Smile

アオ

文字の大きさ
上 下
22 / 55
2章

8

しおりを挟む


 暗い暗い地下室で再び明かりがともる。
 祭壇の前にはこの世界のものではないものが置いてある。
 青い光とともに円陣の中から人が現れた。
 その人物はまとっていた黒いローブをため息をつきながらとる。
 そしていつもの衣装に着替えると何事もなかったのように王宮の中にとけこんだ。


 「う~ん、ないなぁ」
 いつものようにしまったはずだけど。カバンやら机の中を探しても見つからなかった。
 最近、使ってないからいいんだけどさ。
 ここでは必要ないものだけどあれがないと・・・・なぁ。

 「どうしたの?」
 ベッドの下を覗いていたらニコが来た。
 「う~ん、探し物をネ。」
 ここにもないか。外かなぁ。探しに行くか。
 「どんなもの?一緒に探そうか?」
 「大丈夫。ニコは仕事してて。私ちょっと外に探してくる」
 そう言って廊下に出た。
 最近お気に入りの噴水のところに来てみた。
 ここにもない・・・・。か。そりゃそうだよな。持ち歩いてないもん。

 実は数日前から携帯がなくなった。
 こっちにきて携帯なんか意味がないものだけどなくなってしまうと途端に不安になってしまった。
 なぜか、電池が切れないからディスプレィは見ることができた。
 携帯の中にはたくさんの友達との写真。くだらない毎日がたくさんつまっている。
 そのときは当たり前だったけど、今じゃあ隣にいない友達。
 夜、さみしくなるといつも眺めていた。
 最近は、こっちの世界にもなれて見る回数が少なくなってきてた。
 奈美を思い出さなくなった罰が当たったのかな。
 奈美の怒った顔を思い出す。普段、冷徹だから怒ると般若みたいにこわいのよね。
 奈美、あいたいなぁ。もう、私のこと忘れたかな。
 向こうの世界のことを思い出すととたんに不安でたまらなくなる。
 自分は帰れるのだろうか。この先、どうなるのだろうか。
 何となく毎日が過ぎていってしまってるのに何もしていない私はどうすればいいのだろうか。
 空を見上げると青空が広がっている。見た目は、自分がいた世界と変らないのに・・・・・・。
 「ヒナタ?」
 後ろから急に抱きつかれた。
 どうして、この人は私が不安になると出てくるのだろう。
 「消えていなくなるかと思った。」
 そう彼は耳元でつぶやいた。
 彼の腕のぬくもりは心の芯から温まる、不思議な熱をもっているようだ。
 私の中の不安が嘘のように消えていく。
 トクトクトクトクトク・・・・・・。
 彼の心臓の音が心地よく、心が安らいでいく。
 ずっとこうしていたいな。
 そう思い始めた矢先、
 「ヒナタって意外と胸あるんだな。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 抱きしめられていた両腕をしっかりと握り自分の身を一瞬でかがめて・・・。

 ロンは綺麗に宙を舞いました。綺麗に技が決まって気分が良いよ。
 でも悔しいことに綺麗に着地してた。
 まったく、このスケベ男が。運動神経は抜群にいいらしい。
 「いったぁ。オレをこんなに投げ飛ばせるのってヒナタしかいないぞ。普通、加減するから」
 「痴漢相手に手加減はしません」
 ロンはひどいなぁとぼやきながらも笑っていた。
 あれ、もしかしてわざと投げられた?私を元気づけるため?
 「ロン、ありがと。大丈夫だよ?」
 一瞬、びっくりしたけど微妙な表情に。
 「こんな時は鋭いのに、なんで肝心のときは鈍いのかなぁ」
 そんなことをぶつぶつ言っている。
 失礼な。こっちに来てみんな私のこと鈍い鈍いって言うけどさ。
 向こうじゃ、いつでも気が利くほうだと言われてるのよ。
 ちゃんと一人暮らししてたし、
 むしろ学級委員とか、生徒会とかやって人のお世話してたぐらいだから。
 「でも、恋愛のほうは鈍いって言われなかった?」
 うう、痛いところを。そうだよ、女子高生だというのに彼氏の一人二人もいなかったわよ。
 友達がどんどん彼氏できてるのにできないって叫んでたら女子力は低いわ、鈍いわ、駆け引きできないわで
 できるはずがないって笑われてた。
 おっさんって言われてたもんなぁ。。。おっさんじゃあ彼氏できるの無理だよなぁ。
 いつの間にか私のすぐ目の前に立っていたロンは私の顔を覗き込んだ。
 「こんなにいつもいつも近くにいるのに何も感じない?」
 深い深い青い瞳に見つめられると動けなくなってしまう。
 まるで魔法にかかったみたいに動けない。
 動けない私の頬を優しく撫でるロン。
 「オレが触っても何とも思わない?」
 思わないわけないでしょ!めっちゃドキドキしてますよ!!
 優しく触られることがない私には免疫がないよ!
 頭のてっぺんがパッカリ割れて心臓が飛び出てもおかしくないくらいよ!
 ロンは意地悪な顔でなく、甘い顔してまだ私の頬を撫でる。
 指先がまた私の顎を上げた。怖くって目を瞑った私にクスリと笑って二度目のキスをした。

 


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...