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二年前~現在 06 ※男性自慰
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それまでは感情が無いように見えたマリーだったが、その日を境にユベールへの嫌悪を隠さなくなった。
怒るとマリーの大きな琥珀の瞳はきらきらと輝く。
それは無表情よりよほど生き生きとしていて良かったが、ユベールは同時に苦しさも感じていた。
どうすれば笑いかけてもらえるのだろう。笑いかけて欲しい。しかし、それを素直に告げる事は、プライドが邪魔して出来なかった。
ユベールと婚約したことで、先延ばしにさせてしまっていた社交界デビューの夜会の時もそうだ。
「それなりに見れるじゃないか」
純白のデビュタントのドレスを身にまとったマリーは息を呑むほどに美しかったのに、ユベールはつい口走ってしまった言葉でマリーを怒らせた。
「どうせ私はそれなりですよ……」
地の底を這うような言葉に失敗を悟ったものの、可愛い、とか綺麗だ、とかいう言葉は、どうしてもユベールの中からは出てこなかった。
そして、この時の失敗をきっかけに、ユベールはルカリオから呼び出された。
呼び出されたのは、王都にあるコートニー子爵邸だった。
元は商家であるコートニー子爵は、領地を持たない宮廷貴族という奴であり、商会の本拠地がある王都で生活している。
新興貴族らしく、コートニー子爵邸は、近代的な建築技法で建てられたまだ真新しい建物だった。
応接室に通されたユベールを迎えたルカリオは、全身から怒気を発していた。
「どうして呼び出されたのかはわかっているよね? ユベール君」
一見するとふっくらとして、穏やかそうに見えるルカリオだが、アライン王国全体でも、一、二を争う規模の商会の経営者だけあって、一筋縄でいく人物ではない。
ユベールは、怒り狂うエレノアを前にしたときのような緊張感を感じた。
「デビュタントのマリーにケチを付けたんだって? そんなに気に入らないのなら、是非ともこの婚約のお話は白紙に戻してもらいたいんだけどな」
「ケチをつけたつもりは……あれはうまく伝えられなくて……それに、婚約の解消は出来ません。母がマリー嬢をひどく気に入っていますから」
はああ、とルカリオは深くため息をついた。
「エレノア様ね。あの人は実に厄介だ。マリーも厄介なのに目を付けられたものだよ。あの方に睨まれるとうちも商売がやりにくくなるからね……」
エレノアはこのアライン王国に三つしかない侯爵家の出身であり、王族の血も引いている。
王家と二つの侯爵家に繋がりを持つという厄介さをもつ人物なのである。
「マリーには可哀想だけど、商会を潰す訳には行かないからね。君との関係が仮面夫婦になろうが、エレノア様が望んでいる以上、マリーは君と結婚させるしかないんだけど、それと私の感情はまた別なんだよ」
わかるよね? とルカリオはユベールに圧をかけてきた。
「その、本人が目の前にいると、どうしても上手く言葉が伝えられないんです。それだけで……決してマリー嬢に不満がある訳じゃなくて……」
「……もしかして、君、マリーのことが結構好きだったりするの?」
直接的に尋ねられ、ユベールはぐっと言葉に詰まった。
その様子に何かを察したのか、ルカリオは深いため息をついた。
「君は思春期に入りたての子供か何かなのかね?」
まったくもってルカリオの言う通りである。ユベールは反論できなかった。
ユベールを見つめるルカリオの視線は当然厳しく、いたたまれない気持ちになる。
「……今日は君の気持ちがわかっただけでよしとする事にするよ。でも、わかるよね? あんまりにもマリーをいじめるようならこちらにも考えがあるよ?」
「はい……」
ひたすら小さくなり続ける事で、ユベールはルカリオによる説教部屋を切り抜けたのだった。
◆ ◆ ◆
社交界デビューを終えたユベールとマリーは、一年後に結婚を控え、未来のラトウィッジ侯爵夫妻としての顔見せの為、シャールとエレノアに連れ回される事になった。
