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第4章 変人親子の喫茶店
4、ギフトへの憧れ
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「イカサマしたのは君でしょ……」
Aのコーヒーを啜りながら突っ込んでおく。
「さっきのは手違いでマスターのが2つだっただけだ」
「え?」
マスターがなにそれ?みたいな顔をしている。
要するに偶然当てたのかとケチを付けたいわけだ。
「練習問題は合格だ。次こそ本番だ。ウチも絶対次は淹れる」
「練習問題の方が難しいと思うけどね……」
「キッズにウチの本気を見せてやるっ!」
もう意地になっているのがわかる。
マスターが本気で申し訳なさそうにしている。
「わかったよ、咲夜のコーヒーも楽しみにしてるよ」
「うむ。殊勝な心掛けだ。素直な秀頼は好きだぞ」
この流れで、また数分外で待たされる。
何も食べないでコーヒーだけ飲むのも、そろそろ苦痛なんだが……。
すぐに呼ばれてまた店に入る。
また2つのコーヒーカップを準備されていた。
「ちなみに咲夜、どっちから飲んでもらいたい?」
「Aから飲め」
素っ気なく指示する咲夜に従う。
「うん。美味しいね。マスターの味だね」
「っ!?」
「じゃあこっちは咲夜が淹れたコーヒーだね」
すぐに1口、Bのコーヒーに口を付ける。
「…………ふぅ」
「おい、なんか感想を言え」
自分のコーヒーの評価が気になるらしい。
咲夜の腕前をなんて答えよう……。
「オブラートに包んだ言い方にする?正直な評価?」
「オブラートに包め」
「とっても!咲夜ちゃんの!味がするぅ!」
「キモいっ!」
煽る感じに感想を呟いたら咲夜が暴言を吐いて俺の背中を軽く叩く。
「酷いなぁ……」
「オブラートに包まないと……?」
「…………おぉえぇぇぇ!?マッズぅぅぅぅ!?こんな味のしないコーヒーは黒い白湯だぁぁ!?」
「ひでよーりー、貴様という奴は!?」
「俺の個人的な感想だ」
「貴様、個人的な感想って言えばなんでも許されると思うなよ」
「ぶっはははは」
マスターがゲラゲラ笑っていた。
「咲夜の完敗じゃん」と言って、目に涙を浮かべるほどにツボに入ったらしい。
「この屈辱、決して忘れぬ。絶対に秀頼にコーヒーを10年でも20年かけてでも美味しいと言わせて飲んでもらう。修行だ、マスター!」
「はいはい、頑張ろうね」
10年後くらいにはゲームの影響により俺はもう死んでいる可能性も高いが、咲夜の成長は楽しみである。
「くっ、ウチにギフトがあればっ……」
「ギフト?」
突然咲夜がギフトという単語を出し驚愕した。
一瞬、俺のことを言ったのかと思った。
「僕の娘さ、ギフトに憧れてるんだって。最近ギフト所有者の犯罪とか増えてるしギフトなんか発現して欲しくないんだけど……」
「貴様!?親なのに、ギフトを持ちたいというウチの気持ちを無下にする気か!?」
「親だから僕は咲夜のギフト発現なんて嫌なの。ギフト所有者の犯罪とかかなり罪重いんだよ。怖いったらありゃしない」
ギフトには憧れを抱く人もいるし、逆に持ちたくないって人もいる。
それくらい尊敬と畏怖の感情を持たせるギフトの存在。
ゲームでも、この世界に生きてからもギフトは危険な存在だと俺自身考えている。
「だいたい、咲夜はどんなギフトが欲しいんだ?」
「そうだな。コーヒーに関連したギフトが欲しい」
「コーヒーに関連した?」
「『ウチの唾液がコーヒーに変わる』ギフト、とか」
「きたねぇ……、飲みたくねぇ……。自分の唾液がコーヒーだったら良いなとか思ったことねーよ」
それでまた、ぶーぶーと文句と言い掛かりを付ける咲夜と、ゲラゲラ笑うマスター。
俺がギフト持ちなんてことは言えないけど、2人には幸せな家庭であって欲しいと願う。
マスターも咲夜も『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズには未登場キャラなので、事件や事故には巻き込まれないクリーンな人生を送れるはずだ。
コーヒーを飲み込む。
この味を引き継ぐために、咲夜も成長していくのかな。
