死にたがりな魔王と研究職勇者

久しぶりの食事

ーコンラッドsideー


魔族が食事を食べ出したところを確認し、密かにため息をつく。


主人であるシオン様からの命令であればいかなることでも遂行しようと言う気持ちではあるが、魔族の世話は流石に生涯に一度も経験がないため、まずは観察でもしようかと考えてみる。


食事の様子は特段人間と変わりはなく、むしろ普通の人間より所作は美しく、マナーもきちんとしているようだ。


魔族は初めに爽やかな酸味のルクの実をフォークで刺し、口に運ぶ。先に果物を食べる習慣があるのかと疑問に思っていると、魔族は皿に盛られたルクの実を全て食べ終え、フォークを置いた。
どうしたのかと思っていると



「・・・ごちそうさま」



そう言って立ち上がろうとするではないか。



「はぁ・・・お待ちください。」



今度は聞こえるようにため息をつき、魔族を呼び止める。
シオン様が食事の確認を申しつけた理由がすぐに分かったのは良いが、ここで食事を終えられては執事の名折れである。



「食事なら摂っただろう。お前の主人には適当に報告すればいい。」



「いえ、そう言うわけには参りません。」



そう言ってコンラッドは控えていた壁際からルイードのもとへ歩いていく。
そして椅子を再度引き、



「お座りください。」



と再度着席するようルイードに求めた。
ルイードは眉間に皺を寄せるも、ため息をつくと意外にもその求めに応じて座った。



「食欲がないのですか？」



そう聞くコンラッドに答えないのも面倒になってきたルイードは返答することにした。



「いや、どの程度食べたら良いのかが分からない。もうしばらく食事は摂っていなかったから・・・」




その返答に驚いた表情をコンラッドは浮かべたが、しばし考えて一つの提案をした。




「では、食事量を私に一任してはもらえませんか？」




そう言うコンラッドに今度はルイードの方が驚き、思わず声を上げる。



「えっ」



「私はシオン様よりあなたが食事を摂るところを確認するよう仰せ付かりました。あなたが適切な量を食べるところを確認する必要があります。なので、これは私の仕事でもあるので、あなたの食べる量を私に任せてはいただけないでしょうか？」



そう言ってコンラッドはじっとルイードの方を見つめた。



ルイードは困惑した様子であったが、コンラッドの真剣な表情を見て、断る理由を見つけかね、結局




「分かった・・・」　




困惑しつつも承諾したのであった。