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第一章
18、上と下は別事情
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クルゼに着いた翌日の朝、急に目が覚めたと思ったらルートヴィッヒの腕の中で眠っていたと判り、サイレントにパニックになった。
(でももう夫婦なのだから、この位当然なのよね)
そう自分に言い聞かせる。
旅の間は毎晩意識も記憶も無い位に深い眠りについて、朝はメイドに起こされるまでガッツリと寝てしまっていたので、起きた時に隣にルートヴィッヒが居ることはなかった。
けれど、今は目の前にルートヴィッヒの顔がある。
キスした時を除けば、こんなに近くに居たことは今まで一度もない。
エレオノーラがそっと腕から抜け出そうとすると、ルートヴィッヒの目蓋が開いて至近距離で目が合った。
「よく眠れたか? 身体の調子はどうだ?」
「お陰様で昨日より大分楽になりました」
「そうか、あと最低二日は安静にしていないといけないそうだ。退屈かもしれないが、しばらくベッドで過ごしてもらう」
「はい……」
初っ端から出来の悪い妻だと思われているに違いない。エレオノーラはルートヴィッヒの役に立てるとまでは思っていないが、せめてお荷物にならない位ではいたかった。
「エル、そんな心配そうな顔をするな。何もこれから一生ベッドに居なければならないわけじゃない」
よっぽどしょげて見えたのか、ルートヴィッヒはエレオノーラを励ましてくれた。
「すみません、私、もっと丈夫で図太いはずだったのですが、数日間馬車に乗ったくらいでこんな風になってしまうなんて……」
うつむくエレオノーラの細い顎をルートヴィッヒが掬った。
「何も気にしなくて良い。エルはここに来たばかりなんだ。気候も文化も食べ物も違うし、エルの慣れ親しんだ場所からも遠い。疲れが出て当然だ。少しずつ、少しずつ慣れれば大丈夫だ。無理しなくて良いんだ」
「ルートヴィッヒ様……」
「そんなに悲しい顔をしていると、エルの姉上様達に怒られてしまうな」
結婚式で目の当たりにした姉二人からの溺愛っぷりを思い出しながら明るく冗談めかしてルートヴィッヒが言うと、何故かエレオノーラの瞳に涙が浮かんだ。
「すまない、何か場違いな事を言ったか?」
「いえ、ただお姉様達の事を思い出したら懐かしくて……」
ついにこぼれてしまった涙をルートヴィッヒがいつかのように拭ってくれた。
「軽はずみな言葉に思えるかもしれないが、これから少しずつでもエルがここを自分の第二の故郷と思えるよう努力する。心細かったら俺を頼れ」
「ありがとうございます……」
エレオノーラの涙はまだ完全には止まらず、目の周りが赤らんでいる。
気が付くとエレオノーラにキスしていた。
その涙を止めたいのに上手い方法が見つからず、うさぎの様に泣き腫らすエレオノーラを見ていたら、体が勝手に動いていた。
「ルートヴィッヒ様はいつも突然キスするのですね……」
短いキスだったが見事涙は止まった。けれど今度は熱がぶり返したかと思うくらい耳まで赤くなるエレオノーラ。
「予告する方が珍しい。こう言うのは流れで自然にするものだ」
「今、キスの流れがあったのですか?」
キョトンとしたエレオノーラに聞かれて答えに困る。
「分からん。ただ夫婦が同じベッドに居たらキスしても別に不思議でもない」
エレオノーラの赤面が自分にもうつりそうになるのを感じたルートヴィッヒはもう一度エレオノーラに口付けた。
「……ん……っ」
ルートヴィッヒはエレオノーラの漏れた吐息が耳からの媚薬の様に染み込んで来るのを感じた。
愛する愛さないと言う話は別として、エレオノーラ程に美しい女と同じベッドにいて何もしないのは、冷静になってみると、男にとってかなりの拷問だ。
フランツとの事で激しく落ち込み、泣いているエレオノーラを側で見たり、彼女にとって過酷な旅路を思うと冷静で居られたが、こうして自分の城まで連れてくると、そろそろ浅ましい欲望に飲み込まれそうになって来る。
そもそも初めてエレオノーラに会った日から、女を抱いていない。
その小さな口を舌でなぞって開けさせて、少し熱っぽい口蓋を舐めると、エレオノーラの身体がビクッと震えた。
初めてキスした時から思っていたが、多分エレオノーラとの身体の相性は良いはずだ。
彼女の柔らかくしなやかな身体はキスだけでなく全身で絡み合ってみたいと思わせる。
この細い腕や脚が自分の身体にしがみついている所を下から思う存分突き上げたい衝動に駆られた。
思わずキスを更に深めたところで、エレオノーラが自分のシャツをきゅっと握っているのに気付く。
男からすると相当に可愛い仕草で、このまま押し倒したくなるが、そこは鋼の精神力で何とか思いとどまった。
下着の下で痛みを感じ始めるほど存在感を示すモノを無視しながら、エレオノーラの唇にもう一度触れるだけの軽いキスをする。
「エル、着替えて仕事に行ってくる。朝食を一緒に取れなくてすまない。昼にまた会おう」
「はい……あ、えっと、行ってらっしゃいませ、ルートヴィッヒ様」
エレオノーラはルートヴィッヒが散々キスをして腫れさせた唇で言うと、頬にキスをした。
