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04
新しい生活04
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翌朝。
さっそく船着き場へ向かう。
私たちは楽しげに、ベルはやはりやや緊張した面持ちで船に乗り込んだ。
やがて、定刻になり、ゆっくりと船が岸を離れる。
「…意外と揺れないのね」
と客室で、ベルが意外と平気そうな顔でそんな感想を漏らした。
「まだ川だからそこまで揺れないわよ。ああ、気分が悪くなったらすぐに言ってちょうだい。良く効くお薬を持ってきたから」
と言って、
(まぁ、海に出たら多少揺れるんだけど…。その時はその時よね)
となんだか申し訳なく思いながらもベルに安心するように声を掛ける。
「ええ。ありがとう」
と言うベルにアイカが、
「あはは。意外と平気そうだね。そうだ、景色を見てたらあんまり酔わないらしいから、ちょっと外に出て見ない?」
とベルを船室の外に誘った。
「え、ええ…」
とまだ不安そうなベルの腕を取ってみんなで甲板に出る。
甲板に出ると、船はもう川の中ほどまで進んでいた。
ゆったりと景色が流れていく。
そんな景色を見て、ベルがひと言、
「きれいね」
とつぶやいた。
(よかった)
と思いながら風に流される長い髪を抑えながら遠くを眺めるベルを見つめる。
当初の不安はなんとか払拭されたようだ。
私も景色に目を移し、初夏の日差しを受けてキラキラと輝く水面に目を細めた。
船は悠々と進んで行く。
私たちはしばらくみんなでぼんやりと景色を眺め、
「さて。部屋に戻ってお茶にしましょうか」
というユナの声で私たちはいったん船室に戻った。
楽しくお茶を飲み、しばらく談笑して過ごす。
その日の昼は市場で買ってきたサンドイッチで簡単に済ませた。
午後。
アイカが持ってきたトランプをして過ごす。
その結果ポーカーはベルが一番強いことが判明した。
「うふふ。アイカはわかりやす過ぎるのよ」
と言って笑うユナに、
「むー…」
とアイカがむくれたふりをする。
私たちは狭いとは言え、個室の二等船室で楽しい時間を過ごした。
翌朝。
夜のうちに海に出た船がゆったりと揺れている。
ベルが多少怖がるかと思っていたが、どうやら平気なようだ。
その様子に安心して、もらってきたお湯で朝食のスープを作りみんなでパンをかじった。
午後。
甲板に出てみんなで海を眺める。
「明日の朝にはトリスタン市国ね」
と甲板に出て潮風を浴びながら微笑むベルに、
「ええ。陸路なら7日はかかるところを丸2日で進むんだからすごいものよ」
とのんびり答えていると、アイカが、
「カレー、楽しみだね」
と本当に楽しそうな顔で言った。
その日も楽しく時間が過ぎていく。
揺れる船内で気分が悪くなることも無かった。
翌朝、船は無事港に着く。
トリスタン市国は貿易で成り立っている小さな国だ。
国と言うよりも、どちらかと言えば都市に近い。
通り抜けるのも急げば1日かからないだろう。
しかし、私たちは、いったんトリスタン市国の中心に向かってカレーを堪能していくことにした。
「ねぇ、どんなカレーにしようか?」
とウキウキした顔で聞いてくるアイカに、
「たしか、いろんな種類のカレーをちょっとずつ盛ったのがあったから、そういうのがいいんじゃないかしら?」
と答えて、カレー談議で盛り上がる。
私のおススメは甘めの豆のカレーと羊肉のかなり辛いカレーだと言うと、意外と辛い物が好きなベルが、
「どのくらい辛いの?」
と興味津々で聞いてきた。
「うーん。ひと口食べただけで汗をかくくらい辛かったわね。食べてる時はかなりつらいんだけど、不思議とまた食べたくなる味なのよ、これが」
と昔食べた辛いカレーの味を思い出しながら、ベルに伝える。
すると、アイカは、
「私はバターチキンかな?あのちょっと甘めでこってりな感じが癖になるんだよね」
と言い、ユナが、
「なら私はドライカレーかしら。卵がトッピングされてたら最高ね」
とそれぞれに好きなカレーを挙げた。
「うーん。どれも美味しそうね…」
と悩むベルに、
「じゃぁ、みんなで違うのを頼んでちょっとずつ味見してみましょうよ」
と提案してみる。
