4 / 16
3
しおりを挟む
高くそびえ立つ黒く重いドアに国紋章と国花が交わっている装飾が細かく刻み込まれていた。
この部屋の前に男が立ち、軽くノックをする。
「入れ」
部屋の主は必要最低限しか話をしない。表情も全く読めない。
男が部屋に入っても机に向かい筆を持つことはやめなかった。
「アレクサンドラス殿下。こちらが今回の被害状況です。かなり厳しい状況かと」
アレクサンドラスは資料を受け取り眉間にシワを寄せながら読んだ。
アレクサンドラス・ベイツ。
この国の国王の次男である。長男であるアントニーは柔らかい物腰、金髪、碧眼、甘いマスクと王道の王子であるため、自国のみならず他国からも絶大な人気である。本人もそのことを十分に理解した上で笑顔の下で人を手のひらの上で転がすような人物であった。
しかしこのアレクサンドラスは違った。
白髪に近い金髪に、ダークグリーンの瞳。見かけだけはアントニーと変わらず誰もが見とれてしまうほどの美しさがあった。
しかし笑顔というものは母親や乳母が幼い頃見た以外、誰も見たことがない。
無口で必要最低限しか話さない。身長も高く手足が長い上に適度な筋肉が彼の瞳と同じ色のマントの下に隠されており、
彼が二重であるも切れ長の瞳で見られるだけでも背筋が凍り大体のものは震え上がってしまう。
アレクサンドラスの仕事は主に軍の管理だった。
幼い頃から剣術だけでなく体術も誰よりも長けていた本人の強い希望であった。
そのため殆どが軍の本部で生活をしていたがこの度国王の弟である叔父が病で倒れ管轄の北の領土を無理無理引き継ぐことになった。引き継ぐといっても叔父が現在意識がない状態であるため、何も聞いていないに等しかった。
叔父の側近であるものはアレクサンドラスにとって「己の欲のことしか考えていない使えないものたち」と認定されてるためあてにならなかった。
それに付け加え北の領土は土地柄閉鎖的でありアレクサンドラスは国境付近の警備との交流はあっても領土を納めている伯爵家がどんな人物なのか名前程度しか知らず一から情報を取り今後どうしていくべきか手探りの状態であった。
北の領土バーバスは3つの領土に別れておりその1つの領土の資料が今手元に届いたのであった。この資料はもともとあった情報だけでなく独自のルートで集めた情報であった。
というのも、あまりにも遠く閉鎖的なことが多くこの土地に関してはなかなか王家の目が届いていないのが現状で、
先日一部を治める伯爵が亡くなったという知らせがあった程度でその後どうなったのか誰が後を引き継いだのか全くわかっていなかった。
他の伯爵家がやっていることをやらない、それが北の領土のやり方だった。
アレクサンドラスは資料を読み眉間のシワが一層深くし深いため息をついた。
その一部始終を見ていた青年はフッと微笑んだ。
「どうしますか?俺が行きますか?」
青年の名はオリバー。アレクサンドラスの第一側近である。身長はあまり高くないことと美少女と間違われるベビーフェイスであるがゆえに油断されるがアレクサンドラスの次と言えるほどの腕の持ち主である。実力からすると国王の第一護衛隊長、もしくはアントニー第一王子の第一護衛隊長のはずだが本人の強い希望でアレクサンドラスの側近として使えている。本人曰く、「あんな黒い人に付きたくない」といいそれを笑って許されたあたりこの青年の人徳とされるのか・・・・・。
「いや、一度自分の目で確かめて見たい」
「えー、あんなとこいくんですかぁ?あそこ、寒いだけで何もないですよ。今の時期は一番酷いし」
「それはただ人から聞いただけだろうが。それにこの時期に乗り越えられるほど蓄えもあるかどうかも怪しい状態になってる」
そう言って両目を閉じ、ため息を吐きながらオリバーに告げた。
「医師、植物学者、薬学者、地理学者それぞれ1名ずつ用意しオリバーと後2名お前隊から連れていくぞ。
出発は1週間後だ、いいな」
