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第三章〜剣士は遥かなる頂の前に〜
18.その後
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「アルス、いくわよ!」
「どこにだよ……」
エルディナが俺の服を引っ張る。
俺はそれを無視しながら飯を食べる。パスタが美味しい。
「……ああ、えーと?」
「お嬢様。幼馴染でしたよね?引き取ってください。」
お嬢様は心底不思議そうな顔でこっちを見ている。
そのタイミングでエルディナがお嬢様の方を見た。そしてパァと満面の笑みを浮かべる。
「ラーナ! 久しぶりね! 早速だけどあなたの騎士を借りるわね!」
「えー……ちょっと待ちなさい?」
フィルラーナ様だから、後ろのとってラーナか。やっぱり幼馴染なんだなあ。
お嬢様はエルディナの反対方向に行って、耳元で手を招く。俺もちょっとフォークを一回置いて、そっちの方へ少し体を傾ける。
「何があったの?」
「知りませんよ、懐かれたんです。」
小動物、それもチワワを飼ってる気分。散歩をせがむ感じで俺を何処かに連れていこうとしてくる。
そうこうしている内に食堂にアースが入ってきた。
お嬢様は少し俺から離れて、また不思議そうな顔をした。
「……何やってんだ、アルス。」
「おうアース。幼馴染だろ、連れ帰ってくれ。」
「断る。何度も言うが俺様はそいつが嫌いだ。それに俺様の言うことは聞かない。」
「アース、私が嫌いですって?」
「ほら見ろ。自分が好かれてる思っているんだ。それに本能的な生物だからな。俺様と相性が悪過ぎる。」
この飯を食べれば行きたいところもあるし、エルディナに付き纏われるのは困るんだが。
誰か、俺の知り合いでなんとかしてくれそうな人……いや、この二人が無理なら無理か。
「あら、そう言えば久しぶりに幼馴染が三人揃ったわね。ちょっと話さない?」
そう言ってお嬢様は俺の右隣に座る。
アースは何も言わずに向かいの椅子に座って足を組む。エルディナもやけに大人しげに椅子に座る。
「なんか飯を食ってるのが申し訳なくなってくるんですけど……お嬢様もなにか食べくださいよ。」
「私はもう食べたわ。ティルーナが今、寮に食器を持ち帰っているところよ。」
「ならアース。」
「俺様はいい。まだ腹が減ってない。」
「エルディナは?」
「ラーナが話すって言ってるから話すのよ。ラーナは私達のリーダーなんだから。」
すっごい飯が食べずらい。四人が席についてて一人だけ食べるとか普通に嫌だろうが。
「それで、ディナはアルスをどこに連れていこうとしていたの?」
お嬢様は早速本題に入った。
「校庭よ。一緒に魔法で遊ぼうとしたの。ほら、私と同レベルで魔法使えるのってアルスだけじゃない?」
「だからって食事ぐらいは普通にさせろよ。」
「黙れ。関係ないのにここに座らされている俺様の身になれ。」
俺が反論を言うと、空かさずアースはそう気だるそうに言った。
「うるさいわよアース。黙りなさい。」
「アルスって何の食べ物が好きなの?」
「ディナもしっかり話を聞きなさい。」
アースとエルディナをお嬢様は制御しようとしているが、全く制御しきれていない。
お嬢様って凄い唯我独尊な感じあったけど、もしかして周りがこんな奴らばっかりだからこんな風な性格になったんじゃないだろうか。
「あ、そうだ! 夏休みの間にどこかに行きましょうよ!」
エルディナはまた唐突にそんな事を言った。
アースもかなり自由だけど、エルディナはもっと自由だな。思った事を脊髄反射で言っているような感じがする。
それにしてもどこかに遊びに行くのか。
夏休みっぽいっちゃ夏休みっぽいが、俺この世界の名所とか知らないんだよな。だから行きたい場所もないわけだし、よく分からない。
「俺様は行きたくない。インドア派だ。」
「そんなんだからずっと貧弱なままなのよ! 一緒に遊びに行けばきっと変わるわ!」
まあ、確かにアースをどこかに連れていくのは怖い。下手をすれば死にかねないぐらい貧弱だし、仮にも次の国王だからな。
「その脳筋理論をなんとかしろって言ってんだよ。ほら、なんとか言ってやれアルス。」
「いや、俺はどっちでもいいけど。」
