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幽霊令嬢と舞踏会 05

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 最終的にクラーセン男爵は、ギルバートの恫喝紛いの説得に折れ、ルーラントなる犯罪者をハイランドに引き渡した。

 男を連行して大使館を出たギルバートは、宮殿に戻ってからも慌ただしく動き回っていた。

 ミリアムの様子伺い、父王への報告、今後の対応の確認など、事件の後始末に奔走していたようだ。

 顛末が気になって、ギルバートの私室で待機していたメルは、ようやく戻ってきた彼に声を掛けようとして、頬を真っ赤に染めた。

「ご、ごめんなさい殿下、出ていきます!」
「待っていたんじゃないのか」

 目元を隠しながら回れ右すると、不審そうに声を掛けられた。

「だって、ナイトウェア姿と思わなくて!」
「ああ、そういえばこの格好で会うのは初めてだったか」

 これまでのギルバートは、メルを迎え入れる時、いつもきちんと服を着ていた。
 だからこんなに砕けた格好のギルバートを見るのは初めてだ。
 顔がいいから何でも似合う人物だが、ナイトウェア姿は妙な色気が漂っていて心臓に悪い。

「別に私は気にしないんだが……女性の前に出る格好ではなかったな」

 背後から衣擦れの音が聞こえた。ちらりと後ろを見ると、ギルバートはナイトウェアの上からガウンを羽織っていた。

「あの……色々と気になったから待っていたんですが、やっぱり明日出直します。ギル様もお疲れだと思いますし」

「一周回って眠気は吹き飛んだから構わない。午前のスケジュールを空けてもらったから明日……じゃなくてもう今日か。ある程度の睡眠は確保できる」

 時計を見ると、既に夜中の三時を回っていた。

(昼までお休みになれるのなら、なんとか充分な睡眠時間は取れそうだけど……)

 メルはちらりとカウチソファに腰掛けたギルバートを見つめた。
 疲労の色が濃いが、それすらもどこか退廃的に感じられるのだから心臓に悪い。

「ミリアムの事が気になったから待ってたんだろ? 何もかも内々で『処理』する」

「教えて下さるんですか?」

「お前は功労者だからな。ありがとう。メルのおかげでミミが穢されずに済んだ」

「私は当然の事をしただけです! 意識のない女性にあんな穢らわしい真似をするなんて……許せません!!」

 性犯罪者はもげればいいのだ。きっぱりと発言するメルに対してギルバートは首を横に振った。

「メルがミミに気付いてなければと思うとゾッとする。本当にありがとう。それとすまない。ミミの不在に気付いたのはルイスだという事にして、辻褄を合わせてしまった」

「構いませんよ。私は死者ですから」

 メルはギルバートに向かって微笑んだ。手柄なんて死者には不要なものだ。

「…………」

 ギルバートは複雑そうな表情をメルに向けてきた。
 メルは『気にしなくていい』という意味を込めてにっこりとギルバートに向かって微笑む。

 すると、彼は小さく息をつき、事の顛末をぽつりぽつりと語り始めた。
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