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第一章

21、夜更かしの理由

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「ルートヴィッヒ様、お疲れのところ申し訳ございません、少しお時間いただけますでしょうか?」

寝室にルートヴィッヒが入ってくるやいなや、エレオノーラがベッド脇の椅子から立ち上がって言ったのは、午前一時過ぎの事だった。
ここ二週間、仕事が終わるのが遅く、今日は比較的早い方だ。

「どうしたエル、こんな時間まで起きていると、身体にさわるぞ? 」

エレオノーラの方へ歩み寄り、椅子に掛けてあったガウンを着させる。

「身体が冷えている。何か温かい物を持って来させよう」

「大丈夫です。寒くないです……」

エレオノーラが椅子に座りなおすと、ルートヴィッヒもベッドに座った。

「ルートヴィッヒ様と夫婦になりたいのですっ!」

ルートヴィッヒが帰って来るまでに何回もイメージトレーニングした言葉を口にする。
意気込んだせいで少し声が大きくなってしまった。

「もう夫婦だと思っていたが、違うのか?」

一世一代の言葉にルートヴィッヒが少し驚いたように返す。

「違わないです、でもそうじゃなくて……私をルートヴィッヒ様のものにしてください」

やっと先程の言葉の意味を解したルートヴィッヒはエレオノーラを見返した。

「どうした急に? 何かあったのか?」

「そう言う訳では……でもルートヴィッヒ様と夫婦になって数ヵ月経ちましたが、私達にはその、夫婦生活と言うものがありません。それが私のせいだと言うのも分かっています。ルートヴィッヒ様の前で、別の男性の事で泣いたり、色々失礼な事をしてしまいました……申し訳ございませんでした」

ルートヴィッヒはエレオノーラの言葉を遮らず、聞いてくれている。

「もう遅いのかもしれませんが、私が何か出来る事があれば、教えていただきたいのです」

今日は絶対に泣いたら駄目だと込み上げそうになる涙を必死で抑え込む。

「エル、謝るのは俺の方だ。こんなにエルが思い詰めていたのに気付いてやれなくて、すまなかった」

ルートヴィッヒは心細そうなエレオノーラの手を取って、ベッドに座る自分の横に座らせた。



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