「ほれ見なさい!」
「ふん、所詮こいつは四天王の面汚しよ。」
「後の二人誰だよ。」
どこか行くならフランとかガレウも連れて行きたいし、ティルーナも来るとしたら全員で七人か。
大所帯になったもんだな。いや、すっごいやかましそう。お嬢様胃に穴開くんじゃないかな。胃薬を事前に買っておこう。
「ごちそうさまでした。それじゃあ、俺は用があるんで。」
「そうか。なら俺様も失礼しよう。」
「私もティルーナの様子を見てくるわ。」
「え?」
そのタイミングを見て同時に立ち上がり、立ち去っていく。
エルディナは動揺していて直ぐには動けない。
「……アルス。」
「ありがとうございます!」
俺を逃すためにわざと話し合いを始めたんだろう。
エルディナは、というかみんなお嬢様の言うことはなんだかんだ聞くからな。だからと言って反省も、行動を改めもしないんだけど。
風の大精霊と契約しているエルディナ相手に、体を風を変えて逃げるのは得策じゃない。
だから雷に変えて、さっさと行きたかった場所に行かせてもらう。
「待ちなさいアルス!」
エルディナの声に振り返ることなく、俺は元々の目的地へ向かっていった。
場所は学園長室の前。
あのエルディナに勝つとなると、生半可な方法では勝てはしない。普通に学園に行くだけなら差は開くだけだ。だから普通じゃない事をしなくちゃいけない。
アルドール先生にちょっと相談をしに行ったんだけど……
『ふむ。私が教えてもいいのだが……生憎と教鞭を振るう身だ。流石に一人の生徒につきっきりというわけにもいかない。学園長に相談するといい。家族なのだからよくしてもらえるだろう。』
と、いうわけで、学園長室まで来たわけだ。
魔導の頂点に立つような人だからきっと繋がりも広いだろうし、いい感じに魔導を教えてくれる人を紹介してくれそうではある。
「失礼します。アルス・ウァクラートです。」
ノックをして一応名乗る。
すると俺が扉を開く前に、一人でに扉が開いた。
扉の先には相も変わらず幼い姿をした最強の魔女がいる。
「……お主は色々とわしに感謝するべきじゃぞ。」
「……どれを?」
少し考えたが、心当たりがあり過ぎる。一体どの話をしているのだろう。
「全部じゃ。表彰式の時の通路への無断侵入に、決勝で守ってやったのもそうじゃし、魔導の成績が良いから特例で留年を免除してやってるのじゃ。」
「あ、やっぱり本来なら留年だったんだ。」
「……これはベルゴの血か? ラウロもそうじゃが、なぜわしへの尊敬の意が薄いのじゃ!」
学園長は頭を抱えながらそうやって嘆く。
見た目からは威厳が全くないからだろうと思うけど。
「で、何の用じゃ? わしも暇じゃないのじゃぞ。」
「いや、ちょっと次の大会に優勝したいんだ。良い師匠を紹介してくれないかなあと。」
「そこでわしに頼まんあたりは弁えとるな。」
「え、教えてくれるの?」
「無理じゃな。さっき言った通り忙しい。学園の仕事もあるが、魔導協会の仕事もある。」
知ってるよそんな事。だから他の人を探そうとしてんだ。
人に頼るってのはちょっとダサいけど、それで負ける方がもっとダサい。
それに俺がこれから先、一生魔導をやっていく中、師匠がいるというのは繋がりができるだけじゃなくて、色々と頼れる存在となるはずだ。
「で、できるの? できないの?」
「……そもそも弟子を取りたがる魔法使いなどそうおらん。各々が自分の研究に手一杯じゃし、弟子を取る奴がおったとしてしっかり教えてくれる奴など更におらん。」
「じゃあ、いないのかよ。」
「そうは言っておらんじゃろ。お主は幸運じゃ。たまたま、お主を弟子を取りたいという魔法使いがおった。それもとびっきり優秀な魔法使いじゃ。」
学園長は虚空から手紙を取り出して俺へと投げる。
空間魔法をまるで引き出しから出す感覚で使わないで欲しい。俺の常識がおかしくなる。
「誰の手紙だ?」
「……ふむ、賢神の一人じゃよ。腕はわしが保証しよう。詳細は手紙を確認すると良い。」
「賢神、か。」
一応賢神って数少ないはずなんだけどね。エルディナとか見たせいで割と身近に感じてしまう。
「ありがとう、学園長! この恩はいつか返すよ!」
「小童が、馬鹿にするのも大概にせい。お主が得られるものぐらいはわしはとうに得ておる。」
