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幽霊令嬢の正体 03
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メルヴィナの体は、現在ニコラスの神術に守られて、アンブローズ侯爵家の首都屋敷で眠っているそうだ。
「……ニューゲートから首都に移したんですか? わざわざ……?」
メルヴィナは恐る恐る尋ねた。すると、ニコラスはあっさりと肯定する。
「ああ。首都の方が霊的に安定していて安全だからね。悪霊や悪魔に目を付けられたら悪用されかねないから、ご家族と相談して君のお祖父様の屋敷に移したんだ。ご両親も今はそちらに移られて、君の目覚めを待っていらっしゃるよ」
「そう、ですか……」
顔を知らない祖父の話をされても今一つ実感できなかったが、両親を心配させていると思うと胸が痛んだ。
「私、どうして首都にいたんでしょうか……?」
「うーん、体の移動に引き寄せられたか、この土地に思い入れがあったかのどちらかだと思うんだけど……。正直首都にいてくれて良かったよ。霊体は脆くて弱いからね。悪霊や悪魔の餌食になっている可能性も考えられるなと思ってたんだ」
ニコラスの発言にゾッとした。
かつてギルバートから、首都から出るなと言われたのを思い出す。
「さて、メルヴィナ嬢。今の君の体は医療と神術を併用してどうにか生命を持たせている状態だ。神の加護にも限界がある。一刻も早く体に戻った方がいい」
ニコラスはメルヴィナにそう告げると席を立ち、外に待機する従者に、アンブローズ侯爵邸に向かうよう言付けた。
「侯爵邸には私も同行してもいいでしょうか?」
席に戻ってきたニコラスは、ギルバートの申し出に眉をひそめた。
「……ギルが付いてきても、メルヴィナ嬢の体とは対面させて貰えないと思うよ。恐らくご家族が許さない。かなり衰弱しているんだ」
「それでもメルとはここまで深く関わってしまったので……どうせならなるべく近くで立ち会いたいです」
「ご家族からあらぬら疑いをかけられる可能性もあるけど、それも覚悟の上なのかな」
「それは……」
ギルバートはぐっと詰まった。そしてメルヴィナに視線を向ける。
「私は構わないがメルに迷惑を掛けてしまうな」
「へ? 私ですか?」
突然話を振られて、メルヴィナはきょとんと首を傾げた。
「私が同行して、メルの魂と頻繁に行動を共にしていたとお前の家族が知ったら、その、特別な関係なのではという疑いをかけられる可能性があるという事だ」
「あ……それはそう、かもしれませんね……」
「これでも私は一応結婚相手としては優良だからな。アンブローズ侯爵がメルと私の仲を誤解した場合、これ幸いと縁談を進めてしまうかもしれない。メル、今のお前にそこまで考える余裕はないんじゃないのか?」
「えっと……そうですね。生きていたのも驚きなら、自分にお祖父様がいるというのも初耳なので……ニコラス猊下から聞かせて頂いたお話を、正直自分でも消化できないでいます……」
「そうだろうな。だから私は遠慮させてもらう。……ここで一旦お別れだな」
ギルバートはそう告げると、どこか寂しげに微笑んだ。
「……ニューゲートから首都に移したんですか? わざわざ……?」
メルヴィナは恐る恐る尋ねた。すると、ニコラスはあっさりと肯定する。
「ああ。首都の方が霊的に安定していて安全だからね。悪霊や悪魔に目を付けられたら悪用されかねないから、ご家族と相談して君のお祖父様の屋敷に移したんだ。ご両親も今はそちらに移られて、君の目覚めを待っていらっしゃるよ」
「そう、ですか……」
顔を知らない祖父の話をされても今一つ実感できなかったが、両親を心配させていると思うと胸が痛んだ。
「私、どうして首都にいたんでしょうか……?」
「うーん、体の移動に引き寄せられたか、この土地に思い入れがあったかのどちらかだと思うんだけど……。正直首都にいてくれて良かったよ。霊体は脆くて弱いからね。悪霊や悪魔の餌食になっている可能性も考えられるなと思ってたんだ」
ニコラスの発言にゾッとした。
かつてギルバートから、首都から出るなと言われたのを思い出す。
「さて、メルヴィナ嬢。今の君の体は医療と神術を併用してどうにか生命を持たせている状態だ。神の加護にも限界がある。一刻も早く体に戻った方がいい」
ニコラスはメルヴィナにそう告げると席を立ち、外に待機する従者に、アンブローズ侯爵邸に向かうよう言付けた。
「侯爵邸には私も同行してもいいでしょうか?」
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「……ギルが付いてきても、メルヴィナ嬢の体とは対面させて貰えないと思うよ。恐らくご家族が許さない。かなり衰弱しているんだ」
「それでもメルとはここまで深く関わってしまったので……どうせならなるべく近くで立ち会いたいです」
「ご家族からあらぬら疑いをかけられる可能性もあるけど、それも覚悟の上なのかな」
「それは……」
ギルバートはぐっと詰まった。そしてメルヴィナに視線を向ける。
「私は構わないがメルに迷惑を掛けてしまうな」
「へ? 私ですか?」
突然話を振られて、メルヴィナはきょとんと首を傾げた。
「私が同行して、メルの魂と頻繁に行動を共にしていたとお前の家族が知ったら、その、特別な関係なのではという疑いをかけられる可能性があるという事だ」
「あ……それはそう、かもしれませんね……」
「これでも私は一応結婚相手としては優良だからな。アンブローズ侯爵がメルと私の仲を誤解した場合、これ幸いと縁談を進めてしまうかもしれない。メル、今のお前にそこまで考える余裕はないんじゃないのか?」
「えっと……そうですね。生きていたのも驚きなら、自分にお祖父様がいるというのも初耳なので……ニコラス猊下から聞かせて頂いたお話を、正直自分でも消化できないでいます……」
「そうだろうな。だから私は遠慮させてもらう。……ここで一旦お別れだな」
ギルバートはそう告げると、どこか寂しげに微笑んだ。
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