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第1章 【side 敦貴】
03.イライラが募る同窓会 ③
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柿田が気を持たせるような話し方をするせいで、旧友たちも興味を持ち始める。
「学生の頃の仲谷くんとイメージと違うの?」
「びっくりするぜ」
「ヒントだせって」
「それ言ったら面白くないだろ。正解する奴いるかな」
ゲーム感覚で面白がっているようにしか見えない。イライラさせられた敦貴は、右拳をぎゅっと握る。
「物静かだったよな」
「可愛い顔してたからアイドルとか」
「トラック運転手とか。イメージじゃなくね?」
「ちがいまーす。もう正解言っていい?」
学生の頃から自分に注目を集めるためには人の秘密も平気で言う男。今回もそうだった。
「いいよ、早く言えって」
「実はアイツ、ホストやってんの。ほ、す、と。あの仲谷が客相手に酒作ったりカラオケしたりすんだぜ、笑っちゃうだろ」
「いい加減にしろよ、柿田!」
気づいたら敦貴は、柿田の胸倉を掴んでいた。悲鳴と共に女性たちが周りに散らばる。
「何だよ、別に嘘じゃねーんだから、いいだろ」
「性格の悪いおまえは、昔から腹が立つんだよ!」
「あっそ。じゃあ、仲谷に電話してホストやってるかどうか直接確認してみたら?」
「あ?」
「おまえ、番号知らないんだろ。オレ、聞いたからさ」
敦貴の腕を振り解いた柿田は、テーブルの上にあったコースターに番号を殴り書きする。
「ほら、かけてみろよ」
柿田からコースターを受け取った敦貴の手は少し震えていた。親友だった皇祐の電話番号だ。
嬉しいはずなのに事実を知るのが怖かった。だからといって、ここで電話をしなければまた柿田に何を言われるかわかったものじゃない。引っ込みがつかなくなっていた。
一気に場の雰囲気が悪くなったせいで、旧友たちも不安そうな顔をしながら「もう、やめなよ」と止めに入る始末だ。
敦貴は、尻のポケットから携帯電話を取り出した。かけるのを躊躇していれば、柿田に電話を奪われる。
「さっさとしろ」
「おまえ、勝手に!」
柿田は、敦貴の携帯電話に番号を打ち込んですぐに突っ返してくる。
「良かったな、愛しのコウちゃんだよ」
バカにしたように鼻で笑った。
かけてしまった以上、切ることもできず、電話をおそるおそる耳にあてた。呼び出し音が鳴っている。
皇祐の声が聞けるのは何年ぶりだろうか。最初に何を話そう。仕事のことはどうでも良かった。彼が元気でいてくれたら、それだけで満足できる。
あとは、『あの時どうして連絡がつかなくなったの?』ということだ。
最後に別れた時の皇祐は、今までと何ら変わりなく、そのまま会えなくなるなんて微塵も思わなかった。
電話は呼び出し音が鳴り続いていた。期待と不安でいっぱいになる。心を落ち着かせるために何度か静かに深呼吸した。
しかしだいぶ待った後、留守電に切り替わってしまって皇祐が電話に出ることはなかった。もやもやと疑惑が浮かぶ。
「……これ、本当にコウちゃんの番号?」
柿田なら敦貴に意地悪するために、適当な番号を教える可能性は十分にあった。
「留守電? じゃあ、仕事中なんじゃねーの」
既に興味を失っていたのか、柿田は同級生女性の肩を組んで違う話題で盛り上がっている。
皇祐と話せると思って一人胸を躍らせていた自分が馬鹿らしく思えた。柿田のことを信用するなんて、どうかしていたのだ。
「オレ、帰るわ」
すっかりつまらなくなった敦貴は、上着を肩にかけホテルから出るのだった。
「学生の頃の仲谷くんとイメージと違うの?」
「びっくりするぜ」
「ヒントだせって」
「それ言ったら面白くないだろ。正解する奴いるかな」
ゲーム感覚で面白がっているようにしか見えない。イライラさせられた敦貴は、右拳をぎゅっと握る。
「物静かだったよな」
「可愛い顔してたからアイドルとか」
「トラック運転手とか。イメージじゃなくね?」
「ちがいまーす。もう正解言っていい?」
学生の頃から自分に注目を集めるためには人の秘密も平気で言う男。今回もそうだった。
「いいよ、早く言えって」
「実はアイツ、ホストやってんの。ほ、す、と。あの仲谷が客相手に酒作ったりカラオケしたりすんだぜ、笑っちゃうだろ」
「いい加減にしろよ、柿田!」
気づいたら敦貴は、柿田の胸倉を掴んでいた。悲鳴と共に女性たちが周りに散らばる。
「何だよ、別に嘘じゃねーんだから、いいだろ」
「性格の悪いおまえは、昔から腹が立つんだよ!」
「あっそ。じゃあ、仲谷に電話してホストやってるかどうか直接確認してみたら?」
「あ?」
「おまえ、番号知らないんだろ。オレ、聞いたからさ」
敦貴の腕を振り解いた柿田は、テーブルの上にあったコースターに番号を殴り書きする。
「ほら、かけてみろよ」
柿田からコースターを受け取った敦貴の手は少し震えていた。親友だった皇祐の電話番号だ。
嬉しいはずなのに事実を知るのが怖かった。だからといって、ここで電話をしなければまた柿田に何を言われるかわかったものじゃない。引っ込みがつかなくなっていた。
一気に場の雰囲気が悪くなったせいで、旧友たちも不安そうな顔をしながら「もう、やめなよ」と止めに入る始末だ。
敦貴は、尻のポケットから携帯電話を取り出した。かけるのを躊躇していれば、柿田に電話を奪われる。
「さっさとしろ」
「おまえ、勝手に!」
柿田は、敦貴の携帯電話に番号を打ち込んですぐに突っ返してくる。
「良かったな、愛しのコウちゃんだよ」
バカにしたように鼻で笑った。
かけてしまった以上、切ることもできず、電話をおそるおそる耳にあてた。呼び出し音が鳴っている。
皇祐の声が聞けるのは何年ぶりだろうか。最初に何を話そう。仕事のことはどうでも良かった。彼が元気でいてくれたら、それだけで満足できる。
あとは、『あの時どうして連絡がつかなくなったの?』ということだ。
最後に別れた時の皇祐は、今までと何ら変わりなく、そのまま会えなくなるなんて微塵も思わなかった。
電話は呼び出し音が鳴り続いていた。期待と不安でいっぱいになる。心を落ち着かせるために何度か静かに深呼吸した。
しかしだいぶ待った後、留守電に切り替わってしまって皇祐が電話に出ることはなかった。もやもやと疑惑が浮かぶ。
「……これ、本当にコウちゃんの番号?」
柿田なら敦貴に意地悪するために、適当な番号を教える可能性は十分にあった。
「留守電? じゃあ、仕事中なんじゃねーの」
既に興味を失っていたのか、柿田は同級生女性の肩を組んで違う話題で盛り上がっている。
皇祐と話せると思って一人胸を躍らせていた自分が馬鹿らしく思えた。柿田のことを信用するなんて、どうかしていたのだ。
「オレ、帰るわ」
すっかりつまらなくなった敦貴は、上着を肩にかけホテルから出るのだった。
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