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side 皇祐

00.親友だけど、初恋で大切な人 ①

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 友達として、一番の親友として、ずっと傍にいられたら良かった。

 自分の『好き』という感情は押し殺して――。


 ***


「ねえ、コウちゃん、日本から出ちゃう前にパフェ食べ放題行こうよー」
「敦貴じゃないんだから、僕はそんなにパフェを食べられないよ」
 
 仲谷皇祐なかたにこうすけは、高校卒業後、海外の大学に進学が決まっていた。
 卒業まで残りわずか。
 親友の小此木敦貴おこのぎあつきの傍にいられるのも限られている。
 
「えー、じゃあドーナツ食べ放題は? 確か今週いっぱい半額だった気がする」
「食べ放題ばかりだな。僕じゃなくて、スイーツ好きな河野さんと行った方がいいんじゃないか?」

 親友だけど、初恋で大切な人。
 相手は同性だから、この気持ちは一生言うつもりはなかった。
 好きなことを知られて気持ち悪がられるくらいなら、このままの関係の方がいい。
 
「だから、別れたって言ったじゃん。オレに付き合ってくれるのコウちゃんだけだし。大好きなコウちゃんと行きたいの」

 敦貴は、皇祐の視線に合うように屈んだ。そして、肩まで伸ばした長い髪を前髪ごとかきあげてニッと笑う。
 すぐに触れることができそうなほど距離が近づいて、心臓が飛び跳ねた。

 頬が赤くなっているかもしれない。
 平常心を装い、視線を外して一歩下がった。
 
 敦貴にとっては友だちとしての言葉なのはわかっている。
 それでも、好意を寄せている相手に言われると何度も勘違いしそうになった。

「やっぱりチョコ系は外せないよね。あと、クリーム系も」
「僕は一個が限界だぞ」
「いいよ、オレがコウちゃんの分も食べるし。行こう!」

 敦貴は迷うことなく皇祐の手を取って駆け出した。

「走らなくてもいいだろ」
「はやく、はやく!」

 繋がれた手は大きくて温かい。ずっと繋いでいたくなる。
 
 敦貴と出会い、彼を好きになってからは、この気持ちが知られないよう一人の友人として過ごしてきた。
 それでも時おり、自分の中の感情が溢れ出そうになる。
 敦貴に触れたい、抱きしめたい、そんなことばかりが頭の中を駆け巡るのだ。
 彼は自分のことを友だちだと思ってくれているのに、裏切っているような気持ちになって自己嫌悪に陥る。
 これを繰り返す日々だった。
 
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