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第一章
23、嵐の前の甘さ
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眩しさに目を開けるといつもの朝と同じくルートヴィッヒの腕の中にいた。
安心すると共に、昨日散々乱れた姿を見られた事を思い出すと、穴があったら入りたい気持ちにもなってくる。
後ろにいるルートヴィッヒはまだ眠っているのか、規則正しい呼吸が聞こえてくる。
今動いたら起こしてしまいそうだ。
(でもいつもは私より遅く寝て私より早くお目覚めになるから、もしかしてもう起きてらして、待って下さっているのかしら……)
エレオノーラは振り向いてみようかどうしようか迷った末に、そーっとルートヴィッヒの腕の中で体の向きを変えた。
(なんて綺麗な寝顔……やっぱり彫刻みたいに整ってるわ)
昨日、あんな口に出せないような事を共有した人とは思えない。
エレオノーラがもぞもぞと動いたのでルートヴィッヒの目蓋がピクッと動き、しばらくすると目が開き、にっこりと微笑んだ。
その笑顔は日増しに甘くなっているような気がしていたけれど、今日のは特に甘い気がする。
きっとこんな笑顔を向けられたら、ほとんどの女性は恋に落ちてしまうに決まってる。
「エル、おはよう。身体の調子はどうだ?」
いつも聞かれていることなのに、今日は違ったニュアンスを含んでいる気がして、思わず目を逸らしてしまう。
「大丈夫です。今日も元気です」
「本当に?」
うつむいたエレオノーラをのぞきこんで確かめるルートヴィッヒ。
「うん、顔色は悪くないな」
ちゅっと音を立ててキスをされる。
恥ずかしくてまたうつむいてしまったエレオノーラをぎゅっと抱き寄せるルートヴィッヒからは石鹸の良い香りがした。
「ルートヴィッヒ様、昨夜お風呂に入られたのですか?」
「あ、あぁ、そうだな。エルが寝ている時にだ。そんな事はどうでも良いのだが──」
今度はルートヴィッヒが慌てている。なんでだろうと不思議に思うものの、話の途中なので口を挟まずに聞いた。
「昨日伝えようと思ってすっかり忘れてしまったのだが、今日からしばらく弟が家に戻ってくる。いつも直前に連絡が来るんだ、あいつは」
「そうだったのですか? それでは早く準備しないと!」
エレオノーラが今にもベッドから飛び出さんばかりに起き上がろうとするのをルートヴィッヒは抱きすくめた。
「いや、特に準備は要らない。まだ二十歳そこそこの若造で所帯もないし、一人で気軽に帰ってくるだけなんだ」
「そうなのですか……?」
それにしても、色々準備もあるだろうにと思うエレオノーラ。
「エルは男兄弟が居ないから分かりにくいかもしれないが、あっさりしてるんだ、兄弟と言うのは」
「ルートヴィッヒ様がそうおっしゃるなら…… 私は姉達が実家に戻って来てくれることがあると、姉達の好きなお茶やお菓子、お料理の準備をしたり、テーブルのセッティングやお部屋の準備等も二人の好きなモチーフや色で揃えたりして、やることが結構多かったです」
「まぁ、女性はそうかもしれないが、弟の場合は多分そう言うのも一切興味無いし、肉があれば文句はない。俺も同じだが」
「そう言うものなのですね」
エレオノーラはちょっと残念にも思った。もしルートヴィッヒに妹でも居たら、レースの種類や苦手な種類の刺繍のコツについて聞いたり、色々話せたかもしれない。
「男のくせに話しすぎるところはあるが、根は良い奴なんだ。しばらく迷惑を掛けるが宜しく頼む」
「はい、ルートヴィッヒ様の大切な弟君ですから、出来る限りのおもてなしが出来るように頑張ります!」
「心強いな、でもそんなに気張らなくて大丈夫だ」
ルートヴィッヒはもう一度エレオノーラに先程より少し長いキスをして、ベッドを出た。
「支度を終えたら食堂で待っている」
「はい、私もすぐにうかがいます」
ルートヴィッヒに昨日の官能的な熱はなく、爽やかな笑顔をエレオノーラに向けると颯爽と寝室を出ていった。
(変に意識しちゃうけど、ルートヴィッヒ様は自然体だわ……やっぱり経験値の差なのかしら……それに女嫌いって嘘なのよね……?)