この部屋の前に男が立ち、軽くノックをする。
「入れ」
部屋の主は必要最低限しか話をしない。表情も全く読めない。
男が部屋に入っても机に向かい筆を持つことはやめなかった。
「アレクサンドラス殿下。こちらが今回の被害状況です。かなり厳しい状況かと」
アレクサンドラスは資料を受け取り眉間にシワを寄せながら読んだ。
アレクサンドラス・ベイツ。
この国の国王の次男である。長男であるアントニーは柔らかい物腰、金髪、碧眼、甘いマスクと王道の王子であるため、自国のみならず他国からも絶大な人気である。本人もそのことを十分に理解した上で笑顔の下で人を手のひらの上で転がすような人物であった。
しかしこのアレクサンドラスは違った。
白髪に近い金髪に、ダークグリーンの瞳。見かけだけはアントニーと変わらず誰もが見とれてしまうほどの美しさがあった。
しかし笑顔というものは母親や乳母が幼い頃見た以外、誰も見たことがない。
無口で必要最低限しか話さない。身長も高く手足が長い上に適度な筋肉が彼の瞳と同じ色のマントの下に隠されており、
彼が二重であるも切れ長の瞳で見られるだけでも背筋が凍り大体のものは震え上がってしまう。
アレクサンドラスの仕事は主に軍の管理だった。
幼い頃から剣術だけでなく体術も誰よりも長けていた本人の強い希望であった。
そのため殆どが軍の本部で生活をしていたがこの度国王の弟である叔父が病で倒れ管轄の北の領土を無理無理引き継ぐことになった。引き継ぐといっても叔父が現在意識がない状態であるため、何も聞いていないに等しかった。
叔父の側近であるものはアレクサンドラスにとって「己の欲のことしか考えていない使えないものたち」と認定されてるためあてにならなかった。
それに付け加え北の領土は土地柄閉鎖的でありアレクサンドラスは国境付近の警備との交流はあっても領土を納めている伯爵家がどんな人物なのか名前程度しか知らず一から情報を取り今後どうしていくべきか手探りの状態であった。
北の領土バーバスは3つの領土に別れておりその1つの領土の資料が今手元に届いたのであった。この資料はもともとあった情報だけでなく独自のルートで集めた情報であった。
というのも、あまりにも遠く閉鎖的なことが多くこの土地に関してはなかなか王家の目が届いていないのが現状で、
先日一部を治める伯爵が亡くなったという知らせがあった程度でその後どうなったのか誰が後を引き継いだのか全くわかっていなかった。
他の伯爵家がやっていることをやらない、それが北の領土のやり方だった。
アレクサンドラスは資料を読み眉間のシワが一層深くし深いため息をついた。
その一部始終を見ていた青年はフッと微笑んだ。
「どうしますか?俺が行きますか?」
青年の名はオリバー。アレクサンドラスの第一側近である。身長はあまり高くないことと美少女と間違われるベビーフェイスであるがゆえに油断されるがアレクサンドラスの次と言えるほどの腕の持ち主である。実力からすると国王の第一護衛隊長、もしくはアントニー第一王子の第一護衛隊長のはずだが本人の強い希望でアレクサンドラスの側近として使えている。本人曰く、「あんな黒い人に付きたくない」といいそれを笑って許されたあたりこの青年の人徳とされるのか・・・・・。
「いや、一度自分の目で確かめて見たい」
「えー、あんなとこいくんですかぁ?あそこ、寒いだけで何もないですよ。今の時期は一番酷いし」
「それはただ人から聞いただけだろうが。それにこの時期に乗り越えられるほど蓄えもあるかどうかも怪しい状態になってる」
そう言って両目を閉じ、ため息を吐きながらオリバーに告げた。
「医師、植物学者、薬学者、地理学者それぞれ1名ずつ用意しオリバーと後2名お前隊から連れていくぞ。
出発は1週間後だ、いいな」
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる