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仮病と誤解 03 ※男性自慰

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(綺麗な体……)

 少しずつあらわになるユベールの体にマリーは見とれた。
 細身に見えるのに、無駄な肉は一切ついておらず、しっかりと発達した筋肉が全身についている。

 前にも見たから胸やお腹の筋肉が綺麗なのは知っていたが、そこ以外の部位も綺麗だ。

 二の腕も、手首から肘のラインも、太腿もふくらはぎも。
 彼の体は武のラトウィッジの、戦う為の体だ。

 しかし、後は下着だけという段階になってユベールは逡巡した。

「……下着も取ってください」
「それは……」
「下着の上からでもわかる状態じゃないですか。だから隠しても一緒ですよ」

 マリーはユベールに近付くと、硬く勃ちあがった先端の部分を指さした。

「ここ、いやらしいです。なんで濡れてるんですか?」

 指摘すると、ユベールは俯いて唇を噛んだ。
 羞恥に耳まで赤く染まっている。

「ね、取っちゃいましょう。ユベール様が出来ないなら私が脱がせてあげましょうか?」
「……! 自分でする……自分でするから、先にマリーに触れたい」

 縋り付くような眼差しにマリーはふっと笑った。

「仕方ない人ですね。……いいですよ」
 許可を出すと、指先が胸元に伸びてきた。

「……かたい」

 当たり前だ。コルセットを着けているのだから。
 しかし、マリーが今日着ているのは、胸元が開いた形で、しかも前開きのデイドレスだった。

「……っ!」

 唐突にユベールの手がボタンに伸びたかと思うと、コルセットに覆われた胸元が露出した。自分一人でも着用できる前開きのソフトコルセットだった事も災いして――

 マリーの柔らかなそこがまろびでた。

「マリーのおっぱい……」

 胸の先端に指先が伸びてきて、マリーはひっと息を呑んだ。

「やっ……脱がすのは駄目って……」
「お腹は出してない」

 ユベールはそう言いながらふに、と胸を揉んだ。
 マリーはユベールを引き剥がそうと肩を押すがビクともしない。

「やわらかい」
(こいつ……!)
「この、いい加減に……」
「駄目か?」
「駄目に決まってます! 離してください」
「……わかった」

 しゅんとした表情で手を離したユベールに、不覚にもきゅんとした。

(何この生き物。本当にユベール様……?)

「なんでそんなに素直なんですか」
「マリーに触りたいけど、嫌がることはしたくない」

 そう言いながらもユベールの視線は、さりげなく隠したマリーの胸元に向いている。隠したとはいえ乱れたままなのは変わらないので、谷間がくっきりとユベールからは見えるような状態だった。

「触りたいんですか」
「触りたい」

 即座に返ってきた答えに笑いが込み上げてきた。求められるのは悪い気がしなかった。

「脱いで下さい。そしたら考えてあげます」

 マリーの囁きにユベールは目を見張り、恥ずかしげに目を逸らしながら下着に手をかけた。
 しかしそこでも尚逡巡するので、どこの乙女かと問い詰めてやりたくなる。

 のろのろとした手つきで下着がずらされるが、硬く勃ちあがったものが引っかかる。
 ユベールは諦めたように目をつぶると、手でそこを掴み出して下着をようやく取り払った。
 ユベールの先端は、溢れ出た先走りで濡れていた。

「はしたないですね、こんなに濡らして」
「仕方ないだろっ……マリーの胸とか、みたから……」

 こちらを見たかと思ったら、やはり視線は胸元にいく。なんともわかりやすい男である。

「触りたい」
「まだ駄目です。……そうですね。ねえユベール様、自分でして見せてください」
「は……?」
「しますよね? お一人で。時々発散しないと寝てる間におねしょのように出てしまうものなんでしょう? それとも、はしたなくおもらしするまで我慢してるんですか?」

 ユベールはぎょっと目を見開いた。

「なっ! 何でそんな男の生理現象を知ってるんだ!」
「侍女が教えてくれました。やっぱり本当の事だったんですね……是非見せてくださいユベール様。未来の妻として、これは知っておくべき事だと思います」
「未来の妻……」
「はい、夫婦の間に隠し事があってはいけませんから。見せてくださいますよね?」

 適当にもっともらしい理由をつけて言いくるめるのは子供の頃からのマリーの得意技である。
 じっと目を合わせて言葉を紡ぐと、ユベールは恥ずかしげに目を逸らした。
 そして、のろのろとそこに手を添わせると、わずかにためらった後、緩やかに上下させ始めた。

