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ChapterⅦ:Candle
No118.Nothingness
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「………。」
分かっていた。これは要の選択だって。回避だけなら可能だったはずだ。
月歌は言葉を連ねる。
「誓い………最期まで尽くしてくれた。こんな私に対しても、真摯に寄り添ってくれた。信じられなかったよ。私の周りは、気づけば誰もいなくなっていたけど、彼が変えてくれたんだ……。」
要から聞いた。月歌は愛情表現が苦手であり、何度も空回ったと。そして、孤立してしまったそうだ。
彼の感情を読み取る力が優れていたため、相性が非常に良かった。というより、要は誰がパートナーでも上手くやっていけるだろう。
ただ、客観的に見たとき、彼らは本当に仲が良く、一緒に居ない時間の方が少なかった程だった。彼女にとって、手放すべきでない存在だった。そして、それは無情にも手放されてしまった。
「………月歌、お前はどうしたい。精神的恐怖を覚えたなら、無理に任務に出すような真似はしないが……」
「お気遣いありがとう。でも、大丈夫。……今は殺意に満ちている。私は、私の手で、………復讐を果たす。」
「お前らしいな……。それでこそEnterだ。……では、俺はそろそろお暇する。」
「うん。」
俺はそう言い残し、月歌の部屋を後にした。そして、自動車に乗ってプレデスタンス本部へと帰還した。
燈花との戦闘から早六日。校舎は全焼で死者も多数という事でしばらく休校になっていて、今はオンラインでやっている。
もう戻りたくもないところ。暗殺者とは一体何なのだろうか。正体バレが両親にバレ、自分と夕憧は一族から追放されてしまった。
そういう任務なのだから仕方が無いのに、本当に“才能だけ”の一族だ。両親も現役時代は「一万人に一人の秀才」と呼ばれていたらしいが、引退後は子供だけ産みまくって放置。家事もせず、稽古も着けず、自分達だけで何とか生活していた。
戦死した兄弟は二桁にのぼる。残されたのは、最年少双子である、自分と夕憧だけだった。
そんなこんなで、適当にマンションを借りてそこを仮拠点として二人で生活していた。
「にしてもパパは酷い!昔自慢しか取り柄の無いニートがどの立場で物を……!」
「落ち着いて。……確かに悔しいけど、最初から分かっていたじゃん。」
「夜空は武器を十分に隠せるから困らないだろうけど、私は所有出来ないの!サイレンス本部に勢いで送っちゃったしね。」
「暗殺者一族として困らない新居を今建設してもらってるから、それまでの辛抱。」
マンションに武装を堂々と置ける訳も無く、不便な生活が強いられている状況。学校は無く、一族からも捨てられ、銃撃演習すら出来ない。あまりにも虚無だ。
「……ちょっと外出してくる。」
お互い、空気が悪い。嘆く事しか出来ない現状に、ピリついているのだ。
気分転換のためにも、自分は外周を散歩してくることにした。
何処か寂しさを感じる。この数日間で、色々な感情が一気に襲ってきたせいだろうか。それとも、単なる気まぐれなのだろうか。
思考放棄ができるなら、それ以上に幸せな事はきっと無いはず。
「あ……。」
「あ……えぇと……ひ、久しぶり!」
道中、明璃と遭遇した。スルーするつもりだったが、バッチリ目が合った。一連の流れの後なので、気まず過ぎて死にそうだ。
あの火炎の中だから直視できたが、もう目線を合わせられない。
こちらが言葉に詰まっていると、彼女の方がぎこちない感じで口がを開いた。
「家……来る?この辺りなんだけど…。」
この空気のままでいいものなのかは分からないけど、行く宛が無いのは事実。じっくり話す時間も大切だと考えたため、自分は首を縦に振った。
「じゃ、じゃあ行こ?」
