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第6章 偽りのアイドル

12、十文字タケルはアイスを奢る

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山本君がわたしに気になるとか、そんなことはどうでも良くて気になるのは秀頼君の反応です。
どうせまた腋がどうこう始まるんでしょ?
わたしの場合、発展途上の胸でしたっけ……。
胸……。




『いや、あれはやめとけ。プライベートなくなるから。ガチで』

今までおちゃらけてふざけて発言していた秀頼君が素になって、マジレス気味になっていた。
プライベートが無くなるとか失礼ではありますが、ちゃんと止めてくれるんだ……。






好きいいいいいいいいいいい!
秀頼君、大好きいいいいいいいいいい!
愛してるううううううう!
付き合いたいよおおおおおおおおお!





『宮村さん狙いで考えてるけどどう思う明智?』
『いや、あれはやめとけ。優等生だぞ?絶対釣り合い取れないし。付き合ったとしても遠慮ばっかりになるから』

「秀頼さん、マジ仏様!」


『別のクラスの谷川とか案外顔好みだわ。どう明智?』
『いや、あれはやめとけ。口悪いしコミュ障だし。会話してるだけでメンタルやられるから』

「うむ。ウチの相手は秀頼しかできないぞ」


『あのクラスの津軽さんも良くね?明智の意見は?』
『いや、あれはやめとけ。口悪いし、息を吸うように毒吐いてくるから。先にワクチン打っとけ』

「ムカつくわね、あいつ……。まぁ、今回は許す」


『明智君、僕は十文字君の妹さんも好みですねぇ』
『いや、あれはやめとけ。すげーブラコンだから。兄貴どこにでもついて来るから。兄貴と3人デートとかになりそう』

「さすが明智君、100点満点です」
「というか理沙とお前のデートに付いて行くわけねーだろがっ!」


『山下さんは明智?』
『小悪魔フェイス良いよね。つい腋に視線行っちゃうよな!…………ところでなんでさっきからみんなして俺にしか意見聞かないの?』


もう秀頼君の受け答えは完璧ですね。
この場全員に対してマーキングを付けましたね。

わたしだけじゃないというのが不本意ですが、秀頼君はそういう人です。
わたしを護ったという事実で満足です。




「秀頼君!」
「明智君!」
「秀頼!」
「秀頼さん!」
「…………」

なぜか女子の結託力が高まった気がする。

「へっ……、流石あいつだぜ」

十文字君が教室に入っていく。
そして、背中から『よっ!』と声をかけながら、秀頼君の首に腕を回す。

『な、なんだタケル!?びっくりして心臓から口が飛び出るかと思ったじゃねーか!』
『本当にお前最高だわ!…………あと、口から心臓が出るんだよ。心臓から口出る状況ってなんだよ』
『なにが最高なの?』
『アイス奢るぞ!いる?』
『いるいる!ハーゲン!ハーゲン!』
『はいはい。本当に可愛いなお前』
『いや、可愛くはねーよ』

いや……。
秀頼君は可愛いです。

「あんなにはしゃぐ秀頼さんレアですね!」
「さすが兄さん、明智君の色々な表情を引き出すプロね」

秀頼君のハーゲンって騒ぐ姿、最高に可愛い。

「…………いや、可愛くはないよ?」

円だけは納得できないみたいに呟きました。





ーーーーー



「なんだタケル?全員にアイス奢るとか余裕あるな」
「はははっ、気分が良くて散財したくなるだろ」

よほど良いことがあったのか。
タケルは女子5人のぶんのアイスまで奢り、7個で1000円くらい支払った。
なんて懐に余裕のある男なんだ。

「そういえばお前の家、子供を置いて両親共に県外で仕事していているんだっけ?」
「あぁ。年に1回くらいしか顔見たことねーや」
「…………」

いや、本当にギャルゲーの主人公だよ。
ここはゲームの内容が反映される世界。
なんでもありだな。

「寂しくならないか?」
「全然!俺には理沙がいれば寂しくないさ。お前にも妹が居たらわかるよ」
「妹ね……。居るちゃ居るみたいなんだよ」
「え?」
「会ったことないけど、マスターとおばさんが言ってたんだ。顔も知らない子が妹とか変な感じだよな」

前世でも俺は一人っ子だった。
誰か兄弟、姉妹がいるという家族がイメージできない。

「秀頼の妹ということは、俺にとっても妹みたいなもんか」
「誰なんだよお前!?」

このゲームの世界。
シスコン多すぎじゃね?

津軽姉妹なんか完全にシスコンだ。

しかも、最近知り合った遠野達裄さん。
あの人も凄いシスコンでびっくりする。

『最強のシスコン』。
そんな異名があるなら、間違いなくあの人を指す言葉である。
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