「いいね!それ!」
とアイカが真っ先に反応し、ユナとベルも笑顔でうなずいてくれた。
そうと決まればさっそく店を探して町を行く。
私たちは商店がひしめき合う狭い路地を通り、良さそうな店を物色し始めた。
やがて、1軒の小さな店を見つける。
外観はやや派手な装飾がしてあるが、ガラス越しに見る店内は明るく、人気もありそうだ。
(まぁ、変な店じゃ無さそうだし、このちょっと派手な感じも見慣れてくると南国っぽい雰囲気でいいかも)
と思い、さっそくみんなに、
「ここなんてどう?」
と提案してみた。
みんなうなずいてくれたので、思い切って店の扉をくぐる。
すると、給仕係の男性が、
「どうぞ」
と意外にも落ち着いた声で席に案内してくれた。
少し緊張気味で席に着く。
すると、すぐにその店員が水を持ってきてくれて、
「当店の場合、こちらにあるいくつかのカレーの中から2種類選んでいただいて、小鉢で出させていただいております。付け合わせは薄いパンのようなものとお米がありますので、お好きな方をおっしゃってください」
と、品書きを見ながら、少し悩んでいる私たちに説明してくれた。
私たちがいかにも外国から来た冒険者で初めての客だとわかったからだろう。
「なかなか良さそうなお店ね」
とユナが安心したように言う。
きっとみんな少し不安だったんだろう。
しかし、なかなか本格的なカレーの店だったらしく、私たちはそのことに安心して、さっそく品書きからどれを選ぶか相談し始めた。
迷った末、私は当初の予定通り、豆のカレーと羊のカレーを頼む。
アイカはバターチキンとちょっと大きな豚肉がごろっと入った角煮のようなカレーを頼み、ユナはほうれん草のカレーとドライカレーで、ベルは迷っていたが、海沿いの町らしい白身魚のカレーとやや辛いというチキンカレーを頼んだ。
「うわ。辛っ!」
と私の羊のカレーを食べたアイカが大袈裟に悶え水を飲む。
ユナとベルはそんなアイカの様子を笑いながら、
「あら。このお魚のカレー、うま味が濃くて美味しいわね」
「そっちのほうれん草のカレーもなかなか美味しいわ」
と言って、それぞれの味を楽しんでいた。
みんながそれぞれのカレーを一通り食べ、味の感想を伝えあいながら、和気あいあいと食事は進む。
そして、私たちは大満足で店を出ると、さっそく馬に乗り目的地の村へ向かって出発した。
その日の夕方にはトリスタン市国を出て裏街道の脇で野営にする。
「カレー美味しかったわね」
というベルに、
「帰りは船待ちで1泊するだろうから、香辛料をたっぷり買っていきましょう。きっとアンナさんなら美味しいカレーにしてくれるわ」
と言っていつもの野営ご飯をみんなで食べ、交代で体を休めた。
翌日からも旅は順調に進む。
初夏の爽やかな日差しと風を浴びつつ2日。
私たちは目的のソト村に到着した。
時刻は夕方前。
忙しい時間に申し訳ないと思ったがまずは村長を訪ね、私だけさっそく祠へと案内してもらった。
想像よりもややひどい浄化の魔導石の状態を見て、げんなりしつつ、丹念に作業をする。
作業が終わり、村長宅に戻りながら話を聞くと、どうやら林業に支障が出て来ているらしい。
木の成長が悪く、今は良いが将来が心配だと嘆いていた。
そんな話を聞くとやはり胸が痛む。
(民のために働いてこその聖女)
という言葉を改めて意識した。
その日は、村長宅で温かいもてなしを受けて、翌日。
馬たちのことを頼みさっそく森に入る。
ソト村の森は辺境だけあって深く注意が必要だ。
行程もやや長くなるだろう。
そんなことを考えながら、私たちは慎重に森の中を進んで行った。
初日は問題無く進む。
野営ご飯も少しだけ豪華にして、魚の干物を使ったスープを作った。
ユナが、
「優しい美味しさね。お魚の出汁と野菜のうま味が活かされているわ」
と感心したように言うと、ベルも、
「なんだかほっとする味ね」
と言っていかにも美味しそうな顔でそう言う。
私はなんだか嬉しくなりつつも、少しだけ照れ隠しをして、
「まぁ、初日くらいはね。明日からきっと厳しくなるだろうし、今のうちにゆったりしておきましょう」
と声を掛けた。
「「「はーい」」」
というみんなの声には微笑みが含まれている。
私はちょっとした恥ずかしさを感じつつ苦笑いで、
