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妖精解放後

牢獄島の誕生

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 ミレーはロレーヌから連絡を受けると直ぐに港に向かい、ロレーヌ達が乗った船を魔法で誘導していた。ミレーから話を聞いたクインとクインから知らせを受けたドロン国の代表マッキン・オウコも港でロレーヌ達の乗った船を待つ。
 ミレーは歓喜と安堵の表情を浮かべて海を見つめていた。
「来たわ、ロレーヌよ。」

 港に2隻の船が静かに入ってきた。エレナに抱えられたロレーヌが降りてくると、ミレーが駆け寄ってロレーヌを抱きしめた。
「ロレーヌ、無事で良かった。本当に良かった。」

 泣きながらロレーヌを抱きしめているミレー。皆も2人の様子を見て喜んでいた。ロレーヌも最初は照れ臭そうに笑っていたが、興奮しているミレーを宥めるようにミレーの背中をポンポンと軽く叩く。
「お母様、苦しいです。私は疲れています、離してください。」
「え、ええ。ごめんね、ロレーヌ。嬉しくて、少し力がこもってしまったの。」

 クイン達はトーク達に向かい合うと丁寧に礼をした。
「娘のロレーヌを助けて下さって、本当にありがとうございました。」
「話はロレーヌから聞いています。ご両親とキエトさんのお悔やみを申し上げます。ロレーヌを助けて頂いてありがとうございました。」
「妖精が無事で、本当に良かったです。一時は【妖精国】に攻め滅ぼされるかと思っていましたが。
 皆様のおかげで【シャイ】も助かりました。ありがとうございました。そして、ご両親とキエトさんの件、心からお悔やみ申し上げます。」
「ご丁寧にありがとうございます。船を無事にドロン国へ到着させて頂き、ありがとうございました。」

 互いの挨拶が終わると、マッキンが宿に案内してくれる事になった。
「クイン様達は国に帰られますか。」
「いや、その前にやる事がある。妖精を代表してトーク様達にお礼をしたい。トーク様、我々妖精が出来る限りのことをしますのでご要望をおっしゃってください。」

 クインの言葉を聞いて皆で相談をする。皆の意見が纏まりトークが代表してクイン達に話しだす。
「両親とキエトのお墓が島にあるのですが、私達の移住先が決まったらそちらの墓地に移動する事は出来ますか。」

 クインはトーク達の願いを聞いて優しく微笑むと了承して頷いた。
「彼らだけではなく、ご先祖全員を墓地に移動する事が出来ますよ。
 他にも何かありませんか、新しく生活を始めるんですから色々と必要でしょう。」
 クインの言葉を聞いて、慌てた様子でマッキンが話に割り込んだ。
「それは我々の方で揃える事が出来ます。我々もお礼をしなければなりませんから、残しておいてください。」
 クインは苦笑するとトーク達を見つめる。だが皆特に思いつかないようで困った表情で顔を見合わせていた。

 トーク達の様子を見ていたロレーヌが名案を思い付いたと嬉しそうに笑う。
「あの国の国民を島に閉じ込めて生涯昔の島と同じ環境で暮らさせる、その願いもかなえられるよ。彼らにとってはそれが一番辛い事になるんでしょう。
 私達としても何も遣り返さないというのはないからね。あの者達は罪人として、生涯をかけて償わせたらいいのよ。」

 トーク達はロレーヌの案に喜んで頷いた。
「それは良い案ですね。皆もそれでいいかな。
 では、彼らを生涯あの島から出さないでください。他には何も望みません。」

 トークの言葉を聞いてクイン達も満足そうに頷いている。
「これは凄く良い案だと思うよ。
 我々妖精が報復出来てあなたたちの願いも叶う、【シャイ】の国としても今回の件はそれで片が付く。全てが丸く収まるな。
 罪人達を閉じ込める島なんだから、あの島は牢獄島と呼ぶのはどうかな。どうせハーク国は無くさないといけないんだしね。」

 クインの言葉に皆が賛成して拍手をする。マッキンが最後に話しを纏めるとクイン達に確認をとる。
「では【シャイ】の民が妖精に無理やり魔法を使わせていた件については、ハーク国の滅亡。トーク様達以外の国民と国王デューンは、罪人とし刑罰は生涯牢獄島への幽閉。という事でよろしいですね」
「ああ、島の環境はロレーヌの魔法がなくなり以前と同じ環境になった。
 島の周囲には魔物がいるから船で脱出も出来ない。魔物は牢獄の監守だな。魔物が眠る時でも海が荒れるように少し地形を弄ってある。」

 マッキンは【シャイ】に責任が及ばなかった事にほっとしたのか、安堵のため息をついた。話が終わると妖精達は別れの挨拶をして国に帰っていった。

 妖精達が帰るとマッキンは皆を連れて宿へと向かう。
「今から行く宿の主人オウルは元々私の部下で、とても優秀で信頼のおける人物なんです。結婚して退職し、宿の主人になったんですよ。」

 上品で高級な雰囲気の宿に着くと1人の男性が立っていた。マッキンを見て頷くと宿の扉をそっと開けて、中に皆を通した。全員が中に入ると男性最後に入り扉を閉める。
「彼がこの宿の主人オウルです。貸切にしているので、今日はゆっくりと休んで下さい。ご要望等はオウルに伝えてくだされば、私に伝わるようにしておきますので。
 皆様は【シャイ】を救ってくれた英雄です。皆様のおかげで、ロレーヌ様が助かり【シャイ】も妖精達に攻め滅ぼされることもなかった。
 これから色々な式典にパレードがありますよ。報奨金等は各国の代表との協議で決定されると思いますが、当面の生活費等はドロン国から出させて頂きます。」

 マッキンの言葉を聞いて、トークの表情が曇り顔色が青ざめていた。トークの後ろで他の皆も同様に青ざめていた。
「あの、私は式典やパレード等には参加するつもりはありません。というより我々が妖精と一緒に逃げてきた事も出来れば秘密にして頂きたいんです。
 妖精が隷属できる事が広まったら、多くの者達が隷属妖精を手に入れようとするでしょう。ですが人間に妖精が捕まえられるわけがない。
 国や大きな組織が本気になったら、ハーク国の事や我々の事も知られてしまうと思います。そうなると隷属妖精を逃がした私達が危険にさらされます。
 万が一のも危険な相手に捕まったら、繰り返し拷問されて最後は殺されるでしょう。
 報奨金も名誉も何もいりません、自分達の身を守る為にも、どうか、私達の事は今知っている方達以外には知らせないで頂きたい。」

 トーク達の必死な訴えを、マッキンも真剣な表情で聞いていた。
「分かりました。私が何とかします、トーク様達のご希望に沿える様に。
 トーク様達が安心して暮らせるような場所に心当たりがあります。詳細が決まったらオウルに伝えましょう。そういう事なら私達はもう会わない方が良いでしょうから、今後のやり取りはオウルを通して行いましょう。私に何か伝えたい事がある時にはオウルに伝えてください。
 私達はもう直接お会いしない方が良いでしょう。最後に皆様にもう一度お礼を言わせてください。
 あの妖精にもしものことがあったら、妖精達は本当に我々を滅ぼしていたかもしれません。【シャイ】を救って頂いてありがとうございました。」

 マッキンが帰るとオウルがすぐに部屋へ案内してくれた。皆疲れ切っていたのだろう。部屋へ入るとベッドに倒れ込むようにして眠りについた。
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