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12,英雄になります。婚約者ができます。本当によろしいのでしょうか。

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皆さん、お久しぶりですね!もう一つの作品を読んでいただいている方はそうでもないかもしれませんが…

今回は、ご期待に添えないものかも…
次頑張ります…!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「幻光だ…」
「シエン様…」

男は尊敬の眼差しを。女は熱のこもった眼差しを向ける。

「おい聞いたか?幻光が倒したらしいぞ」
「幻光が?…女が倒したって聞いたぞ?」
「それもとてつもなく美女!」
「幻光って女らしい」
「おいまて、王太子様がその美女口説いてるって話だぞ?」
「シエン様素敵よね!」
「凛々しいわ!」
「シエン様、女の子みたいよ?」
「「えぇーー??」」
「英雄」
「あの美女やべぇー!」
「英雄シエンか??」
「王太子様もアレン様もシエン様も素敵よねー」
「アレン様も口説いてるって話だよな」
「今回の敵、王弟だったらしいぜ」
「化け物だろ」
「あれはやばかった」
「おい、今回死者0だってさ」
「アレン様、怪我してたよな」
「完治したってきいたぞ?」

話が飛び交い、人々が噂し合う今日この頃。中でも、見事に敵を蹴散らし、勝利へと導いた女神の話が多い。まぁ、ほとんどがシエンの話なんだが…


「うわぁ、すごい広まってるわ」
「仕方ないと思うぞ?なにせ、英雄シエン誕生だからな」
「…」
「明日には公報誌が出回るんじゃね?っと、殴んなって。兄としても妹が有名になるのは嬉しいことだぞ?嫁ぎ先も決まってるしな、っ、だから殴んな、痛いって」




英雄誕生!!  

クラウン王国で新たな英雄が誕生した。その名も『幻光』シエン。彼はこの国唯一のSSSランカーであり、これまでも数々の功績を残している。様々な魔法をつかい、不思議な刀を使い、地をかけるその姿は勇ましく、斬られた敵が光となって弾け飛ぶ。まるで、彼が通った道が光で記されているよう。我々は幻のようなことを体験したのだ。




『幻光』の正体に迫る!!

今話題の『幻光』。国唯一のSSSランカー。その名もシエン。様々な憶測が飛び交う中、我々は真実にたどり着いた。

シエン=ユークレナ 女
ユークレナ帝国の第一王女殿下。冒険者シエンとして活動し続け、僅か5年でSSSランカーに。二つ名『幻光』の名を持つ。流れるような白金髪をたなびかせ、引き込まれるような紫色の瞳で戦場に立つその姿は、戦場の女神といっても過言ではないだろう。
彼女は、この国、クラウン王国の王太子アルフレッド=クラウンと共同で敵を倒したのだった。近隣国の王女でありながら、怖じけずに立ち向かう姿は英雄という器に相応しいと言えるだろう。



アルフレッド=クラウン王太子、ついに婚約!?そのお相手は…!?

神童で知られる我らの王太子、アルフレッド=クラウン様。どのご令嬢にも靡かず、男色家だと噂も立ったこともあるが、この情報を知った時、我らは情報に振り回されていたことを深く反省したほどだった。
お相手の名は、シエン。SSS冒険者で、『幻光』の名を持つ彼女こそ、王太子様の心を掴んだ御人だった。本名、シエン=ユークレナ。彼の国、ユークレナ帝国のご息女であったのだ。



「すごいな…どこの記事も一面に飾ってるぞ」
「……!」
「どうした?」
「に、兄様の記事もありましたよ」
「は?どこ?」
「ここ」



王国騎士団副長、遂に婚約か!?

クラウン王国騎士団副長である、アレン様。彼は実力を認められ、早々に副長に就任となった。その強さに憧れる男は数知らず、女も目をハートにして近づく。顔もイケメンながら、将来も約束されたこの男の正体…身辺調査をしてみたが、一向に手がかりを掴めなかった。総長でもあり、王太子でもあるアルフレッド=クラウン様とも仲が良く、平民とも思えない、その仕草、所作。そう、彼は貴族、しかもあのユークレナ帝国出身だったのだ。それだけでなく、彼の正体も突き止めた。彼の正体は、ユークレナ帝国王太子、アレン=ユークレナ様だったのだ。彼はかの有名で今話題の『幻光』と兄弟でもあり、2人揃ってこの国に滞在していたことが判明した。「中略」…婚約したのは、ライアニマ公爵息女、ユリティア=ライアニマ様。…「中略」…この国はさらなる発展が訪れることを期待している。