「さぁ、食べたら交代で見張りよ」
と言って、さっさとそのスープを口に運んだ。
さっそく船着き場へ向かう。
私たちは楽しげに、ベルはやはりやや緊張した面持ちで船に乗り込んだ。
やがて、定刻になり、ゆっくりと船が岸を離れる。
「…意外と揺れないのね」
と客室で、ベルが意外と平気そうな顔でそんな感想を漏らした。
「まだ川だからそこまで揺れないわよ。ああ、気分が悪くなったらすぐに言ってちょうだい。良く効くお薬を持ってきたから」
と言って、
(まぁ、海に出たら多少揺れるんだけど…。その時はその時よね)
となんだか申し訳なく思いながらもベルに安心するように声を掛ける。
「ええ。ありがとう」
と言うベルにアイカが、
「あはは。意外と平気そうだね。そうだ、景色を見てたらあんまり酔わないらしいから、ちょっと外に出て見ない?」
とベルを船室の外に誘った。
「え、ええ…」
とまだ不安そうなベルの腕を取ってみんなで甲板に出る。
甲板に出ると、船はもう川の中ほどまで進んでいた。
ゆったりと景色が流れていく。
そんな景色を見て、ベルがひと言、
「きれいね」
とつぶやいた。
(よかった)
と思いながら風に流される長い髪を抑えながら遠くを眺めるベルを見つめる。
当初の不安はなんとか払拭されたようだ。
私も景色に目を移し、初夏の日差しを受けてキラキラと輝く水面に目を細めた。
船は悠々と進んで行く。
私たちはしばらくみんなでぼんやりと景色を眺め、
「さて。部屋に戻ってお茶にしましょうか」
というユナの声で私たちはいったん船室に戻った。
楽しくお茶を飲み、しばらく談笑して過ごす。
その日の昼は市場で買ってきたサンドイッチで簡単に済ませた。
午後。
アイカが持ってきたトランプをして過ごす。
その結果ポーカーはベルが一番強いことが判明した。
「うふふ。アイカはわかりやす過ぎるのよ」
と言って笑うユナに、
「むー…」
とアイカがむくれたふりをする。
私たちは狭いとは言え、個室の二等船室で楽しい時間を過ごした。
翌朝。
夜のうちに海に出た船がゆったりと揺れている。
ベルが多少怖がるかと思っていたが、どうやら平気なようだ。
その様子に安心して、もらってきたお湯で朝食のスープを作りみんなでパンをかじった。
午後。
甲板に出てみんなで海を眺める。
「明日の朝にはトリスタン市国ね」
と甲板に出て潮風を浴びながら微笑むベルに、
「ええ。陸路なら7日はかかるところを丸2日で進むんだからすごいものよ」
とのんびり答えていると、アイカが、
「カレー、楽しみだね」
と本当に楽しそうな顔で言った。
その日も楽しく時間が過ぎていく。
揺れる船内で気分が悪くなることも無かった。
翌朝、船は無事港に着く。
トリスタン市国は貿易で成り立っている小さな国だ。
国と言うよりも、どちらかと言えば都市に近い。
通り抜けるのも急げば1日かからないだろう。
しかし、私たちは、いったんトリスタン市国の中心に向かってカレーを堪能していくことにした。
「ねぇ、どんなカレーにしようか?」
とウキウキした顔で聞いてくるアイカに、
「たしか、いろんな種類のカレーをちょっとずつ盛ったのがあったから、そういうのがいいんじゃないかしら?」
と答えて、カレー談議で盛り上がる。
私のおススメは甘めの豆のカレーと羊肉のかなり辛いカレーだと言うと、意外と辛い物が好きなベルが、
「どのくらい辛いの?」
と興味津々で聞いてきた。
「うーん。ひと口食べただけで汗をかくくらい辛かったわね。食べてる時はかなりつらいんだけど、不思議とまた食べたくなる味なのよ、これが」
と昔食べた辛いカレーの味を思い出しながら、ベルに伝える。
すると、アイカは、
「私はバターチキンかな?あのちょっと甘めでこってりな感じが癖になるんだよね」
と言い、ユナが、
「なら私はドライカレーかしら。卵がトッピングされてたら最高ね」
とそれぞれに好きなカレーを挙げた。
「うーん。どれも美味しそうね…」
と悩むベルに、
「じゃぁ、みんなで違うのを頼んでちょっとずつ味見してみましょうよ」
と提案してみる。
「いいね!それ!」
とアイカが真っ先に反応し、ユナとベルも笑顔でうなずいてくれた。
そうと決まればさっそく店を探して町を行く。
私たちは商店がひしめき合う狭い路地を通り、良さそうな店を物色し始めた。
