだけだった。

　弾むことのない日々を過ごし、自分の人生に楽しみを見いだせず、新たな明日を思いながら今夜も孤独の中で眠りの世界に入っていった。

　それでも夜は明け、いつもの朝はやって来る。

　次の日の朝、修一はいつも通り起きたら最初に始める行動をとる。

　普段は誰からもメールは来ないけれども無意味にスマホの確認だけはしている。

今日は珍しくメールが一件だけ来ていた。知っている誰からでもなく、何故か送信者が不明だった。そのうえ「ＳＭＳ」でテキストが送られて来ていた。

　メールの内容を見た修一の頭によぎったのは「くだらない」の言葉だった。だが、毎日になんの変化も見出せずに過ごしている修一には興味が湧いた。　　　　　
　
　それからメールの内容通りに行動した。

　毎日には必ずなにかしらの変化がある。それは気付かないような些細な変化でも。

　そして、この大きな変化は修一を変えた。