「兄様、いつの間に…」
「うっせ、これ以上は俺が待てなかったんだ」
「うわぁ…」
「そういうお前はどうなんだよ」
「…帰りましょう」
「…あぁ(顔真っ赤じゃねぇか)」



戦いが集結し、敵兵は処罰され、政務が落ち着いた頃、民の間では、様々な噂と憶測が飛び交っていた。
それはもう、様々な。

その9割は本当のことだった、という。




それは、戦争が終結した数日後のこと。シエンは王城に呼ばれていた。王妃様によって。

「ここかな?…失礼いたしま、って、きゃあ!」

部屋に入るなり、腕を取られ引っ張られるシエン。そこには、王妃様と複数の侍女がいた。あと、大量のドレス。うん、訳わかんない。

「お、王妃様?」
「シエンちゃん…」
「は、はい?」
「なんで、その格好できてるの!?」
「え?」
「私が呼んだのは、お茶会をする為よ!なんで、冒険者の格好できてるの!?想像はついていましたけれど…貴女たち!頼んだわ!」
「「「はいっ!!!」」」

動き出す、侍女達。…って、ええ!?いつのまにか幻影が解かれてる!?地味にショックなんだけど。
王女様が選んだドレスに着替えさせられ、髪を整えられ、綺麗に化粧を施されていく。

完了したのか、下がっていく侍女達。

「あ、ありがとう?」
「ご苦労様ね、下がっていいわ」
「「「はい」」」
「綺麗ねぇー素敵だわぁ…」
「……」
「…はっ!ほら、シエンちゃん、お茶会があるのよ。いくわよー!」
「え、えぇー?」

訳も分からなく、連れ出されるシエン。着いたのは王城の庭の一部、広場になっていて、テーブルやベンチもあり、日当たりもいい。まさにお茶会にぴったりの場所。

テーブルには、カラフルで綺麗で美味しそうなお菓子が並べられている。すでに、シエン達以外の令嬢は席についているようだった。

「お、王妃様?説明を…」
「??みんなでお茶会、楽しみましょう?」
「それだけですか…」
「ほら、座るわよぉ」

そう言い残し、るんるんと席に座る王妃様。

「……」

隣の席がちょうど空いていたので、そこに座る。

他の令嬢から、「こいつ誰なの、王妃様と馴れ馴れしくしちゃって…」という視線がつきささる。

「では、はじめましょう?」




席替えがあり、滞りなくお茶会が進んでいく。純粋にお茶会を楽しむものもいれば、情報収集に勤しむもの、腹の探り合いをするものもいる。ある意味ここは戦場だ。

「…お初にお目にかかります、シエンと申します。皆様どうぞよろしくお願いいたします。」

何回めとも分からない自己紹介をする。無難に挨拶をするのがいちばんだった。所作やマナーは王女教育でバッチリ。それらのことで咎められることはないだろう。問題は…さっき睨んできたこの3人。

1人目、ミーナ=ミーモノヨ侯爵令嬢
王族を除く、貴族の中で最もくらいの高いとされる侯爵家の1つ…の娘。高飛車で傲慢の自己中。学院でも、ユリティア様に何かとちょっかいをかけてきた人。王太子妃の座が欲しいらしく着々と狙っているご令嬢No. 1。