「それでもだよ!」
俺はそう言って手紙を持って学園長室を出た。
「どこにだよ……」
エルディナが俺の服を引っ張る。
俺はそれを無視しながら飯を食べる。パスタが美味しい。
「……ああ、えーと?」
「お嬢様。幼馴染でしたよね?引き取ってください。」
お嬢様は心底不思議そうな顔でこっちを見ている。
そのタイミングでエルディナがお嬢様の方を見た。そしてパァと満面の笑みを浮かべる。
「ラーナ! 久しぶりね! 早速だけどあなたの騎士を借りるわね!」
「えー……ちょっと待ちなさい?」
フィルラーナ様だから、後ろのとってラーナか。やっぱり幼馴染なんだなあ。
お嬢様はエルディナの反対方向に行って、耳元で手を招く。俺もちょっとフォークを一回置いて、そっちの方へ少し体を傾ける。
「何があったの?」
「知りませんよ、懐かれたんです。」
小動物、それもチワワを飼ってる気分。散歩をせがむ感じで俺を何処かに連れていこうとしてくる。
そうこうしている内に食堂にアースが入ってきた。
お嬢様は少し俺から離れて、また不思議そうな顔をした。
「……何やってんだ、アルス。」
「おうアース。幼馴染だろ、連れ帰ってくれ。」
「断る。何度も言うが俺様はそいつが嫌いだ。それに俺様の言うことは聞かない。」
「アース、私が嫌いですって?」
「ほら見ろ。自分が好かれてる思っているんだ。それに本能的な生物だからな。俺様と相性が悪過ぎる。」
この飯を食べれば行きたいところもあるし、エルディナに付き纏われるのは困るんだが。
誰か、俺の知り合いでなんとかしてくれそうな人……いや、この二人が無理なら無理か。
「あら、そう言えば久しぶりに幼馴染が三人揃ったわね。ちょっと話さない?」
そう言ってお嬢様は俺の右隣に座る。
アースは何も言わずに向かいの椅子に座って足を組む。エルディナもやけに大人しげに椅子に座る。
「なんか飯を食ってるのが申し訳なくなってくるんですけど……お嬢様もなにか食べくださいよ。」
「私はもう食べたわ。ティルーナが今、寮に食器を持ち帰っているところよ。」
「ならアース。」
「俺様はいい。まだ腹が減ってない。」
「エルディナは?」
「ラーナが話すって言ってるから話すのよ。ラーナは私達のリーダーなんだから。」
すっごい飯が食べずらい。四人が席についてて一人だけ食べるとか普通に嫌だろうが。
「それで、ディナはアルスをどこに連れていこうとしていたの?」
お嬢様は早速本題に入った。
「校庭よ。一緒に魔法で遊ぼうとしたの。ほら、私と同レベルで魔法使えるのってアルスだけじゃない?」
「だからって食事ぐらいは普通にさせろよ。」
「黙れ。関係ないのにここに座らされている俺様の身になれ。」
俺が反論を言うと、空かさずアースはそう気だるそうに言った。
「うるさいわよアース。黙りなさい。」
「アルスって何の食べ物が好きなの?」
「ディナもしっかり話を聞きなさい。」
アースとエルディナをお嬢様は制御しようとしているが、全く制御しきれていない。
お嬢様って凄い唯我独尊な感じあったけど、もしかして周りがこんな奴らばっかりだからこんな風な性格になったんじゃないだろうか。
「あ、そうだ! 夏休みの間にどこかに行きましょうよ!」
エルディナはまた唐突にそんな事を言った。
アースもかなり自由だけど、エルディナはもっと自由だな。思った事を脊髄反射で言っているような感じがする。
それにしてもどこかに遊びに行くのか。
夏休みっぽいっちゃ夏休みっぽいが、俺この世界の名所とか知らないんだよな。だから行きたい場所もないわけだし、よく分からない。
「俺様は行きたくない。インドア派だ。」
「そんなんだからずっと貧弱なままなのよ! 一緒に遊びに行けばきっと変わるわ!」
まあ、確かにアースをどこかに連れていくのは怖い。下手をすれば死にかねないぐらい貧弱だし、仮にも次の国王だからな。
「その脳筋理論をなんとかしろって言ってんだよ。ほら、なんとか言ってやれアルス。」
「いや、俺はどっちでもいいけど。」
「ほれ見なさい!」
「ふん、所詮こいつは四天王の面汚しよ。」
「後の二人誰だよ。」
どこか行くならフランとかガレウも連れて行きたいし、ティルーナも来るとしたら全員で七人か。
