上 下
40 / 41

番外編 新婚初夜 02

しおりを挟む
「隠すなと言ったと思うんだが」

 至近距離に近付いてきたギルバートの手が伸びてきて、ナイトウェアを押さえるメルヴィナの手に触れた。

「く、暗くなってもなんとなく見えてるから……恥ずかしくて……」
「なら、今日はもうやめておくか?」
「それは……」

 やめて欲しくはない。大好きな人と結ばれてみたい。
 初めては痛いと聞くから怖いけれど、何日も前から覚悟を決めてきたのだ。
 特別な異性にしか見せない場所を互いに晒し合って、体を重ねれば――。

(もっと私、ギル様の特別になれる)

 そう思ったら、服を掴む手が緩んだ。
 その手はそのままギルバートに引き寄せられる。

 ギルバートは恭しくメルヴィナの手を取ると、指先に口付けた。
 まるで騎士の誓いみたいだ。

「恥ずかしいのはお前だけじゃないからな」
「……ギル様も恥ずかしいんですか?」
「……当たり前だ」

 ギルバートは返事をしながら、手の甲に唇を落としてくる。

「……続きをしても構わないか?」

 尋ねられて頷くと、ギルバートの体がゆっくりと覆いかぶさって来た。



   ◆ ◆ ◆



 こちらに触れるギルバートはとても優しくて、メルヴィナは自分が壊れ物になったかのような錯覚を覚えた。

 気が付いたらお互い全裸になっていて、直に肌の温もりを感じるのが気持ちいい。

 筋肉質なせいか、ギルバートの体温はこちらよりも高い。その熱をもっと感じたくて、メルヴィナは彼の背中に手を回した。

 すると、口付けされた。
 最初はついばむように。
 重なるだけの口付けは、少しずつ深くなっていく。

 互いに舌を絡め合う間にも、ギルバートの指先は、メルヴィナを確かめるように、少しずつ下に降りてくる。

「あっ……」
「敏感だな」
「それは、ギル様が変な場所ばかり触るから……」

 耳朶じだとか、首筋とか、胸の頂とか――。
 くすぐったさの中にむずむずするような変な感覚があって、触られるたびに小さな声が漏れ、体が跳ねてしまう。

「ん……」

 また口付けられた。
 優しく穏やかなキスに、身も心も蕩けそうになる。

 いつしか指先は下肢に到達していた。
 彼を受け入れる部分に触れられて、メルヴィナは身を震わせる。

「……濡れてる」
「ギル様のせいです……」

 責めるように訴えると、クスリと笑う気配がして、ゆるゆると性器の入口を確かめるようになぞられた。

「慣らしていくぞ」
 
 囁きと一緒に、つぷり、と指が侵入してくる。

「痛むか?」

 身を硬くしたからだろう。すぐに不安そうに訊かれた。

「大丈夫です。ちょっとびっくりしただけ……」

 痛くはない。でも異物感が凄い。

「……狭いな。自分で触れた事は?」
「なっ……」

 メルヴィナはかあっと頬を染めた。

「ないです……なんでそんな事聞くんですか……」
「女も自慰をするのか純粋に興味があって」
「っ……」

 興味本位で触れてみた事はある。でも、怖くて入口の場所を確かめるだけで終わってしまった。
 詳しく説明するのは絶対に嫌で、メルヴィナはギルバートを睨む。
 一方彼の方は楽しげだ。暗くてもなんとなくわかる。

(意地悪……)

 なのにメルヴィナに触れる手付きは優しい。

 いつもと同じだ。偉そうだったり馬鹿にしてきたり、そのくせ根本的には優しくて紳士的なのはいつもと同じで、そんな彼の落差に自分はどうしようもなく惹かれている。

「ひゃっ……」

 ゆるやかな抜き差しを繰り返され、ある一点を掠めた時、体が跳ねた。
 するとギルバートは、見つけたとばかりに執拗にそこに強く触れてくる。

「ここか。……凄いな、どんどん溢れてくる」
「かいせつ、しないでくださっ……」

 言葉が途切れたのは、指が唐突に増やされ圧迫感が増したせいだ。

「きついか?」
「いえ……」

 丁寧に触れられているからか痛みはない。何かが入っているという感覚が少し怖かった。

 気持ちいいところを強く押したり、引っ掻いたり、かと思えば胎内を広げたり――。

 わずかな快感らしきものはあるけれど、気持ちいいとはとても思えなかった。
 回数を重ねればまた変わって来るのだろうか。メルヴィナは不安を覚える。

「メル、そろそろ先に進んでも構わないか?」

 未知の感覚に必死に耐えていると、艶めいた声で囁かれた。

「はい……」

 怖い。けれど、この人とひとつに、本物の夫婦になりたい。
 そのためなら多少の痛みくらい我慢できる。たぶん。

 膣内なかから指が引き抜かれたと思うと、足を大きく広げられる。
 そして、別のもっと太くて熱いものが入口にあてがわれた。

(これが……)

 男性器だ、と悟ったら体がかあっと熱くなった。
 特別な場所、性器同士が触れ合っているのだと思うと、あまりのいやらしさにくらくらする。

 唇だけでなく、こちらでも。そんなふうに考えてしまう自分は何て淫らなんだろう。

 ギルバートは性器の先端をメルヴィナの入口に擦り付け、胎内から溢れる蜜を纏わせた。
 そして、強く入口に押し当ててくる。

「……っ」

 挿入はいってきた。
 ギルバートのものが。

 まだ先端を受け入れただけなのに、ぴりぴりと引き攣れるような痛みがある。

「大丈夫か?」
「はい。へいき、なので、続けてください……」

 答えると、更に奥へと侵入してくる。

(いっ……)

 痛い。だけど声を上げたらきっとこの優しい人は気遣ってやめてしまう。
 メルヴィナは必死に痛みをこらえ、口元を手で覆った。

 幸い引き攣れる痛みは、いちばん太い(と思われる)部分が通過したら収まった。代わりに隘路を無理矢理押し広げられる痛みに襲われる。

 指なんて比較にならないくらい太くて熱く、そして硬い。
 本当にこれは人の体の一部なのだろうか。
 疑問に思いながらも、メルヴィナは必死にギルバートのものを受け入れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷 ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。 ◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

国王陛下は悪役令嬢の子宮で溺れる

一ノ瀬 彩音
恋愛
「俺様」なイケメン国王陛下。彼は自分の婚約者である悪役令嬢・エリザベッタを愛していた。 そんな時、謎の男から『エリザベッタを妊娠させる薬』を受け取る。 それを使って彼女を孕ませる事に成功したのだが──まさかの展開!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

処理中です...