「気持ちいいですか?」
「いいたく、ない」
「気持ちいいんですよね?」

 少しずつ早くなっていく手の動きに連動し、息も荒くなっていく。その様子を見ると、快感を得ている事は明らかだ。

「マリー、言う通りにしてる。だから」

 さわらせて。
 ねだりながら自分を慰めるユベールは、いやらしいと同時に滑稽だった。
 普段の怜悧な貴公子の姿からは想像もつかないほど情けない姿だ。

 マリーが性癖を開花させたからだ。そう思うとぞくぞくした。昏い愉悦が湧き上がってくる。

「恥ずかしくないんですかユベール様、こんな風に私にお願いしたりなんかして」
「恥ずかしい、けど……それでマリーに触れるなら何でもする」

 荒い息遣いに蕩ける鮮やかな空色の瞳。
 哀れで情けなくて――なんて可愛らしいんだろう。

 マリーはユベールの頬に手を伸ばすと、頭を胸元に引き寄せた。
 着衣が乱れて、膨らみの半分ほどが露出している胸に。

 情けを与えてやってもいいと思った。あんまりにもユベールが必死だから。

 ユベールは至近距離にきた胸の谷間に息を呑むと、より激しくそこを扱く手を動かした。

「マリー、も、イキそ……」
「いいですよ、イッても。見せてください。またそこからいっぱい出すところ」

 はあはあと荒い息をつきながら、縋るように見つめてくるユベールにマリーは穏やかな笑みを向けた。

 男性は胸に触れたり口付けたりするのが好きなはずなのに、顔を埋めるだけで酷く興奮した様子を見せるユベールがとても可愛らしく見えた。

(ユベール様って、実は御しやすい……?)

 今のユベールとなら、未来を考えてもいいかもしれない。
 ちらりとそんな考えが過ぎった時――ユベールのそこから白いものが溢れ出て、寝台のシーツを汚した。

「マリー……」
 とろんとした眼差しがマリーを見上げてきた。

「マリー、言う通りにしたから……」
「そんなに私に触りたいんですか?」
「触りたい」

 即答が可笑しかった。

 可哀想なユベール様。可哀想で、それが可愛い。
 こちらは着衣なのに対し相手は全裸。それがより優越感を煽る。

「服を脱がせるのはダメです。触るだけならいいですよ」

 許可を出すと、ユベールの手がマリーに伸びてきて、次の瞬間には抱きすくめられていた。

 しっかりと鍛えられた大胸筋が至近距離に来て、マリーの心臓がドクリと鳴った。

「マリーは小さくていい匂いがする」

 いい匂いという事ならユベールもだ。白檀に似た匂いがまた微かに香る。

「マリー、マリー……」

 抱きすくめられたまま、優しく寝台に押し倒された。硬いものが下腹部に当たり、マリーは目を見張る。

「やだ、ユベール様、当たって……」
「煽ったマリーが悪いんだ」
「ちょっと……!」

 ぐりぐりと押し付けられ、マリーは抗議の声を上げた。

「触っていいって言った」
「押し付けていいとは言ってません! 服が汚れるじゃないですか!」
「マリーの服に俺の精液……」
「最低! この変態!」

 かっときたマリーはユベールの体に触れると魔力を流した。
 貴族女性にとっての最大の攻撃手段は、相手の体に直接触れ、魔力を流す事である。
 身内や配偶者以外、という但し書きはつくし、相手との魔力量に差があれば抵抗されてしまうが、平民や無警戒の相手に対してならかなりの攻撃力を発揮する。

「ぐっ……、っあああああっ!」

 ユベールは油断しきっていたのだろう、大きな悲鳴を上げた。
 手加減なしに魔力を流したのは流石にまずかったかもしれない。マリーは慌てて声をかけた。

「大丈夫ですか、ユベール様」
「あ、あ……」

 ユベールはマリーの上で体を痙攣させたかと思うと、かくんと気を失った。

(重っ)

 意識のない人間は重い。全体重がマリーにかかり、息が詰まりそうになった。

 マリーはどうにかこうにかユベールの下から抜け出すと、焦りながら様子を確かめた。

 心臓は動いているし息もしていたのでほっと安堵する。
 続いてマリーは、ユベールの局部が触れていたデイドレスのスカート部分を確認し、ぎょっとした。

 明らかに追加で出たと思われる精液らしき体液がべっとりと付着していた。

(嫌だ……ユベール様ったらまさか私の魔力で……?)

 一般的に他者の魔力が体内に流れる時に感じるのは違和感や苦痛である。
 その感覚で射精するなんて、やっぱりユベールは変態だ。マリーはぞっとして身を震わせた。
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