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未定
82.絶対に双子だと思ったんだけどな
しおりを挟む明らかにlvアップの恩恵を使って、俺と慶の間に割って入ってきた山田 大地。
沈黙が気不味いな。
山田は俺と慶の攻撃を受け止める気満々で飛び出してきたが、それを直前で俺と慶が飛び退いてしまったから、山田は俺と慶の間で拳を受け止める体勢のまま固まっている。
そんな沈黙の中、俺と慶の視線が合うがお互いに相手が如何にかしてくれるのを期待していたのか、見つめ合ったまま俺達も固まってしまった。
本格的にどうしようかと思っていると、屋上の入り口から見知らぬ生徒が走り出てきた。
「大地っ。いきなり屋上に行くなんてどうしたのよってどうしたの?」
屋上に上がって来たのは、スカートを履いているので女子生徒なんだな、と言う事しか俺には分からない。
俺は山田の事は偶々知っていたが、他の生徒の事はかなり目立っていなければ覚えてないからな。
今の言葉から、この女性は昼休みに山田と一緒に居たら何を聞いたのか突然山田が屋上に向かって走り出したので、それを追いかけて来たら今に至るという所だろう。
名も知らぬこの女性が来たお陰で、気まずい沈黙も解けたので、俺と慶は固まっている山田を放置して美月達3人の所に戻る。
「じゃあ、余った時間何しようか?」
「そうだな。やはりここはダンジョンの話の続きを」
慶と俺が何事もなかった様に話し始めると。
「折角、喧嘩を止めてあげたんだから、お礼ぐらい言ってほしかったね」
そう言って固まっていた筈の山田が、さっき入ってきた女性と一緒にこちらに来た。
何故カッコつけようとして失敗してしたのに、そのまま帰らないんだ。メンタル鋼か。
話しかけられたと言う事は、調子に乗ってダンジョンの事を隠す気が無い山田と関わらないといけないのか。
はあ、一応鑑定しておくか。無視する訳にもいかないので、せめて何かかしら情報を引き出せないと割に合わないな。
【名前:山田大地
性別:男
年齢:17
職業:学生
lv:12
スキル:
HP:892/892
EP:233/233 】
【名前:山田海里
性別:女
年齢:17
職業:学生
lv:2
スキル:
HP:144/144
EP:17/17 】
苗字が同じで、地と海。この4月の時点で17歳になっているという事は。
「お前ら双子か?」
「いや、違うよ。こっちは」
「3年2組 :山田 海里この馬鹿の姉」
この馬鹿こと山田弟の話を遮って、山田姉は背中を叩いて自己紹介をした。
先輩か。上下関係とか苦手だからこのままで行こう。
自己紹介されても、双子では無いのかと思っている俺を見て、美月が驚いた様に話しかけてくる。
「光希さん、知らないんですか? 陸上部エースの海里先輩ですよ」
「知らない。と言うかなんで入学したての美月が知っているんだよ。慶は知っていたか?」
「まあ、一応名前だけはな」
「偶に地元の新聞に記事が載っていますよ」
美月がそう言うので、咲良達の方を視線をやって確認をする。
「ん、知ってる」「はい、地方ニュースでも見かけますね」
と返事が返ってきたので、知らなかったのは俺だけの様だ。
「成る程。それでその山田姉弟が何の様なんだ?」
「いや、喧嘩していたみたいだから、一応確認をね」
山田弟が何か話し始める前に、姉の方が喋り始める。
きっと山田姉には山田弟が何を言おうとしているのかが分かっていて面倒になる事も分かっているんだろうな。
今の山田姉の行動から、山田弟は正義感とかではなく目立ちたかったとか、手に入れた力を試してみたかったのが、俺と慶の間に割って入った理由か。
山田姉が何とかダンジョン関連の事を誤魔化そうとしている様に、今回は相手が悪かった。
普通の生徒同士の喧嘩なら兎も角。今回は佐久間家次期当主が戦っていた所に割って入れたんだ。
この屋上に居る生徒の中には、山田弟がダンジョンに入っているだろう事を察している者もいるだろう。
まあ、幸いにも力尽くで俺達を制圧した訳ではないので、致命的な状態にはなっていなかった。
もし一般の生徒が慶を力尽くで抑える事が出来たら、それはもう一般人ではないだろう。
これは俺にも言える事で全然人事ではないが、俺の場合はlvアップの恩恵は使っていないので人間の範疇を超えた動きではなく技術の問題だった。
凄く強かったんだと思われて、佐久間の門下生と勘違いされる程度の事だろうな。
しかし、馬鹿こと山田弟は、ダンジョンに入っているのがバレる様な事をしたばかりか、あの慶を力尽く止めようとするとはな。
例え慶がlv0のままだったとしても、山田弟には勝ち目は無い。それは小鬼君が身を以て証明してくれた事だ。
適当にあしらわれて恥ずかしい思いをするだけだったろうな。
それはそうと、ここは山田姉の丸く収めようとしているのに合わせて、さっさと話を終わらせよう。
俺も大した情報も無さそうだから、もう話を切り上げたかった。
「喧嘩じゃない。俺と慶がよくやる唯のじゃれ合いだ」
「そうですよ。学校でやったのは初めてですけど、いつもこんな感じですね」
「本当に?」
「はい。私や妹の咲良もよく見ていますから大丈夫ですよ」
「そっか。じゃあ邪魔したね」
山田姉は安心したホッとした表情をしてそう返事をすると、不満そうに何か言いたげな山田弟を連れて屋上を出て行こうとする。
「一つ聞きたいんだが?」
俺はその前に呼び止めた。
「なんだよ?」
「山田弟じゃなくて姉の方」
「何?」
「陸上では何をやっているんだ?」
「種目? 種目は100mと走り高跳びだけど、なんで?」
「いや、聞いてみただけだ」
「そっ、じゃあバイバイ」
そう言って今度こそ山田姉弟は屋上から出て行った。
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