マリーを妬んで陰口を叩く者はいたが、エレノアという強い後ろ盾があるからか、面と向かって喧嘩を売りに来るような者は幸い居なかった。
もっともこの頃になるとユベールもマリーがしたたかな事に気付いていたので、あまり心配もしなかった。
それくらい強い女でなければ、武のラトウィッジ侯爵家の妻は務まらない。
ユベールにとって、マリーの気の強さは好ましかった。
しかし、マリーと共に夜会に出掛けるのは苦痛だった。
コートニー子爵家の潤沢な資産を背景に、マリーは年々磨きこまれていく。
身に纏うドレスもアクセサリーも上位貴族に遜色ないレベルの高級品だ。侍女の腕が無駄にいいせいで、髪型も化粧も、マリーの魅力を最大限に引き出すものが施されている。
その彼女を他の男の目に晒したくない。
特に今の夜会用のドレスの流行は、デコルテが大きく開いたもので、目のやり場に困るのだ。
細く見えるマリーだが、意外に胸が豊かで、エスコート中谷間がちらちら見えるのもユベールを苦しめていた。
……またやってしまった。
ドレスの胸元をどうにかして欲しくて、結果的にケチを付けるような事を言ってしまい、マリーを怒らせてしまった。
時折向けられるルカリオの責め立てるような視線が痛かった。
◆ ◆ ◆
マリーとの婚前交渉の話が持ち上がったのは、そんな日々を過ごしていた時の事だった。
その日、シャールの執務室に呼び出されたユベールに告げられたのは、魔の森に強い《マナ》の乱れが観測されたという情報だった。
「現在は継続して監視中だが……このまま《マナ》の流れが乱れ続けるようなら、秋の討伐は少し厳しいものになるかもしれない。討伐時期の前倒しも含めて現在協議中だから心しておけ」
エレノアが絡まない時のシャールは、同じ人間かと思うくらい目が冷たい。我が父ながら二重人格を疑う域だな、と思いながら、ユベールは「はい」と短く答えた。
「時にお前、マリー嬢とはどうなってるんだ」
「……別に。いつも通り、何も変わりませんよ」
「それは大してうまくいってなくて、結婚後は仮面化する恐れがあるということだな」
事実を言い当てられ、腹が立ったが反論はぐっと抑え込んだ。シャールには口では勝てないからである。
この頃には、ユベールは家族からマリーへの気持ちがバレていて、素直になれない残念な子扱いを受けていた。
エレノアからはマリーを怒らせてしまう度に、生ゴミを見る様な目で見られるので、どちらが本当の子供なのかと時々疑問に思ってしまう。
「何とか関係改善して貰わないと困る。あの娘はあのクソ女にそっくりだ」
シャールが言うクソ女とは、マリーの母、ベアトリスである。
マリーの前ではまだ上手く隠しているが、シャールはエレノアがマリーを可愛がるのが面白くないのだ。
「実は魔の森に不穏な気配が漂っている。マリー嬢になんとか頭を下げて婚姻契約を結んでもらってこい」
「なっ、婚姻契約ですか!?」
ユベールはマリーとの婚姻契約に伴うあれこれを想像して、顔を真っ赤に染めた。
「ルカリオ殿には話は通しておいてやる。一発やって体から落として来い」
シャールからの若干下品な命令に、ユベールは耳まで真っ赤になりつつも、心の中に、昏い想いが湧き上がるのを感じた。
心が手に入らないなら身体だけでも――
そんな事を考えたから、きっと天罰が当たったのだ。
◆ ◆ ◆
嫌われているのは知っていた。
だけど、まさかマリーがあんな刺激的な暴挙に出るとは思ってもみなかった。
「虐められた猫は獅子のように勇敢になりますのよ」
そう言ってユベールに薬を盛った彼女の眼差しは、確かに獅子のように獰猛だった。
――そう言えば、マリーは八月生まれ。占星術的には獅子宮の生まれだった。
だけど彼女は本質的に理解していない。ユベールに屈辱を与えて婚約の解消に持っていきたかったようだが、あの行為は自分にはご褒美でもあった事に。
悔しかった。恥ずかしかった。
特にマリーから治癒の魔力を流された時は、暴発しそうになるのを抑えるのが大変だった。
しかし、屈辱と同時に歓びも感じた。
どのような形であれ、好きな女にそこに触れられて、嬉しくない男はいないと思う。
マリーの細く小さな指先がユベールのそこに触れたかと思うと、それだけで身体が昂る。
