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17,監禁されます。…え、どうしてこうなった…?

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「シエンはどこだ?」
「……」
「ちっ…やっぱり駄目か…」

アルフレッドは目の前で倒れてる女を、苦々しい思いで睨みつける。

こんなことをしている間に、シエンは…

「…ちっ、おい、お前の名は?」
「ミーナ」
「ミーナか。この幻術を解け」
「はい」

そこにいたのは、シエンの侍女と瓜二つの女。

「…姉妹?」
「…」
「…まぁいい。おまえにとってシエンは?」
「主人様」
「…ほう」

主人…か…

「ミーナ、お前は何処の者だ?間者か?」
「いえ」

間者ではない

「何処の組織だ?」
「シャドー」
「…シャドー?」

シャドー…曰く、とある木に願い事をしたら叶えてくれる者たちのこと。曰く、何処かの国の秘密組織。曰く、仕える主人は一人だけ。

曰く、彼らは依頼をすれば、なんでもこなす。

様々な憶測や噂が飛び交ってるのを耳にしたことがある。まさか、これがその一人とは。


「…お前は誰に仕えてるんだ?」

憶測の1つを尋ねてみる。


「…シエン様」

「っ…!…へぇ、俺の知らないところで俺の愛しい妻シエンは色々としているようだな?」

想像以上の回答に驚く。まさか、あとシャドーの主がシエンだとはな。


…ということは、シエンは自分の意思で逃げた、ってことか?

連れ去られたわけでもなく?
連れ去られた訳じゃないのなら、よかった…と安堵するのと同時に、シエンが自らの意思で逃げたことに、アルフレッドの中の黒い…濁ったような感情が垣間見る。

俺から…?逃げた…?

自分の部下を使って、自分に成り済まさせて?

計画も立てて?


「シエンは…逃げたのか?」
「…はい」
「ほう…」

そんなに、俺から逃げたいのか?
そんなに、俺のことが嫌いになった?
逃げるな、と言ったのに?
身代わりを用意して、俺の目を欺いて、そこまでして俺から逃げたかったのか??



「ふ…ふふ…ははははっ」

ふつふつと黒い感情とともに笑いがこみ上げてくる。


「…俺から逃げられると思ってんのか、シエン?」


独り言のように、呟いた。


そして、問いかける。


「おい、お前の拠点アジトは何処だ?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「まって、今なんか寒気が…」
「主人、風邪か?」
「まぁ、それは大変ですね…」
「あとどのくらい?」
「もうちょい」
「「……」」
「あ、見えた。ほら、主人、そこ」

指された方を見ると、ピンクと紫の奇抜な建物。…誰がこんなの作ろうと思ったのかしら…?

「へ、へぇ…だいぶ外観変わってるわね…」
「いや、それじゃなくてこっち」

その裏側に黒の至ってシンプルな、けれども高級そうな建物が…。

「まぁ…シンプルね」
「……まぁ、いっか…」
「??」



「たーだいまー」
「お、帰ってきたか」
「主人様、おかえりー」
「主人~」
「久しぶりね…皆。手を貸してくれてありがとう」
「礼を言われる覚えはない」
「うわぁ…ファストのツンデレとか需要なっ…うぐっ、いってぇ…」
「ヨッシが予定なことを言うからだよ」
「あれ?ロクとナナセ、あとゼロは?」
「ロクは情報操作に回ってる」
「ふむ」
「ナナセはそこにいた筈だよー」
「……」
「あら、ほんとね」
「団長はー…なんだっけ?」
「おい」
「さぁ?」
「おい?」
「あれだよ、アレ。お花を摘みに…ってやつだ」
「いや、なんでだよ。」
「何も言わずにどっかいったよねー」
「いや、いるからな?」
「ゼロ、どこ行ったのかしら?」
「主人まで?」
「……」
「ナナセ、無言で背後に立つのはやめてくれ。」
「あら、ゼロ。」
「…あー、おかえり?主人。」
「ただいま。貴方いつからいじられキャラになったの?」
「なった覚えはないんだがな…」
「シエン様…」
「どうしたの?ミーヤ」
「…い、いえ…あ、あの」