2人目、リナ=ラスマラク子爵令嬢
ミーナの取り巻きの1人。目指せ玉の輿。婚約者はいる。が、面食いなところが欠点

3人目、フラウニー=チアナリサ男爵令嬢
ミーナの取り巻きの2人目。婚約者はいる。

ってところ。

「…シエン様、王妃様と仲がよろしいのですね、どういう経緯で知り合ったのかしら?是非お聞かせ願えますか?」

ミーナから声がかけられる。ひしひしと敵意を感じる。

「それは、構いませんが…仕事、でしょうか」

うん、王族と冒険者と知り合ったのが最初。

「…あぁ、シエン様のお父様のお仕事なのね」

何やら勘違いした様子。訂正しとくか…

「いえ、私のですわ」
「は?」

「私の仕事ですわ」
「…ご冗談を、バカにするのも大概にしてくださいまし。」
「嘘はいけませんわ、シエン様」
「しごとぉー?貴女の両親は何をしているのかしらぁー?」
「…嘘ではありません」
「ちょっとぉー!ミーナ様はミーモノヨ侯爵令嬢ですのよぉー!?そんな態度をとって…」
「いいのよ、フラウ。立場はひらけ貸すものではないわ?」
「まぁ、なんてお優しい!」
「……」
「ところで、シエン様、あなたのファミリーネームはなんですの??」
「まっさか、平民とかじゃありませんわよねぇー?」
「平民が王妃様と仲がよろしいと!?ありえないですわね。」
「えー、じゃあ平民じゃないとするとぉ、やっぱり貴族ぅー?でもでもぉ、ミーナ様は侯爵令嬢ではないですかぁ…あなたごときが敵う相手では…」
「フラウ、いいすぎよ?可哀想だわ」
「ごめんなさい、ミーナ様!」
「ええ、気にしないで、私のために言ってくださったのでしょう?ありがとう」
「ミーナ様!!」


なんなんだろう、この茶番。すでに子爵令嬢は会話に入ってない。王妃様は…面白がってるわ。

「…ちょっとぉ!きいておりますのぉ!?」
「えっ、と、なにか?」
「人の話も聞けないなんてぇ!どこの人かしらぁ?」
「……」


ちょっと、誰かこの男爵令嬢を黙らせてほしい。語尾伸ばすな、うるさい。

「シエン様、私、王太子妃になりたいんですの。協力してくださるわよね?今、とある冒険者と王太子様の婚約話が上がってますの。確立する前に、私が…。王太子様もどこぞの冒険者よりも私の方がずっといいに決まっております!私の家の後ろ盾が手に入りますのよ?口も安泰、一石二鳥ですわ!協力、してくださいますわよね?」
「協力しますわよねぇ?」
「……」

こいつらは、私の名前を知ってるのにピンとこないんだろうか。本人に話を持ちかけてどうする。

「…名乗って、おりませんでしたわね。」

スッと前を見つめ、姿勢を正す。

「え?」

急に話が変わり、シエン自身の雰囲気も変わったことから、戸惑ったような雰囲気が感じられる。

そんな中、爆弾を落とす。

「改めまして、御機嫌よう、皆さま。ユークレナ帝国第一王女、シエン=ユークレナと申します。以後、お見知り置きを。」
「っ!?」
「っ!?シエン=ユークレナ!?貴女が…」 
「様をつけなさい。格が違うのですよ」
「王妃様!」

傍観していた王妃様が割り込んできた。くるなら、早く来て欲しかった。

「この者たちの無礼、私の顔に免じてお見逃しくださいまし」

あー、そういうことね

「構いません。きちんと名乗らなかったこちらも悪いのですから…市井ではかなりの噂になってると思ったのですが…(民の方が色々知ってるよ、情報回って来てないの?貴族として大丈夫??)」
「「……」」
「仕方ありませんわね、何かとお忙しい事情もおありになったかもしれませんし(男探しに夢中になっていたのでしょう?)」
「っ!、失礼しますわ!」
「置いていかないでくださいぃ!」


「…シエンちゃん、これで大丈夫ね!」
「…王妃様…」
「そんな目で見ないで欲しいわ?敵が減ったのだからいいじゃない!1番面どu…うるさい奴らがいなくなって。」
「言い直せてませんよ」
「それはいいのよ、これでシエンちゃんがアルの嫁ね!」
「まだ気持ちが…」
「そんなに顔を真っ赤にさせてると、説得力皆無だわ」
「~っ!?」




この数日後

クラウン王国王太子、アルフレッド=クラウンとユークレナ帝国第1王女、シエン=ユークレナの婚約が決まった。


そして、この時、ユークレナ帝国国王と王妃が王国を訪れることを、まだ誰も知らない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイです。
久しぶりの投稿ですね。半分深夜テンションで書いたので、文脈がおかしいところがあるかもしれません。ご指摘いただけると幸いです。

次回『13,秘密を知ってしまいました。本当によろしいのでしょうか』

シエンとアレンのお母さん、お父さん登場回です!気になる、あの冒険者も登場!

熱中症にお気をつけください!学生は、宿題定期的にやっときなよー。

引き続きよろしくお願いします。
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