やがて、1軒の小さな店を見つける。
外観はやや派手な装飾がしてあるが、ガラス越しに見る店内は明るく、人気もありそうだ。
(まぁ、変な店じゃ無さそうだし、このちょっと派手な感じも見慣れてくると南国っぽい雰囲気でいいかも)
と思い、さっそくみんなに、
「ここなんてどう?」
と提案してみた。
みんなうなずいてくれたので、思い切って店の扉をくぐる。
すると、給仕係の男性が、
「どうぞ」
と意外にも落ち着いた声で席に案内してくれた。
少し緊張気味で席に着く。
すると、すぐにその店員が水を持ってきてくれて、
「当店の場合、こちらにあるいくつかのカレーの中から2種類選んでいただいて、小鉢で出させていただいております。付け合わせは薄いパンのようなものとお米がありますので、お好きな方をおっしゃってください」
と、品書きを見ながら、少し悩んでいる私たちに説明してくれた。
私たちがいかにも外国から来た冒険者で初めての客だとわかったからだろう。
「なかなか良さそうなお店ね」
とユナが安心したように言う。
きっとみんな少し不安だったんだろう。
しかし、なかなか本格的なカレーの店だったらしく、私たちはそのことに安心して、さっそく品書きからどれを選ぶか相談し始めた。
迷った末、私は当初の予定通り、豆のカレーと羊のカレーを頼む。
アイカはバターチキンとちょっと大きな豚肉がごろっと入った角煮のようなカレーを頼み、ユナはほうれん草のカレーとドライカレーで、ベルは迷っていたが、海沿いの町らしい白身魚のカレーとやや辛いというチキンカレーを頼んだ。
「うわ。辛っ!」
と私の羊のカレーを食べたアイカが大袈裟に悶え水を飲む。
ユナとベルはそんなアイカの様子を笑いながら、
「あら。このお魚のカレー、うま味が濃くて美味しいわね」
「そっちのほうれん草のカレーもなかなか美味しいわ」
と言って、それぞれの味を楽しんでいた。
みんながそれぞれのカレーを一通り食べ、味の感想を伝えあいながら、和気あいあいと食事は進む。
そして、私たちは大満足で店を出ると、さっそく馬に乗り目的地の村へ向かって出発した。
その日の夕方にはトリスタン市国を出て裏街道の脇で野営にする。
「カレー美味しかったわね」
というベルに、
「帰りは船待ちで1泊するだろうから、香辛料をたっぷり買っていきましょう。きっとアンナさんなら美味しいカレーにしてくれるわ」
と言っていつもの野営ご飯をみんなで食べ、交代で体を休めた。
翌日からも旅は順調に進む。
初夏の爽やかな日差しと風を浴びつつ2日。
私たちは目的のソト村に到着した。
時刻は夕方前。
忙しい時間に申し訳ないと思ったがまずは村長を訪ね、私だけさっそく祠へと案内してもらった。
想像よりもややひどい浄化の魔導石の状態を見て、げんなりしつつ、丹念に作業をする。
作業が終わり、村長宅に戻りながら話を聞くと、どうやら林業に支障が出て来ているらしい。
木の成長が悪く、今は良いが将来が心配だと嘆いていた。
そんな話を聞くとやはり胸が痛む。
(民のために働いてこその聖女)
という言葉を改めて意識した。
その日は、村長宅で温かいもてなしを受けて、翌日。
馬たちのことを頼みさっそく森に入る。
ソト村の森は辺境だけあって深く注意が必要だ。
行程もやや長くなるだろう。
そんなことを考えながら、私たちは慎重に森の中を進んで行った。
初日は問題無く進む。
野営ご飯も少しだけ豪華にして、魚の干物を使ったスープを作った。
ユナが、
「優しい美味しさね。お魚の出汁と野菜のうま味が活かされているわ」
と感心したように言うと、ベルも、
「なんだかほっとする味ね」
と言っていかにも美味しそうな顔でそう言う。
私はなんだか嬉しくなりつつも、少しだけ照れ隠しをして、
「まぁ、初日くらいはね。明日からきっと厳しくなるだろうし、今のうちにゆったりしておきましょう」
と声を掛けた。
「「「はーい」」」
というみんなの声には微笑みが含まれている。
私はちょっとした恥ずかしさを感じつつ苦笑いで、
「さぁ、食べたら交代で見張りよ」
と言って、さっさとそのスープを口に運んだ。
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