独自ダンジョン攻略

sasina

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未定

118.二重遭難ではない

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「ずっと透視を使うって訳にはいかないんだよね」

「それはそうだ。何の制限もなく無制限に使えていたなら、春の言っていたエロスキルの使い道にも言われる前に気づいていただろうな」

 無制限に使えるなら俺も鑑定と同じ様に常時発動していたと思うからな。多分服の透視についても直ぐに気付けていた筈だ。

 まあ、その場合も最初に透視で見る人の体はきっと家族の誰かになっていただろうから、どの道気不味い気持ちにはなっていただろうな。

「やっぱりそう上手くはいかないよね。魔法で言うMPが必要なんだよね?」

「ああ。それと俺はMPじゃなくEPと呼んでいるけどな」

「EP?」

「エネルギーポイントでEPだな」

「どうして?ってああ、魔法が使えないからか」

 春は俺が魔法が使えないからEPと呼んでいると考えた様だ。

 まあ、実際は振動魔法という魔法が使えるから違う。

 もし俺が鑑定も魔法も使えない状態だったなら、それでもやはりMPとは呼ばすEPと呼んでいたかもな。

「さて、ずっとここで話していても時間が過ぎていくだけだ。慶達を探しに次に行くぞ」

「え~宝箱開けていかないの?」

 俺の位置からは見えないが、隠し部屋の中には宝箱が置いてあるのか。
 俺の空間把握でも見えないという事は、宝箱は部屋の中央ではなく奥にある様だな。

 俺が管理しているスライムダンジョンでは、確か宝箱は部屋の中央にあった筈だがな?

 奥にあるという事は少し罠くさいな。

 透視&鑑定

【名前:トラップボックス
 条件:開
 効果:落とし穴  】

 やはり罠か。

 しかも、透視で見る限り引っかかったら下階層に落とされるかなり危険なトラップの様だ。

 まだ、落とし穴の下に槍やら剣やらが剣山の様に仕掛けてある方がマシな罠だ。

 下の階層に落ちるタイプの罠は、基本的に罠を這い上がってくる事は不可能だろう。

【ダンジョンの床(落とし穴)】

 案の定落とし穴はダンジョンの床か。

 落とされてから閉ざされてしまえば、這い上がるのは不可能。
 ダンジョンの加護で守られている壁や床をぶち抜いて移動するのは無理だ。

 そして下の階層に落ちてしまえば道も分からず迷う事は確実。
 運良く登りの階段を見つけられれば良いが、そんな幸運は稀だ。

 地道に地図を作っていき、虱潰しに階段を探していくのが正しい判断だろうな。

 まあ、俺はこんな簡単なトラップには掛かるつもりは無い。

「あの宝箱はトラップだな」

「え!?」

「宝箱を空けようとすると、連動して地面の扉も開いてしまい下の階層に落ちる事になる」

「え~、箱の中身は何も無い罠って事?」

 春は残念そうに肩を落とすが、誰も中身が空だとは言っていない。

「いや、中身は入っている」

「じゃあ、取りに行こうよ! 下に落ちても階段から上がってくればいいじゃん!」

 今、俺達が何をしているのか思い出してほしかった。

「慶達を捜すのが先だ」

「そうだった」

 慶達を探しにダンジョンに入ってきたのに、まだ見つけていないんだ。

「でも、慶さん達がこの落とし穴に落ちたって可能性もあるよね」

「無い。いや、多分無いか。まあ、どの道可能性は低いだろうな」

「どう、って私が壁を壊したからか」

 理解が早くて助かる。

 春は馬鹿ではなく察しが悪い訳でもない。
 少し抜けていて心配させられる性格をしているだけだ。

 春も直ぐにこの隠し部屋を最初に見つけたのは自分だと思い出した。

「もしかしたらトラップが発動した後は塞がるのかもしれないが、俺のダンジョンでは一度壊した壁が元通りに塞がった事は無かった。だから可能性は低いだろう。見つからなかったら勿論最終的には春の言う通り2階層にも探しに行くが、先ずは1階層を回ってからだ」

 まあ、その前に一度ダンジョンを出る事になるだろうがな。

 時間的に置手紙にも書いたように19時までに一度ダンジョンを出て慶達が戻ってきていないか確認しておかないとな。

 それでも帰ってきていない場合は、置手紙に次に戻ってくる時間を書き足した後、2階層を虱潰しに捜して行く事になるだろう。

「分かった」

「この宝箱は落ちてしまってもいいように2階層の地図を完成させてから開けに来るからな」

「うっ~~」

 春はテンションは下がって名残惜しそうに隠し部屋の中の宝箱を見つめていたが、それでも宝箱に近付いて部屋の中には入って行く様な愚行は冒さないようだ。

 まあ、落とし穴があると言われている部屋に態々入ったりはしないか。

 発動条件は宝箱の開閉は聞いているが、何の拍子で罠が発動するかも分からないからな。

「下に落ちて遭難はしたくないだろ。それに二重遭難は春がしないと言っていたじゃないか」

「は~い」

 俺が諌めるようにそう言うと、春はそれでも名残惜しそうにしながらも返事をして、次の隠し部屋へと向かい始めた。

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