「くそっ」
ユベールは小さく悪態をつくと、衣服の下腹部をくつろげ、そこを露出させた。
婚約破棄はしない。そう宣言し、妙な事を口走ってしまって三日が経過した。マリーに再び取り付けた約束の日は明日だと言うのに、自室で一人になるとマリーの顔が脳裏に散らついて、頭がおかしくなる。
自身の性器は硬く勃ちあがり、先端からはだらだらと先走りを溢れされていた。
マリーの手の導きを思い出しながらユベールはそこに触れる。
そして服の上から胸に触れた。
ここにもマリーが触れた。子猫がミルクを飲む時のように舌を出してペロペロと舐めてきた。
触ってみてもちっとも気持ちよくなんてない。どうせ触るならマリーの胸の方が百倍楽しいに違いない。
彼女のドレスに隠された豊かな胸は一体どうなっているんだろう。触れたい。口付けたい。妄想するだけで興奮は高まった。
陰嚢にも触られた。最初は加減を知らない触り方で恐怖を覚えたが、懇願すると優しく揉み込むように触れてくれた。
こんな、汚い男の欲に。
「はあっ……マリー……マリー……」
マリーとしたい。
プレゼントのラッピングを剥がすように一枚ずつドレスを脱がせて、裸に剥いて、いつも綺麗にまとめ上げられた髪を解いて、寝台に押し倒してこの欲望を一番奥まで捩じ込みたい。
肌と肌を触れ合わせて、挿入しながら口付けて、上も下も一番深い部分で繋がったまま果てれたら、どんなに気持ちいいだろう。
マリーの中に押し入る事を妄想し、ユベールはそこを擦り立てた。何度も何度も。手を上下させる動きは少しずつ早くなっていく。
摩擦で痛くないのか聞かれた。
その時の速度を思い出しながら、ユベールは一心不乱にそこの快感を追う。
やりたい。おかしたい。マリーの中に。
胎内にぶちまけて孕ませるのだ。白濁を何度も何度も注ぎ込んで擦り込んで、あの薄い腹を膨らませてやる。
「あっ……、く、出るっ、……っ!」
ユベールは寝台の傍に置いていたちり紙を手に取ると、そこの先端に当てた。
その瞬間びゅくびゅくと白濁が溢れ出て、部屋中に青臭い匂いが充満した。
精を吐き出すと途端に頭が冷え、虚しさに襲われる。
(マリー……)
明日こそは、マリーと。
ユベールは俯くと熱い吐息を漏らした。
怒るとマリーの大きな琥珀の瞳はきらきらと輝く。
それは無表情よりよほど生き生きとしていて良かったが、ユベールは同時に苦しさも感じていた。
どうすれば笑いかけてもらえるのだろう。笑いかけて欲しい。しかし、それを素直に告げる事は、プライドが邪魔して出来なかった。
ユベールと婚約したことで、先延ばしにさせてしまっていた社交界デビューの夜会の時もそうだ。
「それなりに見れるじゃないか」
純白のデビュタントのドレスを身にまとったマリーは息を呑むほどに美しかったのに、ユベールはつい口走ってしまった言葉でマリーを怒らせた。
「どうせ私はそれなりですよ……」
地の底を這うような言葉に失敗を悟ったものの、可愛い、とか綺麗だ、とかいう言葉は、どうしてもユベールの中からは出てこなかった。
そして、この時の失敗をきっかけに、ユベールはルカリオから呼び出された。
呼び出されたのは、王都にあるコートニー子爵邸だった。
元は商家であるコートニー子爵は、領地を持たない宮廷貴族という奴であり、商会の本拠地がある王都で生活している。
新興貴族らしく、コートニー子爵邸は、近代的な建築技法で建てられたまだ真新しい建物だった。
応接室に通されたユベールを迎えたルカリオは、全身から怒気を発していた。
「どうして呼び出されたのかはわかっているよね? ユベール君」
一見するとふっくらとして、穏やかそうに見えるルカリオだが、アライン王国全体でも、一、二を争う規模の商会の経営者だけあって、一筋縄でいく人物ではない。
ユベールは、怒り狂うエレノアを前にしたときのような緊張感を感じた。
「デビュタントのマリーにケチを付けたんだって? そんなに気に入らないのなら、是非ともこの婚約のお話は白紙に戻してもらいたいんだけどな」
「ケチをつけたつもりは……あれはうまく伝えられなくて……それに、婚約の解消は出来ません。母がマリー嬢をひどく気に入っていますから」