明らかに挙動不審となったミーヤが、恐々とした表情で何かを伝えようとする。

「?????」
「ミーナから、先程、通信が入りまして…」
「ミーナから?」
「はい。」


「すぐ逃げて…と」


コンコンッ…


その直後に扉を叩く音


そして…


「…シエン、そこにいるな?」



***


ミーナに場所を尋ねた後、早々に城を出た。

まだ、この近くにいるかもしれない。


「あ、王太子様!さっき、シエン様見かけましたよー?」
「…どこだ?」
「あちらの方です!」

侍女が示す方は、ミーナが言った場所とは真逆の方向。

彼女の言うことが本当ならば、行くべきだろう。その分、速く捕まえれる。が、シエンのことだ。きっと、シャドーとやらの拠点に行ってるだろう。

「そうか。」
「いやいやいやいや、王太子様!?こっちですってば!」

妙に引き留めようとしてくる侍女。

「どうされました?」

侍女長か。

「あ、シエン様はその子の言う通り、あちら側でございます。」

…?

「…ほう、腕のいい…厄介な仲間がいるようだ」

情報操作、という魔法だろう。

使えるものはごく僅かだとは聞くが…





情報操作(伝達魔法の上位魔法)

使えるものは国に1人いるかいないか。
いない、の方の割合の方が高い。寧ろいるのが稀。
その名の通り、魔法をかけたもの達に、情報を伝えさせ、曲解させ、敵を混乱させる能力を持つ。
なんてことないように見えるが、かなりすごい魔法。
現代で言うところの、石油危機の時のトイレットペーパーとか、現在のマスクやレトルト食品…などなどの売り切れ問題が出てくる。よーするに、国民がとある情報をもとに突っ走ってそれにより、迷惑が被り、不満殺到…。

口下手過ぎて、何言ってるか分からなくなってきました。

まとめると、とにかくすごい。

閑話休題





周りで言ってくる者たちを無視して、自分の感だけを頼りに進む。

「(裏門の森の方だよ。きっと、そっち。)」

頭の方に響いてくる声。

「(みんなの言うとおりだ。皆についていかないと。)」

なんだ?

「(引き返した方がいい。)」

これもあの魔法効果か?

「(戻れ、引き返せ)」


「うるせぇ」


目の前には、黒い建物。

ミーナが言ってた拠点。


(この際、目の端にあるピンクと紫の建物については、言及しないでおこう。)



そして、シエンがいる場所。





ドアに腕を伸ばし…軽くノックをする。




「シエン…そこにいるな?」



返事がない。


ドアに手をかける。鍵がかかってるようだった。



足に身体強化をかけ、思いっきり、蹴る。



ドガァァァン…と言うドアの壊れる激しい音。



そこには、目を大きく見開いて、ポカンとした表情で、驚きを隠せてない愛しい人シエンの姿が。


俺の感は当たってた。


そして、シエンの周りを囲むようにいる複数名。


シャドーか?


シエンのほうに向かって、ツカツカと歩いていく。

「あ、アル?」
「なに?シエン」
「落ち着こう?ね?目が、目が座ってるの」
「俺はこれ以上になく落ち着いてるぞ?」
「うん、わかったから一回止まろう?」

ぴたりと、シエンの目の前で止まる。

周りの者たちは動かない。否、動けない。


シエンには劣るものの、アルフレッドは冒険者ランクでいうところのSSランクをもつ。

一番強いであろうゼロも推奨Sランク程度。
(Sでも十分強い)

アルフレッドが歩き始める前に放った殺気はシャドーのメンバーを動けなくさせた。


至近距離で目を合わす2人。

何も知らない人が見れば、恋人がお互いを見つめ合っている状態であると思うだろう。

そして、知っている人が見れば…

片方は完全に目が座っており、捕食者の瞳をしており、

もう片方は、恐怖と驚愕が顔に表れていた。



***


怖い。とてつもなく怖い。

なんでバレた??先程、ミーヤがミーナから連絡きた、と言っていた。

その直後のことだ。

早い。かなり早い。

残してきたミーナが心配だ。

ずっと熱のこもった目で見つめてくるアルフレッド。

ずっといかにも食べられそうな目で見つめてくるアルフレッド。

本当に怖い。


沈黙が続く。至近距離での沈黙。


とりあえず、聞きたいことを尋ねることにする。


「…ミーナは?」


すると、睨み付けられるように見られる。勿論、熱のこもったまま。

お願いです。それをやめてください。


「…まず言うのがそれなのか?」


え、他に何を言えと?