それが親愛のキスなのか、新妻の務めと言う義務感からの物なのかは分からないが、悪くない、と思ったルートヴィッヒだった。
(でももう夫婦なのだから、この位当然なのよね)
そう自分に言い聞かせる。
旅の間は毎晩意識も記憶も無い位に深い眠りについて、朝はメイドに起こされるまでガッツリと寝てしまっていたので、起きた時に隣にルートヴィッヒが居ることはなかった。
けれど、今は目の前にルートヴィッヒの顔がある。
キスした時を除けば、こんなに近くに居たことは今まで一度もない。
エレオノーラがそっと腕から抜け出そうとすると、ルートヴィッヒの目蓋が開いて至近距離で目が合った。
「よく眠れたか? 身体の調子はどうだ?」
「お陰様で昨日より大分楽になりました」
「そうか、あと最低二日は安静にしていないといけないそうだ。退屈かもしれないが、しばらくベッドで過ごしてもらう」
「はい……」
初っ端から出来の悪い妻だと思われているに違いない。エレオノーラはルートヴィッヒの役に立てるとまでは思っていないが、せめてお荷物にならない位ではいたかった。
「エル、そんな心配そうな顔をするな。何もこれから一生ベッドに居なければならないわけじゃない」
よっぽどしょげて見えたのか、ルートヴィッヒはエレオノーラを励ましてくれた。
「すみません、私、もっと丈夫で図太いはずだったのですが、数日間馬車に乗ったくらいでこんな風になってしまうなんて……」
うつむくエレオノーラの細い顎をルートヴィッヒが掬った。
「何も気にしなくて良い。エルはここに来たばかりなんだ。気候も文化も食べ物も違うし、エルの慣れ親しんだ場所からも遠い。疲れが出て当然だ。少しずつ、少しずつ慣れれば大丈夫だ。無理しなくて良いんだ」
「ルートヴィッヒ様……」
「そんなに悲しい顔をしていると、エルの姉上様達に怒られてしまうな」
結婚式で目の当たりにした姉二人からの溺愛っぷりを思い出しながら明るく冗談めかしてルートヴィッヒが言うと、何故かエレオノーラの瞳に涙が浮かんだ。
「すまない、何か場違いな事を言ったか?」
「いえ、ただお姉様達の事を思い出したら懐かしくて……」
ついにこぼれてしまった涙をルートヴィッヒがいつかのように拭ってくれた。
「軽はずみな言葉に思えるかもしれないが、これから少しずつでもエルがここを自分の第二の故郷と思えるよう努力する。心細かったら俺を頼れ」
「ありがとうございます……」
エレオノーラの涙はまだ完全には止まらず、目の周りが赤らんでいる。
気が付くとエレオノーラにキスしていた。
その涙を止めたいのに上手い方法が見つからず、うさぎの様に泣き腫らすエレオノーラを見ていたら、体が勝手に動いていた。
「ルートヴィッヒ様はいつも突然キスするのですね……」
短いキスだったが見事涙は止まった。けれど今度は熱がぶり返したかと思うくらい耳まで赤くなるエレオノーラ。
「予告する方が珍しい。こう言うのは流れで自然にするものだ」
「今、キスの流れがあったのですか?」
キョトンとしたエレオノーラに聞かれて答えに困る。
「分からん。ただ夫婦が同じベッドに居たらキスしても別に不思議でもない」
エレオノーラの赤面が自分にもうつりそうになるのを感じたルートヴィッヒはもう一度エレオノーラに口付けた。
「……ん……っ」
ルートヴィッヒはエレオノーラの漏れた吐息が耳からの媚薬の様に染み込んで来るのを感じた。
愛する愛さないと言う話は別として、エレオノーラ程に美しい女と同じベッドにいて何もしないのは、冷静になってみると、男にとってかなりの拷問だ。
フランツとの事で激しく落ち込み、泣いているエレオノーラを側で見たり、彼女にとって過酷な旅路を思うと冷静で居られたが、こうして自分の城まで連れてくると、そろそろ浅ましい欲望に飲み込まれそうになって来る。
そもそも初めてエレオノーラに会った日から、女を抱いていない。
その小さな口を舌でなぞって開けさせて、少し熱っぽい口蓋を舐めると、エレオノーラの身体がビクッと震えた。
初めてキスした時から思っていたが、多分エレオノーラとの身体の相性は良いはずだ。
彼女の柔らかくしなやかな身体はキスだけでなく全身で絡み合ってみたいと思わせる。
この細い腕や脚が自分の身体にしがみついている所を下から思う存分突き上げたい衝動に駆られた。
思わずキスを更に深めたところで、エレオノーラが自分のシャツをきゅっと握っているのに気付く。
男からすると相当に可愛い仕草で、このまま押し倒したくなるが、そこは鋼の精神力で何とか思いとどまった。
下着の下で痛みを感じ始めるほど存在感を示すモノを無視しながら、エレオノーラの唇にもう一度触れるだけの軽いキスをする。
「エル、着替えて仕事に行ってくる。朝食を一緒に取れなくてすまない。昼にまた会おう」
「はい……あ、えっと、行ってらっしゃいませ、ルートヴィッヒ様」
エレオノーラはルートヴィッヒが散々キスをして腫れさせた唇で言うと、頬にキスをした。
それが親愛のキスなのか、新妻の務めと言う義務感からの物なのかは分からないが、悪くない、と思ったルートヴィッヒだった。
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