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第一章
11、祝福された結婚
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ルートヴィッヒとエレオノーラが出会って二ヶ月、色々なプロセスを超特急で済ませ、王都のトリエスト大聖堂で大規模な結婚式が執り行われた。
「エル、泣きたくなったら涙を流していい、でも頑張って笑うんだ。そうしたら皆、幸せで泣いているのだと思ってくれる」
結婚式の直前にルートヴィッヒはエレオノーラにそんな事を言った。
「泣いたりしません。ルートヴィッヒ様と初めてお会いした時に泣いてしまったのは、いきなりのキスだったので、ただびっくりしただけですっ」
「そうか、それなら良い」
「ルートヴィッヒ様からしたら私は子供かもしれませんが、一応もう成人していますし、侯爵家の娘としての振る舞いは心得ているつもりです」
「それは失礼した。そうだな、エルはもう立派なレディーだ」
少しだけムキになるエレオノーラに余裕で微笑むルートヴィッヒは初めて会った時よりもずっと優しそうに見える。
初日に緊張していたと言ったのは案外本当の事だったのかもしれない。
出会ったその日にキスをされてから、三度ルートヴィッヒに会ったけれど、三回ともルートヴィッヒはエレオノーラに触れなかった。
かと言って自分が泣いてしまったことで極端に距離を置かれている感じもしなかった。
(やっぱり女嫌いの噂は嘘で、きっと女性の扱いに慣れていらっしゃるんだわ。それとも私を子供と思っているから、良いようにあしらわれているのかしら……)
大司教の長い文言が終わり、やっと宣誓の場面になった。
お互いに誓いの言葉を述べ終えると、ルートヴィッヒがエレオノーラのヴェールを上げた。
エレオノーラは今の今まで緊張していたのに、先程の控え室での会話を思い出し、自然と口角が上がってしまった。
ルートヴィッヒの整った顔が近付いてくる。
「目を閉じて」ほぼ無音に近い程に小声でルートヴィッヒに言われて慌てて目蓋を閉じる。
さらっとした感触を唇に感じたと思ったら、あちらこちらから盛大な拍手が湧き起こり、神前での誓いの口付けは一瞬で終わった。
再び目を開けると、ルートヴィッヒはエレオノーラに微笑んでから、世にも美しいよそ行きの笑顔を招待客の方へ向けていた。
エレオノーラもルートヴィッヒにならって笑顔を浮かべる。
それをまるで良くできました、と言うかのようにルートヴィッヒの大きな手がエレオノーラの腰を引き寄せた。
「エル、泣きたくなったら涙を流していい、でも頑張って笑うんだ。そうしたら皆、幸せで泣いているのだと思ってくれる」
結婚式の直前にルートヴィッヒはエレオノーラにそんな事を言った。
「泣いたりしません。ルートヴィッヒ様と初めてお会いした時に泣いてしまったのは、いきなりのキスだったので、ただびっくりしただけですっ」
「そうか、それなら良い」
「ルートヴィッヒ様からしたら私は子供かもしれませんが、一応もう成人していますし、侯爵家の娘としての振る舞いは心得ているつもりです」
「それは失礼した。そうだな、エルはもう立派なレディーだ」
少しだけムキになるエレオノーラに余裕で微笑むルートヴィッヒは初めて会った時よりもずっと優しそうに見える。
初日に緊張していたと言ったのは案外本当の事だったのかもしれない。
出会ったその日にキスをされてから、三度ルートヴィッヒに会ったけれど、三回ともルートヴィッヒはエレオノーラに触れなかった。
かと言って自分が泣いてしまったことで極端に距離を置かれている感じもしなかった。
(やっぱり女嫌いの噂は嘘で、きっと女性の扱いに慣れていらっしゃるんだわ。それとも私を子供と思っているから、良いようにあしらわれているのかしら……)
大司教の長い文言が終わり、やっと宣誓の場面になった。
お互いに誓いの言葉を述べ終えると、ルートヴィッヒがエレオノーラのヴェールを上げた。
エレオノーラは今の今まで緊張していたのに、先程の控え室での会話を思い出し、自然と口角が上がってしまった。
ルートヴィッヒの整った顔が近付いてくる。
「目を閉じて」ほぼ無音に近い程に小声でルートヴィッヒに言われて慌てて目蓋を閉じる。
さらっとした感触を唇に感じたと思ったら、あちらこちらから盛大な拍手が湧き起こり、神前での誓いの口付けは一瞬で終わった。
再び目を開けると、ルートヴィッヒはエレオノーラに微笑んでから、世にも美しいよそ行きの笑顔を招待客の方へ向けていた。
エレオノーラもルートヴィッヒにならって笑顔を浮かべる。
それをまるで良くできました、と言うかのようにルートヴィッヒの大きな手がエレオノーラの腰を引き寄せた。
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