絶対お兄ちゃん主義!

桜祭

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1章

誕生日の謎テンション

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ガラガラ、と廊下と部室の出入り口が開かれる音がした。

「ようやく光が来たみたいだな」
「違う、俺は星虹ではない影太だ」
「じゃあ、帰れ」

と来客を無碍に扱い追い出した。
用事のない来客はご遠慮すると貼り紙した方が良いかもな。

「良いのか?影太の奴用事あったんじゃ……」
「どうせ小さい女の子の話しかしないだろ」

ロリコン。
追い出した来客である 山田影太ヤマダエイタの紹介はこれしかない。
いや、充分過ぎた自己紹介だ。

と、また来客を知らせる出入り口が開かれる音がした。

「おーっす、部活終わったよー」

元気な光の姿であった。
部活終わりでの疲れを見せない元気っぷりであった。

「どうやら光本人だ!イヤッホー!」
「……光来てからどんだけテンション上がってんだよ達裄……」
「光最高!」

光か流亜の姿を見るとたまにテンションが抑えられない。
まさに今の状況そのものであった。

「……なんか行き違いになった影太との反応見てたけど私と全然違うんだね」
「光と影太との反応を一緒になんかできねーよ!」
「な、なんか嬉しいわね、そんなに喜ばれると」

赤い顔をして恥ずかしがる光になんかこう胸がドキドキする。
なんだこれ?
光は親友なのにどうしてこんな恋みたいな感情が湧き上がるんだよ?
わけわかんねーよ。

「おーいささっと行くぞー」

俺、光、星丸の順で部室から出る。
そして部長が預かっている部室を南京錠で鍵をかける。
これは部長である者の防犯対策である。

「よーし、今日は夜通し遊ぶぜ!」
「おっ!?急にテンション上がってんな星丸!」

ピリリリリ、誰かのケータイの着信音が鳴る。
星丸がスマホを取り出し誰からの通話かも見ずに電話に出た。

「もしもし?……マジ?」

星丸の顔に気まずさが出てきていた。
嫌な予感しかないよな。

「なんか母親が帰って来いってさ。いやマジ『夜通し遊ぶぜ!』とか言った直後だけど帰るわ」

スタスタと帰って行った星丸。
なんだあいつ……。

「た、達裄と2人になっちゃったねー」
「そ、そうだな……」

何故光に複雑な気持ちを抱いていた時に2人っきりになるんだ?
くぅ……。
俺だけそう思ってんのに気まずい……。
星丸カムバァァァァック!

「ごめん、さよなら言い忘れた。改めてさよなら達裄に光」

…………。
戻って来たけど結論変わらねぇー!?
しかもまたスタスタ居なくなってるしー!?

こういう時は話を切った方が良いのか?
続けた方が良いのか?

頭の中でヒヨコがピコピコ上を歩いているイメージだった。

「じゃあ私達も帰ろうか達裄」
「そ、そうだな」

歯切れが悪い返事になってしまった事に気付く。
なんか怪しまれたであろうか?

「達裄さ、明るくなったよね」
「え?そうか?んな事ねーよ」

まず昔の自分知らねーよ。
俺って元々こんなんじゃなかった気がしないでもない。
ただ、救われた気がしただけだ。

「私と初めて会った時とか根暗ってぐらい暗くて目つき悪かったよ」

光が俺の真似なのか目つきを悪くしてみせる。
毎日髪いじる時とか鏡見てるから目つきなんか変わったってわかんねーよ。

「なんやかんや長いよね私と達裄。……あと星丸?」
「俺はお前より星丸との付き合い長いんだぜ、地獄さ」
「星丸を嫌ってみせても縁を切らない辺り仲良くて羨ましい。壁感じないしさ、私も男になって生まれたかったなー」

うーん。
光からこんな話されるの始めてだな。そんなの気にするタイプなんだな。

「いや、お前は星丸以上に男だよ」
「……ムカつく」
「そんな怒るなって」

光の右拳がプルプル震えている。
殴る前兆じゃないか!?

「でも今のやり取りみたくお前にも壁とかねーから。それに俺、お前が男だったら一回も話さなかったと思うし、お前は女でいいの」
「…………」

下に俯いている光。
なんか変なしんみりした空気になったな。

「お前は俺の特別なの。壁感じてたら壊せ!俺が壊すの手伝うし」
「調子良い事言って……」

ぶっちゃけ光と話した事自体、俺にとっては奇跡なんだよ。
多分光が居なかったら今でもずっと星丸と2人だけの仲だったよ。

「ありがとう達裄。でも、やっぱり達裄はムカつく!」

そう言って拳を俺の腹目掛けて思いっきりストレートパンチした。

「誕生日おめでとう達裄、あんた最高」
「ははっ、参ったな」

どんな誕生日よりも痛いプレゼントであった。

でもこんな奴だから俺の特別で特別で特別な奴なんだ。

「お前も最高」

楽しくて俺と光、大笑いして帰路についた。
寒い気温も忘れる程、熱くなっていた。







「何してんのお前ら?」

カムバックするタイミング自重しろ。





光と別れたあと(もう一人は特になし)、1人で家までのルートを歩く。
因みに朝のパーティ云々は今度埋め合わせをすることになった。
若干日が早くなった為に薄暗い空。
冷たさが宿る風。
何軒も並ぶアパート、マンション、家、店、会社。
見慣れた風景をいざ眺めていくと違って見える。

赤い看板だと思っていたがよく見ると紫も混ざっていた。
昔からずっと自転車が置かれている家の自転車が変わっていた。
公園のブランコやすべり台などの遊具の色が塗り直されていた。
店がコンビニから喫茶店に変わっていた。
全てが見慣れない貼り紙になっていた。

そんな風景が変わってしまった事を今更認識してしまっていた。

もしかしたら元々の認識自体を俺は忘れていたからこんな変わったしまった事にも気付かない。
なんて事もある。

「よし、着いた」

学校からの短い道のりで家が見えた。
こうして暇で当たり前な平凡な平日の日常を誕生日にも関わらず送る事になるのであろう。

「あ?」

どうやら家の玄関の鍵を開けたつもりが閉まってしまった。
もう一度二重ロックになった鍵を開けた。

「開いた……」

つまり最初から鍵は開いていた。
確か今日の朝流亜とやり取りした様な……。
被害妄想の激しいOLがなんちゃら~って。

「まさか泥棒?」

別に盗まれて困る物はない。
逆に今泥棒が家に居たら危険なのは泥棒の方だ。

ギッタンギッタンに骨までぐちゃぐちゃにされて、かつ警察に捕まるのだ。
可哀想だ。
と、酷い妄想に浸る……。

とりあえず泥棒だったら退路の時間稼ぎの為二重ロックとチェーンロックの被害妄想の激しいOLの様に鍵をかけた。

慎重というわけでもなくズカズカと玄関まで入り、下へ目を向ける。

「泥棒なわけねーか」

見慣れない派手な靴がある。
多分来客であろう。
予想は大体着いている。

予想がハズレでなかったなら多分奴が来ているであろう。
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