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第4章 変人親子の喫茶店

6、咲夜とマスターの結末

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人の攻め方は2つ存在する。

俺みたいに自分を攻撃することで負けるタイプ。
それともう1つはーー。

「あんたみてーなタイプは自分が何されてもいくらでも耐えれるだろ?でも、弱点を付けば楽勝ってわけ」
「奥さんに先立たれて1人で娘さん育てて大変だねー。コーヒーとは真逆に甘々に育てた娘ちゃんは礼儀ないよ!初対面の人に貴様とか言ったり、わたしに対してチビ女とか言ってくるし、酷いよこの子」
「いや、そんな血まみれにする女が酷いとか言えたもんじゃないだろ……」
「あれ!?秀頼君裏切った!?」

絵美の情報収集能力は本当に高くて有能である。
おっさんの目には俺らを憤怒、恐怖、畏怖の感情を詰めて、涙を浮かべている。

「姉貴の復讐なんてバカみたいなことはもうやめよう!彼女もそんなの望んでない!怒りは何も生まない!幸せに生きることそのものが生きている者の使命だ!」
「秀頼君、棒読み過ぎるよ……」
「復讐やめないなら……、親父の前でやっちまうか」

絵美が引きずってきた女に向き合う。
女は俺にガクガク震えながら涙を浮かべる。
そのまま黙って胸を触る。

「ぃや……、助けて……。助けてマスター……」
「マスターさんは、そこでずっと見てるだけ。助けを呼んでももうすでに助けがいる状態って珍しいね」

絵美がクスクス笑いながら指摘をする。
その指摘を聞きながら長い髪に触れる。
弱々しい抵抗が、俺の気分を高く上げていく。

「しません……。マスターに……、おとぅさんにふくしゅ……させなぃ……言わせます。ゆるしてください……」

片言を呟きながらも、許しを乞う女。
涙を浮かべて、ケガの痛みを忘れた命乞いをする。
触れていた髪から手を離して、父親へ視線と身体を向ける。

「おっさん、あんたはダメ親父だねぇ。健気な娘さんに免じて今日は彼女には手を出しませーん」

俺の好みじゃない貧乳で背が低い女だし。

「【口を開くのをだけ許す】」
「さ、咲夜!」
「ますたー……」

散々苦しめたし、そろそろ潮時か。
騒がれて絵美の家や近所の奴らに話を聞かれる方がまずい。

「も、もう娘には手を出さないでくれっ!」
「じゃあ等価交換だ。俺らにも手を出すなよ」
「わ、わかった……」

『命令支配』の効果を切り、おっさんを動けるようにすると娘に駆け寄る。
ちっ……、羨ましいねぇ。
可愛がってくれる親が存在するということは。

「よし、2人には誓約を作る。【『俺がギフト持ちなこと』、『今日この場で起きたこと』を第3者に知られた場合、おっさんは娘を、娘はおっさんを殺害する。明かす方法は全てを禁ずる。明かす意図がなくても、2人が原因で知られた場合は誓約は執行される。もし、おっさんまたは娘の片方が亡くなっていた場合は、『その誓約を破った瞬間に、現在自分が大事にしている者全員を殺害する』】」

ギフトの効力が2人に入り込んだ実感を得た。
そのまま逃げ帰るようにして、おっさんが娘を運んで外に消えていく。

これだけ脅せば、もう逆らうことはしないだろうな。

「秀頼君、どうして誓約なんか付けたんですか?」

絵美が不服、つまらないという感情で尋ねてくる。

「強制的に喋れなくする方法や、忘れさせる方法もできるはず。なんなら叔父さん達みたいな末路だって……。なのに、何故回りくどい誓約なんか?」
「つまらないだろ、そんなの?俺の恐怖にびくびくしながら生きる人生の方が面白いだろ」
「まぁ!格好良い!素敵!」

絵美が俺の腕に抱きついてくる。
俺の服におっさんの娘の血が染み込んできたが、安物だし特段気にしない。

「はぁ……、俺には大事にしてくれる人が居なくて寂しいねぇ……」
「大丈夫ですよ、秀頼君にはわたしがいますからね」
「あぁ……」

絵美が俺の頬にキスをしてくる。
勝利の後なのに虚しいもんだ。

俺が操って、都合良く動くだけの女からは空っぽな愛しか感じない。
死にかけた娘を前に自分の姉の復讐をやめるくらいに本気な愛を向ける人が俺には存在しない。

それからすぐスマホが鳴る。
相手が誰かも確認しないで通話状態にする。

『秀頼、元気か……?叔父さんとおばさんのいない生活、慣れたか?理沙も心配してるぞ』
「……あぁ。寂しいもんだが慣れたよ」
『そっか。お前には佐々木も付いているしな。夜遅くにごめんな』
「いいぜ、気にしてねぇよ」

タケルとの短い通話を切る。
あいつは本物の無能だ。

電話してくるタイミングがジャストで遅くて草生える。




いつか、ギフトの効かないこいつを。


ーー屈服させてやる。


ーーーーー


寝れねぇ……。
マジで小学生でカフェイン中毒になったのか不安になる。

今日マスターと咲夜のコーヒーで、計5杯飲んだのは失敗だった……。

一瞬変な夢を見たけど、夢を見るということは眠りが浅い証拠だ。

明日辺り、絵美やタケルらを誘って運動してきちんと眠れるようにしようと考えて、眠れない夜を目を瞑りながら過ごすのであった。
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