そうして、自分は彼女の後に付いて、目的地へと向かった。道中での会話は、必要最低限しか無く、後先が不安で仕方が無い。
分かっていた。これは要の選択だって。回避だけなら可能だったはずだ。
月歌は言葉を連ねる。
「誓い………最期まで尽くしてくれた。こんな私に対しても、真摯に寄り添ってくれた。信じられなかったよ。私の周りは、気づけば誰もいなくなっていたけど、彼が変えてくれたんだ……。」
要から聞いた。月歌は愛情表現が苦手であり、何度も空回ったと。そして、孤立してしまったそうだ。
彼の感情を読み取る力が優れていたため、相性が非常に良かった。というより、要は誰がパートナーでも上手くやっていけるだろう。
ただ、客観的に見たとき、彼らは本当に仲が良く、一緒に居ない時間の方が少なかった程だった。彼女にとって、手放すべきでない存在だった。そして、それは無情にも手放されてしまった。
「………月歌、お前はどうしたい。精神的恐怖を覚えたなら、無理に任務に出すような真似はしないが……」
「お気遣いありがとう。でも、大丈夫。……今は殺意に満ちている。私は、私の手で、………復讐を果たす。」
「お前らしいな……。それでこそEnterだ。……では、俺はそろそろお暇する。」
「うん。」
俺はそう言い残し、月歌の部屋を後にした。そして、自動車に乗ってプレデスタンス本部へと帰還した。
燈花との戦闘から早六日。校舎は全焼で死者も多数という事でしばらく休校になっていて、今はオンラインでやっている。
もう戻りたくもないところ。暗殺者とは一体何なのだろうか。正体バレが両親にバレ、自分と夕憧は一族から追放されてしまった。
そういう任務なのだから仕方が無いのに、本当に“才能だけ”の一族だ。両親も現役時代は「一万人に一人の秀才」と呼ばれていたらしいが、引退後は子供だけ産みまくって放置。家事もせず、稽古も着けず、自分達だけで何とか生活していた。
戦死した兄弟は二桁にのぼる。残されたのは、最年少双子である、自分と夕憧だけだった。
そんなこんなで、適当にマンションを借りてそこを仮拠点として二人で生活していた。
「にしてもパパは酷い!昔自慢しか取り柄の無いニートがどの立場で物を……!」
「落ち着いて。……確かに悔しいけど、最初から分かっていたじゃん。」
「夜空は武器を十分に隠せるから困らないだろうけど、私は所有出来ないの!サイレンス本部に勢いで送っちゃったしね。」
「暗殺者一族として困らない新居を今建設してもらってるから、それまでの辛抱。」
マンションに武装を堂々と置ける訳も無く、不便な生活が強いられている状況。学校は無く、一族からも捨てられ、銃撃演習すら出来ない。あまりにも虚無だ。
「……ちょっと外出してくる。」
お互い、空気が悪い。嘆く事しか出来ない現状に、ピリついているのだ。
気分転換のためにも、自分は外周を散歩してくることにした。
何処か寂しさを感じる。この数日間で、色々な感情が一気に襲ってきたせいだろうか。それとも、単なる気まぐれなのだろうか。
思考放棄ができるなら、それ以上に幸せな事はきっと無いはず。
「あ……。」
「あ……えぇと……ひ、久しぶり!」
道中、明璃と遭遇した。スルーするつもりだったが、バッチリ目が合った。一連の流れの後なので、気まず過ぎて死にそうだ。
あの火炎の中だから直視できたが、もう目線を合わせられない。
こちらが言葉に詰まっていると、彼女の方がぎこちない感じで口がを開いた。
「家……来る?この辺りなんだけど…。」
この空気のままでいいものなのかは分からないけど、行く宛が無いのは事実。じっくり話す時間も大切だと考えたため、自分は首を縦に振った。
「じゃ、じゃあ行こ?」
そうして、自分は彼女の後に付いて、目的地へと向かった。道中での会話は、必要最低限しか無く、後先が不安で仕方が無い。
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