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07.同級生とラーメン屋
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三〇分くらい待ったところで、ようやく店内に入ることができた。中はそんなに広くないが、新しい店というだけあって、きれいにされている。
古くて汚いというのが、皇祐の中のラーメン屋のイメージだったから、意外に思えた。
「お客様は何名ですか?」
学生にも見える可愛らしい女の子が、皇祐たちの前にやってきて、訊ねてきた。
「五名だよー」
敦貴が気だるそうな声で答えると、店員の彼女が、店内を確認しながら少し困った顔をする。
「ぎりぎり四名でしたら座れるんですけど……もう少ししたら空くと思いますので、他のお客様を先にご案内してもよろしいですか?」
かなり混んでいるから、五名いっぺんに座るのはなかなか厳しいらしい。中には相席している人たちもいるようだった。
「そうなのー? じゃあ、ケンちゃんたち先に食べてていいよ。オレとコウちゃん、次に空くまで待ってるから。いいよね、コウちゃん?」
「……構わないけど」
「じゃあ、先に食ってるな」
三人は店員に案内されて、一番奥の座敷に座った。そこも狭いようで、三人が座ってもやっとという感じだ。
「敦貴……良かったのか? みんなと食べなくて」
あんなにも早く食べたいと不満をこぼしていたのに、予想外の行動に目を見張る。
「あ、コウちゃん、みんなと食べたかった? ごめんねー」
軽く腰を曲げ、顔の前で手を合わせて詫びてきた。
「いや、僕は……いいんだ……」
みんなで顔を合わせて食事をするのには、抵抗があった。だから、離れて座ることになって、正直なところほっとしている。
でも、敦貴は違う。みんなと食べることを楽しみにしていたに違いない。
そもそもの原因は、昼休みに皇祐が、敦貴に声をかけたことから始まっていた。そのせいで、今度は敦貴に声をかけられ、二人は関わることになってしまった。この場に皇祐がいなければ、敦貴はみんなと一緒に食べることができたはずだ。
時おり、先に座った男子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。そこに、敦貴はいない。心を引き裂くようなズキズキとした痛みに襲われた。
席が空くのを待っている間、皇祐と敦貴に会話はなかった。つまらない思いをしているのではないかと気がかりだったが、話題が見つからない。ただ、黙っているしかなかった。
それから少し経って、二人はやっとカウンターの席に案内される。
「なに食べようかな。迷うなー」
メニューを見ている敦貴は、ご機嫌に鼻歌を歌いながら、口元をほころばせていた。その様子にほっと胸を撫で下ろし、同じくメニューを眺めた。
「コウちゃんは、何にする?」
どれを選べばいいのかわからず、混乱した。不安そうに皇祐が敦貴の方に視線を向ける。
「……うん、どうすればいいだろう」
「迷ってるの? だったらさ、オススメの塩にしなよ。オレは味噌にするから、味見し合おうー」
こちらに身体を寄せてきて、皇祐が持っていたメニューを覗き込むようにして笑顔を見せた。
「任せるよ……」
「わかった。おっちゃん、塩と味噌ねー」
豪快に手をあげて、慣れた様子で敦貴は注文を頼んだ。
「ありがとう……」
「んー?」
敦貴にお礼を言えば、不思議そうな表情を浮かべた。
彼は何もしていないつもりなのかもしれないが、皇祐にとっては有難いことだった。店の中で大きな声を出して注文をするという行為が、皇祐にはハードルが高かったからだ。
古くて汚いというのが、皇祐の中のラーメン屋のイメージだったから、意外に思えた。
「お客様は何名ですか?」
学生にも見える可愛らしい女の子が、皇祐たちの前にやってきて、訊ねてきた。
「五名だよー」
敦貴が気だるそうな声で答えると、店員の彼女が、店内を確認しながら少し困った顔をする。
「ぎりぎり四名でしたら座れるんですけど……もう少ししたら空くと思いますので、他のお客様を先にご案内してもよろしいですか?」
かなり混んでいるから、五名いっぺんに座るのはなかなか厳しいらしい。中には相席している人たちもいるようだった。
「そうなのー? じゃあ、ケンちゃんたち先に食べてていいよ。オレとコウちゃん、次に空くまで待ってるから。いいよね、コウちゃん?」
「……構わないけど」
「じゃあ、先に食ってるな」
三人は店員に案内されて、一番奥の座敷に座った。そこも狭いようで、三人が座ってもやっとという感じだ。
「敦貴……良かったのか? みんなと食べなくて」
あんなにも早く食べたいと不満をこぼしていたのに、予想外の行動に目を見張る。
「あ、コウちゃん、みんなと食べたかった? ごめんねー」
軽く腰を曲げ、顔の前で手を合わせて詫びてきた。
「いや、僕は……いいんだ……」
みんなで顔を合わせて食事をするのには、抵抗があった。だから、離れて座ることになって、正直なところほっとしている。
でも、敦貴は違う。みんなと食べることを楽しみにしていたに違いない。
そもそもの原因は、昼休みに皇祐が、敦貴に声をかけたことから始まっていた。そのせいで、今度は敦貴に声をかけられ、二人は関わることになってしまった。この場に皇祐がいなければ、敦貴はみんなと一緒に食べることができたはずだ。
時おり、先に座った男子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。そこに、敦貴はいない。心を引き裂くようなズキズキとした痛みに襲われた。
席が空くのを待っている間、皇祐と敦貴に会話はなかった。つまらない思いをしているのではないかと気がかりだったが、話題が見つからない。ただ、黙っているしかなかった。
それから少し経って、二人はやっとカウンターの席に案内される。
「なに食べようかな。迷うなー」
メニューを見ている敦貴は、ご機嫌に鼻歌を歌いながら、口元をほころばせていた。その様子にほっと胸を撫で下ろし、同じくメニューを眺めた。
「コウちゃんは、何にする?」
どれを選べばいいのかわからず、混乱した。不安そうに皇祐が敦貴の方に視線を向ける。
「……うん、どうすればいいだろう」
「迷ってるの? だったらさ、オススメの塩にしなよ。オレは味噌にするから、味見し合おうー」
こちらに身体を寄せてきて、皇祐が持っていたメニューを覗き込むようにして笑顔を見せた。
「任せるよ……」
「わかった。おっちゃん、塩と味噌ねー」
豪快に手をあげて、慣れた様子で敦貴は注文を頼んだ。
「ありがとう……」
「んー?」
敦貴にお礼を言えば、不思議そうな表情を浮かべた。
彼は何もしていないつもりなのかもしれないが、皇祐にとっては有難いことだった。店の中で大きな声を出して注文をするという行為が、皇祐にはハードルが高かったからだ。
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