「はぁ…ミーナとやらは客室で寝かせてるから安心しろ」

ホッと後ろで安堵のため息が聞こえた。

多分ミーヤだろう。

なぜ多分なのか、だって?見れないから。目が離せないの。目を離したら、絶対危ない気がする。


「…賢明だな」

なにが!?読まれてたの!?


「シエン、俺に何か言うことは?」


何か言うこと?何か…?


「ご、ごめんなさい?」

「なにに対して?」

なにに対して、だと!?何…ナニ…

「……逃げたこと?」
「ほう。シエンはそれが悪いことだって認識しているわけだ。」

おう、合ってたけど間違っていたパターンだ。


「なら、文句ねぇよな?」


笑顔で言われた内容が理解できないまま、腰に手を回され、引き寄せられ、顎を捉えられ、上をむかされる。


「え?…んんっ」


唇に柔らかい感触。顎に添えられていた手は後頭部に回っており、抱き抱えられるように、抱きしめられる。

強引に入ってきた舌に絡めとられ、軽く息苦しさを覚え、逃げようとするが、追いかけられ、再び絡められ、吸われる。

口の中にあるのが、自分のものなのかアルフレッドのものなのか、分からなくなった頃、ようやく解放された。銀色の糸が2人を繋ぐ。

腰は当の前に抜かしてしまい、自力では立てなかった。


「飲めよ」


支えられているとはいえ、上をむかされている為、口の中に残っている。


こくん、と飲み込む。


「いい子」


優しげに微笑まれ、(瞳はそのまま)、なぜか分からないが安堵すると同時に、景色が変わっていることに気づく。


「…え?」


そこは、さっきまでいたシャドーの拠点ではなく、何処かの部屋。

そこの部屋には、家具は小さなテーブルと大きなベットしかなく、扉は2つ。窓はない。


そして…1番に目にとまったのは…


ベットの端に置いてある、クッション付きの。勿論、鎖もついており、端はベットに繋いである。

え、勿論…ってなに?



「あ、アル??」

ついでに部屋の中を確認した今も、アルフレッドに抱きつかれている状態。


「ん?」
「いや、この部屋、なに?」
「ここにいてもらおうと思って」
「え?」

おかしなこと言ったっけ?みないな顔で首を傾げないで?


「ほっといたら、シエン逃げるだろう?」

……


「だから、ね?」


ごめんなさい。意味がわかりません。







その後は、なし崩し的にベットに寝かせられ、読者(なに、読者って!?)の想像通り。




目が覚めたら、おひさまはすでに傾き始めている時間…。



隣に、アルフレッドはおらず…


手首には、昨日見た手枷。




帝国にいるお父様、お母様。そして、王城にいるであろう、兄様。

私、シエンは監禁されたようです。


どうしてこうなった…!?





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイです。お久しぶりです。

なんで、こんなに遅くなったのか?…最近は読むほうが多くって…ごめんなさい。

期待してくださった皆様。お待たせいたしました。…待ってくれた…よね?1人くらいはいるはず!きっと!きっと!

今は、例のウイルスにより、自宅待機となり、学校も休みなので、読むのを一旦中断し、この話を書きました。
個人的に、そっち系は苦手なので、読み返しなしの一発投稿です。ご了承を。
誤字があったら、教えてください。

ファンタジーで書くはずが恋愛モノになり…ファンタジーで読んでくださっていた方には申し訳ないです。この話が終わり次第、ファンタジーを一作…まぁ、この話は置いといて。


感想、お気に入り登録お待ちしております!
引き続きよろしくお願いします!!


体調管理十分に、自宅待機で、引き篭もって、過ごしましょう!
仕事等がある方、無理せず、頑張ってください!!


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