はああ、とルカリオは深くため息をついた。
「エレノア様ね。あの人は実に厄介だ。マリーも厄介なのに目を付けられたものだよ。あの方に睨まれるとうちも商売がやりにくくなるからね……」
エレノアはこのアライン王国に三つしかない侯爵家の出身であり、王族の血も引いている。
王家と二つの侯爵家に繋がりを持つという厄介さをもつ人物なのである。
「マリーには可哀想だけど、商会を潰す訳には行かないからね。君との関係が仮面夫婦になろうが、エレノア様が望んでいる以上、マリーは君と結婚させるしかないんだけど、それと私の感情はまた別なんだよ」
わかるよね? とルカリオはユベールに圧をかけてきた。
「その、本人が目の前にいると、どうしても上手く言葉が伝えられないんです。それだけで……決してマリー嬢に不満がある訳じゃなくて……」
「……もしかして、君、マリーのことが結構好きだったりするの?」
直接的に尋ねられ、ユベールはぐっと言葉に詰まった。
その様子に何かを察したのか、ルカリオは深いため息をついた。
「君は思春期に入りたての子供か何かなのかね?」
まったくもってルカリオの言う通りである。ユベールは反論できなかった。
ユベールを見つめるルカリオの視線は当然厳しく、いたたまれない気持ちになる。
「……今日は君の気持ちがわかっただけでよしとする事にするよ。でも、わかるよね? あんまりにもマリーをいじめるようならこちらにも考えがあるよ?」
「はい……」
ひたすら小さくなり続ける事で、ユベールはルカリオによる説教部屋を切り抜けたのだった。
◆ ◆ ◆
社交界デビューを終えたユベールとマリーは、一年後に結婚を控え、未来のラトウィッジ侯爵夫妻としての顔見せの為、シャールとエレノアに連れ回される事になった。
マリーを妬んで陰口を叩く者はいたが、エレノアという強い後ろ盾があるからか、面と向かって喧嘩を売りに来るような者は幸い居なかった。
もっともこの頃になるとユベールもマリーがしたたかな事に気付いていたので、あまり心配もしなかった。
それくらい強い女でなければ、武のラトウィッジ侯爵家の妻は務まらない。
ユベールにとって、マリーの気の強さは好ましかった。
しかし、マリーと共に夜会に出掛けるのは苦痛だった。
コートニー子爵家の潤沢な資産を背景に、マリーは年々磨きこまれていく。
身に纏うドレスもアクセサリーも上位貴族に遜色ないレベルの高級品だ。侍女の腕が無駄にいいせいで、髪型も化粧も、マリーの魅力を最大限に引き出すものが施されている。
その彼女を他の男の目に晒したくない。
特に今の夜会用のドレスの流行は、デコルテが大きく開いたもので、目のやり場に困るのだ。
細く見えるマリーだが、意外に胸が豊かで、エスコート中谷間がちらちら見えるのもユベールを苦しめていた。
……またやってしまった。
ドレスの胸元をどうにかして欲しくて、結果的にケチを付けるような事を言ってしまい、マリーを怒らせてしまった。
時折向けられるルカリオの責め立てるような視線が痛かった。
◆ ◆ ◆
マリーとの婚前交渉の話が持ち上がったのは、そんな日々を過ごしていた時の事だった。
その日、シャールの執務室に呼び出されたユベールに告げられたのは、魔の森に強い《マナ》の乱れが観測されたという情報だった。
「現在は継続して監視中だが……このまま《マナ》の流れが乱れ続けるようなら、秋の討伐は少し厳しいものになるかもしれない。討伐時期の前倒しも含めて現在協議中だから心しておけ」
エレノアが絡まない時のシャールは、同じ人間かと思うくらい目が冷たい。我が父ながら二重人格を疑う域だな、と思いながら、ユベールは「はい」と短く答えた。
「時にお前、マリー嬢とはどうなってるんだ」
「……別に。いつも通り、何も変わりませんよ」
「それは大してうまくいってなくて、結婚後は仮面化する恐れがあるということだな」
事実を言い当てられ、腹が立ったが反論はぐっと抑え込んだ。シャールには口では勝てないからである。
この頃には、ユベールは家族からマリーへの気持ちがバレていて、素直になれない残念な子扱いを受けていた。