大所帯になったもんだな。いや、すっごいやかましそう。お嬢様胃に穴開くんじゃないかな。胃薬を事前に買っておこう。
「ごちそうさまでした。それじゃあ、俺は用があるんで。」
「そうか。なら俺様も失礼しよう。」
「私もティルーナの様子を見てくるわ。」
「え?」
そのタイミングを見て同時に立ち上がり、立ち去っていく。
エルディナは動揺していて直ぐには動けない。
「……アルス。」
「ありがとうございます!」
俺を逃すためにわざと話し合いを始めたんだろう。
エルディナは、というかみんなお嬢様の言うことはなんだかんだ聞くからな。だからと言って反省も、行動を改めもしないんだけど。
風の大精霊と契約しているエルディナ相手に、体を風を変えて逃げるのは得策じゃない。
だから雷に変えて、さっさと行きたかった場所に行かせてもらう。
「待ちなさいアルス!」
エルディナの声に振り返ることなく、俺は元々の目的地へ向かっていった。
場所は学園長室の前。
あのエルディナに勝つとなると、生半可な方法では勝てはしない。普通に学園に行くだけなら差は開くだけだ。だから普通じゃない事をしなくちゃいけない。
アルドール先生にちょっと相談をしに行ったんだけど……
『ふむ。私が教えてもいいのだが……生憎と教鞭を振るう身だ。流石に一人の生徒につきっきりというわけにもいかない。学園長に相談するといい。家族なのだからよくしてもらえるだろう。』
と、いうわけで、学園長室まで来たわけだ。
魔導の頂点に立つような人だからきっと繋がりも広いだろうし、いい感じに魔導を教えてくれる人を紹介してくれそうではある。
「失礼します。アルス・ウァクラートです。」
ノックをして一応名乗る。
すると俺が扉を開く前に、一人でに扉が開いた。
扉の先には相も変わらず幼い姿をした最強の魔女がいる。
「……お主は色々とわしに感謝するべきじゃぞ。」
「……どれを?」
少し考えたが、心当たりがあり過ぎる。一体どの話をしているのだろう。
「全部じゃ。表彰式の時の通路への無断侵入に、決勝で守ってやったのもそうじゃし、魔導の成績が良いから特例で留年を免除してやってるのじゃ。」
「あ、やっぱり本来なら留年だったんだ。」
「……これはベルゴの血か? ラウロもそうじゃが、なぜわしへの尊敬の意が薄いのじゃ!」
学園長は頭を抱えながらそうやって嘆く。
見た目からは威厳が全くないからだろうと思うけど。
「で、何の用じゃ? わしも暇じゃないのじゃぞ。」
「いや、ちょっと次の大会に優勝したいんだ。良い師匠を紹介してくれないかなあと。」
「そこでわしに頼まんあたりは弁えとるな。」
「え、教えてくれるの?」
「無理じゃな。さっき言った通り忙しい。学園の仕事もあるが、魔導協会の仕事もある。」
知ってるよそんな事。だから他の人を探そうとしてんだ。
人に頼るってのはちょっとダサいけど、それで負ける方がもっとダサい。
それに俺がこれから先、一生魔導をやっていく中、師匠がいるというのは繋がりができるだけじゃなくて、色々と頼れる存在となるはずだ。
「で、できるの? できないの?」
「……そもそも弟子を取りたがる魔法使いなどそうおらん。各々が自分の研究に手一杯じゃし、弟子を取る奴がおったとしてしっかり教えてくれる奴など更におらん。」
「じゃあ、いないのかよ。」
「そうは言っておらんじゃろ。お主は幸運じゃ。たまたま、お主を弟子を取りたいという魔法使いがおった。それもとびっきり優秀な魔法使いじゃ。」
学園長は虚空から手紙を取り出して俺へと投げる。
空間魔法をまるで引き出しから出す感覚で使わないで欲しい。俺の常識がおかしくなる。
「誰の手紙だ?」
「……ふむ、賢神の一人じゃよ。腕はわしが保証しよう。詳細は手紙を確認すると良い。」
「賢神、か。」
一応賢神って数少ないはずなんだけどね。エルディナとか見たせいで割と身近に感じてしまう。
「ありがとう、学園長! この恩はいつか返すよ!」
「小童が、馬鹿にするのも大概にせい。お主が得られるものぐらいはわしはとうに得ておる。」
「それでもだよ!」
俺はそう言って手紙を持って学園長室を出た。
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