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3章
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しおりを挟む私は迷っていた。
差し伸べられた手をとるかとらないか。
迷っているうちに相手の手が私の手をとって倒れていた私を引き上げた。
「君・・・。大丈夫?」
明らかに、高級そうな身なりをしているこの男性。
白地に金の刺繍があちこちに入った服なんて普通は着れないだろう。年齢は二十歳ぐらいだろうか。
深いエメラルドグリーンの切れ長の瞳に長い金髪を一まとめにしている。
そしてあまりにも綺麗な顔をしすぎてなんだか現実味がない。
ロンも綺麗な顔をしているが、この人はまた違う綺麗さというか、
ちょっと近寄れない冷たい感じがする。
私の中の野生のカンがかかわらないほうがいいと言っている。
「あ、ありがとうございます」
おずおずと立ち上がって早々にこの場から去ろうとした。
が、相手は手を離してくれそうにない。
「あの・・。手を離して頂けませんか?」
日向は困った。相手がなかなか手を離すどころか、顔をまじまじとみられ、
逃げられないのだ。
「君、最近来たの?名前は?」
「ヒナと申します。昨日からここでお世話になっております」
下手に逃げると怪しまれるだろう。ちゃんと挨拶して立ち去れば良い。
相手もそれに納得したのか日向の手を放してくれた。
が、しかし。
「ねえ、後から僕の部屋に来てくれない?いい物みせてあげるよ」
なにを急にこの人はいってるんだろう。
それに初対面で何者かもわからんのに部屋に行けるわけがない。
きっと誰もがこの人を知っているぐらい有名な人なんだろうけど、
あいにく私はこの国の人間じゃないんだけどな。
立場上、人に命令するのに馴れている口調だし、
なんだか、変な人にぶつかったみたい。
しばし困惑していると、くすくす笑い出した。
「別に君を襲うつもりはないよ。ただ、今の君が一番ほしいものと思うけど」
私が一番ほしいもの?というか、私が何者か知ってるの?
頭の中はハテナマークだらけになっている。
「そうだなぁ、真夜中に来たほうが面白いかもね。待ってるから」
そういうと、手をヒラヒラと振りながら鼻歌を歌い去っていった。
「何者なのよう・・・」
取り残された日向はつぶやいた。
大体、真っ黒な髪と、瞳はニコに茶色に染めてもらった。だから、見かけはこっちの人間とかわらないはず。
言葉も、問題ない。
だから、正体はばれてないはずだけど・・・・・。
誰かに相談したくても、もちろん携帯はないから相談できないし。
困った。どうしよう・・・・。
そのころ、ニコはルルにいきさつを話していた。
「で、私たちが国を脱出するときに隠れ蓑になるようなでかいことをやってほしいのよ」
「でかいことねぇ・・・・」
ルルは考え込んだ。
「あら、あなた火薬系の魔法は誰よりも優れてたじゃない。どかーんとさ。好きなようにやって」
ニコの適当な言い方にルルは吹き出した。まったく、師匠は相変わらずだ。
「どかーんて。それにそんなにでかいことするには費用が・・・」
「うん、大丈夫。フォレット国で領収書切ってて」
領収書って・・・・・・・。
でも、面白そう。ニコには恩があるし。ここで、フォレット国に恩を売ってて損はないだろう。
「それにね、今後ルルが起こすであろう事に関しても協力するってさ」
さすが、太っ腹だね。あの国王。
でも、私が計画してることなんで読んでるのさ。
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まったく、恐ろしい人だね。
今から作るとしても数時間はかかる。でも、間に合わないわけではない。
そこに運ぶ時間も踏まえるとギリギリ・・・・・か。
「わかったわ。その代わり、師匠も手伝ってよ。少しは火薬類持ってきてるんでしょ?
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二群にはそれを運ぶ車を用意させて。三軍には王宮の様子をもらさずこっちに報告させて。
四群にはでかいのあげるポイントのチェックと整備を」
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