エレノアからはマリーを怒らせてしまう度に、生ゴミを見る様な目で見られるので、どちらが本当の子供なのかと時々疑問に思ってしまう。
「何とか関係改善して貰わないと困る。あの娘はあのクソ女にそっくりだ」
シャールが言うクソ女とは、マリーの母、ベアトリスである。
マリーの前ではまだ上手く隠しているが、シャールはエレノアがマリーを可愛がるのが面白くないのだ。
「実は魔の森に不穏な気配が漂っている。マリー嬢になんとか頭を下げて婚姻契約を結んでもらってこい」
「なっ、婚姻契約ですか!?」
ユベールはマリーとの婚姻契約に伴うあれこれを想像して、顔を真っ赤に染めた。
「ルカリオ殿には話は通しておいてやる。一発やって体から落として来い」
シャールからの若干下品な命令に、ユベールは耳まで真っ赤になりつつも、心の中に、昏い想いが湧き上がるのを感じた。
心が手に入らないなら身体だけでも――
そんな事を考えたから、きっと天罰が当たったのだ。
◆ ◆ ◆
嫌われているのは知っていた。
だけど、まさかマリーがあんな刺激的な暴挙に出るとは思ってもみなかった。
「虐められた猫は獅子のように勇敢になりますのよ」
そう言ってユベールに薬を盛った彼女の眼差しは、確かに獅子のように獰猛だった。
――そう言えば、マリーは八月生まれ。占星術的には獅子宮の生まれだった。
だけど彼女は本質的に理解していない。ユベールに屈辱を与えて婚約の解消に持っていきたかったようだが、あの行為は自分にはご褒美でもあった事に。
悔しかった。恥ずかしかった。
特にマリーから治癒の魔力を流された時は、暴発しそうになるのを抑えるのが大変だった。
しかし、屈辱と同時に歓びも感じた。
どのような形であれ、好きな女にそこに触れられて、嬉しくない男はいないと思う。
マリーの細く小さな指先がユベールのそこに触れたかと思うと、それだけで身体が昂る。
「くそっ」
ユベールは小さく悪態をつくと、衣服の下腹部をくつろげ、そこを露出させた。
婚約破棄はしない。そう宣言し、妙な事を口走ってしまって三日が経過した。マリーに再び取り付けた約束の日は明日だと言うのに、自室で一人になるとマリーの顔が脳裏に散らついて、頭がおかしくなる。
自身の性器は硬く勃ちあがり、先端からはだらだらと先走りを溢れされていた。
マリーの手の導きを思い出しながらユベールはそこに触れる。
そして服の上から胸に触れた。
ここにもマリーが触れた。子猫がミルクを飲む時のように舌を出してペロペロと舐めてきた。
触ってみてもちっとも気持ちよくなんてない。どうせ触るならマリーの胸の方が百倍楽しいに違いない。
彼女のドレスに隠された豊かな胸は一体どうなっているんだろう。触れたい。口付けたい。妄想するだけで興奮は高まった。
陰嚢にも触られた。最初は加減を知らない触り方で恐怖を覚えたが、懇願すると優しく揉み込むように触れてくれた。
こんな、汚い男の欲に。
「はあっ……マリー……マリー……」
マリーとしたい。
プレゼントのラッピングを剥がすように一枚ずつドレスを脱がせて、裸に剥いて、いつも綺麗にまとめ上げられた髪を解いて、寝台に押し倒してこの欲望を一番奥まで捩じ込みたい。
肌と肌を触れ合わせて、挿入しながら口付けて、上も下も一番深い部分で繋がったまま果てれたら、どんなに気持ちいいだろう。
マリーの中に押し入る事を妄想し、ユベールはそこを擦り立てた。何度も何度も。手を上下させる動きは少しずつ早くなっていく。
摩擦で痛くないのか聞かれた。
その時の速度を思い出しながら、ユベールは一心不乱にそこの快感を追う。
やりたい。おかしたい。マリーの中に。
胎内にぶちまけて孕ませるのだ。白濁を何度も何度も注ぎ込んで擦り込んで、あの薄い腹を膨らませてやる。
「あっ……、く、出るっ、……っ!」
ユベールは寝台の傍に置いていたちり紙を手に取ると、そこの先端に当てた。
その瞬間びゅくびゅくと白濁が溢れ出て、部屋中に青臭い匂いが充満した。
精を吐き出すと途端に頭が冷え、虚しさに襲われる。
(マリー……)
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