本当に先の人生は楽しみだ。
2人にはいつまでも、平和なこの店を営んで欲しいなと、切に願うのであった。
Aのコーヒーを啜りながら突っ込んでおく。
「さっきのは手違いでマスターのが2つだっただけだ」
「え?」
マスターがなにそれ?みたいな顔をしている。
要するに偶然当てたのかとケチを付けたいわけだ。
「練習問題は合格だ。次こそ本番だ。ウチも絶対次は淹れる」
「練習問題の方が難しいと思うけどね……」
「キッズにウチの本気を見せてやるっ!」
もう意地になっているのがわかる。
マスターが本気で申し訳なさそうにしている。
「わかったよ、咲夜のコーヒーも楽しみにしてるよ」
「うむ。殊勝な心掛けだ。素直な秀頼は好きだぞ」
この流れで、また数分外で待たされる。
何も食べないでコーヒーだけ飲むのも、そろそろ苦痛なんだが……。
すぐに呼ばれてまた店に入る。
また2つのコーヒーカップを準備されていた。
「ちなみに咲夜、どっちから飲んでもらいたい?」
「Aから飲め」
素っ気なく指示する咲夜に従う。
「うん。美味しいね。マスターの味だね」
「っ!?」
「じゃあこっちは咲夜が淹れたコーヒーだね」
すぐに1口、Bのコーヒーに口を付ける。
「…………ふぅ」
「おい、なんか感想を言え」
自分のコーヒーの評価が気になるらしい。
咲夜の腕前をなんて答えよう……。
「オブラートに包んだ言い方にする?正直な評価?」
「オブラートに包め」
「とっても!咲夜ちゃんの!味がするぅ!」
「キモいっ!」
煽る感じに感想を呟いたら咲夜が暴言を吐いて俺の背中を軽く叩く。
「酷いなぁ……」
「オブラートに包まないと……?」
「…………おぉえぇぇぇ!?マッズぅぅぅぅ!?こんな味のしないコーヒーは黒い白湯だぁぁ!?」
「ひでよーりー、貴様という奴は!?」
「俺の個人的な感想だ」
「貴様、個人的な感想って言えばなんでも許されると思うなよ」
「ぶっはははは」
マスターがゲラゲラ笑っていた。
「咲夜の完敗じゃん」と言って、目に涙を浮かべるほどにツボに入ったらしい。
「この屈辱、決して忘れぬ。絶対に秀頼にコーヒーを10年でも20年かけてでも美味しいと言わせて飲んでもらう。修行だ、マスター!」
「はいはい、頑張ろうね」
10年後くらいにはゲームの影響により俺はもう死んでいる可能性も高いが、咲夜の成長は楽しみである。
「くっ、ウチにギフトがあればっ……」
「ギフト?」
突然咲夜がギフトという単語を出し驚愕した。
一瞬、俺のことを言ったのかと思った。
「僕の娘さ、ギフトに憧れてるんだって。最近ギフト所有者の犯罪とか増えてるしギフトなんか発現して欲しくないんだけど……」
「貴様!?親なのに、ギフトを持ちたいというウチの気持ちを無下にする気か!?」
「親だから僕は咲夜のギフト発現なんて嫌なの。ギフト所有者の犯罪とかかなり罪重いんだよ。怖いったらありゃしない」
ギフトには憧れを抱く人もいるし、逆に持ちたくないって人もいる。
それくらい尊敬と畏怖の感情を持たせるギフトの存在。
ゲームでも、この世界に生きてからもギフトは危険な存在だと俺自身考えている。
「だいたい、咲夜はどんなギフトが欲しいんだ?」
「そうだな。コーヒーに関連したギフトが欲しい」
「コーヒーに関連した?」
「『ウチの唾液がコーヒーに変わる』ギフト、とか」
「きたねぇ……、飲みたくねぇ……。自分の唾液がコーヒーだったら良いなとか思ったことねーよ」
それでまた、ぶーぶーと文句と言い掛かりを付ける咲夜と、ゲラゲラ笑うマスター。
俺がギフト持ちなんてことは言えないけど、2人には幸せな家庭であって欲しいと願う。
マスターも咲夜も『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズには未登場キャラなので、事件や事故には巻き込まれないクリーンな人生を送れるはずだ。
コーヒーを飲み込む。
この味を引き継ぐために、咲夜も成長していくのかな。
本当に先の人生は楽しみだ。
2人にはいつまでも、平和なこの店を営んで欲しいなと、切に願うのであった。
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