安心すると共に、昨日散々乱れた姿を見られた事を思い出すと、穴があったら入りたい気持ちにもなってくる。
後ろにいるルートヴィッヒはまだ眠っているのか、規則正しい呼吸が聞こえてくる。
今動いたら起こしてしまいそうだ。
(でもいつもは私より遅く寝て私より早くお目覚めになるから、もしかしてもう起きてらして、待って下さっているのかしら……)
エレオノーラは振り向いてみようかどうしようか迷った末に、そーっとルートヴィッヒの腕の中で体の向きを変えた。
(なんて綺麗な寝顔……やっぱり彫刻みたいに整ってるわ)
昨日、あんな口に出せないような事を共有した人とは思えない。
エレオノーラがもぞもぞと動いたのでルートヴィッヒの目蓋がピクッと動き、しばらくすると目が開き、にっこりと微笑んだ。
その笑顔は日増しに甘くなっているような気がしていたけれど、今日のは特に甘い気がする。
きっとこんな笑顔を向けられたら、ほとんどの女性は恋に落ちてしまうに決まってる。
「エル、おはよう。身体の調子はどうだ?」
いつも聞かれていることなのに、今日は違ったニュアンスを含んでいる気がして、思わず目を逸らしてしまう。
「大丈夫です。今日も元気です」
「本当に?」
うつむいたエレオノーラをのぞきこんで確かめるルートヴィッヒ。
「うん、顔色は悪くないな」
ちゅっと音を立ててキスをされる。
恥ずかしくてまたうつむいてしまったエレオノーラをぎゅっと抱き寄せるルートヴィッヒからは石鹸の良い香りがした。
「ルートヴィッヒ様、昨夜お風呂に入られたのですか?」
「あ、あぁ、そうだな。エルが寝ている時にだ。そんな事はどうでも良いのだが──」
今度はルートヴィッヒが慌てている。なんでだろうと不思議に思うものの、話の途中なので口を挟まずに聞いた。
「昨日伝えようと思ってすっかり忘れてしまったのだが、今日からしばらく弟が家に戻ってくる。いつも直前に連絡が来るんだ、あいつは」
「そうだったのですか? それでは早く準備しないと!」
エレオノーラが今にもベッドから飛び出さんばかりに起き上がろうとするのをルートヴィッヒは抱きすくめた。
「いや、特に準備は要らない。まだ二十歳そこそこの若造で所帯もないし、一人で気軽に帰ってくるだけなんだ」
「そうなのですか……?」
それにしても、色々準備もあるだろうにと思うエレオノーラ。
「エルは男兄弟が居ないから分かりにくいかもしれないが、あっさりしてるんだ、兄弟と言うのは」
「ルートヴィッヒ様がそうおっしゃるなら…… 私は姉達が実家に戻って来てくれることがあると、姉達の好きなお茶やお菓子、お料理の準備をしたり、テーブルのセッティングやお部屋の準備等も二人の好きなモチーフや色で揃えたりして、やることが結構多かったです」
「まぁ、女性はそうかもしれないが、弟の場合は多分そう言うのも一切興味無いし、肉があれば文句はない。俺も同じだが」
「そう言うものなのですね」
エレオノーラはちょっと残念にも思った。もしルートヴィッヒに妹でも居たら、レースの種類や苦手な種類の刺繍のコツについて聞いたり、色々話せたかもしれない。
「男のくせに話しすぎるところはあるが、根は良い奴なんだ。しばらく迷惑を掛けるが宜しく頼む」
「はい、ルートヴィッヒ様の大切な弟君ですから、出来る限りのおもてなしが出来るように頑張ります!」
「心強いな、でもそんなに気張らなくて大丈夫だ」
ルートヴィッヒはもう一度エレオノーラに先程より少し長いキスをして、ベッドを出た。
「支度を終えたら食堂で待っている」
「はい、私もすぐにうかがいます」
ルートヴィッヒに昨日の官能的な熱はなく、爽やかな笑顔をエレオノーラに向けると颯爽と寝室を出ていった。
(変に意識しちゃうけど、ルートヴィッヒ様は自然体だわ……やっぱり経験値の差なのかしら……それに女嫌いって嘘なのよね……?)
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