8 / 34
2章:ジャンボ海水プール
#8.流水と激流
しおりを挟む
水が撒かれて歩けるようになり、僕達はプールに身体を浸からせた。
「冷たっ!」
「まだ身体が慣れてないからな。出る頃には外の方が冷たくなってるだろうけど。」
「いや冷静なこと言ってるけどさ……めっちゃ身体震えてるじゃん!」
「悪いかよっ!」
「冗談冗談。」
「何が……?」
学校では絶対に見せないような困惑した表情を見せる琉威は完全にプライベートモードの様子。
生徒会の仕事も頑張っているし、彼は何処か疲れている雰囲気もあった。アクティビティで申し訳ないけど、しっかりと休暇を取ってほしい。
「何でもないよ。今日くらいは色々忘れてもいいと思うな……」
「……?」
そう濁した返しをしてプールサイドに目にやると、僕達より少し後ろを歩いていた東風さんが辿り着いたようだ。
「水の温度はどうですか?」
「うーん…ちょうどいいくらいだと思うよ。」
「そうですか………ひゃっ!冷たいっ!」
プールサイドに座って足を水につけると、想像以上に冷たかったのかピクリとした。
「あはは……まぁ入っていれば慣れると思うよ?琉威もこんな感じだし。」
「ん?まぁそうだな。瞬間的なものですぐ馴染む。」
「あ…本当ですね……こう話している間に慣れてきた気がします……」
顔色的にもかなり落ち着いてきたようで、足を深く浸からせて目線が同じ高さになった。
「とりあえず軽く身体を動かそうか……」
「そうですね、私もプールに入るの一年ぶりなので……」
日本最大級と称されるここに来たということは、勿論ウォータースライダーとかにも乗っておきたい。
しかし、水の抵抗を受けることが丸一年なのでまだプールの身体になりきれていない。
プールの身体になってからの方が楽しめるため、ちょっと水慣らしをすることにした。
「なぁ二人とも……運動は苦手か?」
体感5分ぐらいゆったりとした水に身体を委ねていると、突然琉威はそう質問を投げ掛けてきた。
「え?全然苦手じゃないよ?」
「私も得意とは言えませんが、苦手ではないです。」
「そうか……もう身体は十分に慣れたはず。ついて来い。」
そう言って彼は流水プールを上がり、こちらの様子を伺いながら何処かへと歩いていった。
「…琉威さん行っちゃいましたけど追わなくていいんですか?」
「追うには追うけど……彼があのキャラになった時は大体裏があるけど大丈夫?」
「裏……ですか?」
「うん。…あ、別に悪いことを企んでる訳ではないと思うよ。面白いこと……なのかな?」
確か去年に訪れた時は、昼食直前にスチールドラゴンに連れて行かれた。楽しかったけど、お陰で喉に飯が通らなかった。
今になってはそれも唯一無二のいい思い出になった気がしてる。だから信頼して乗っかっている節はある。
「面白いことですか。……折角来たなら色々体験しておきたいですし、行きましょう。」
「だね。」
僕と東風さんもプールサイドに上がり、遅れて彼について行った。
案の定と言ったところだ。さっきまでのようにのんびりなんてできない。アクティビティを全力で楽しませようとしてくる。
「入場から10分でハードル上げてくるね……」
「分かります……琉威さんは運動が好きな方なんですか?」
「僕よりはね。絶叫マシンとかが好きなタイプの人だよ。」
今、目の前にある列は超激流プールの列。既に迫力が違う。
そうこう話していると、琉威と合流できた。
「お、二人とも追いついたか。喜べ、予想よりも待ち時間が少ないぞ。」
「待ち時間はあってないようなものでしょ。優先チケットがある以上ね……」
「ああ、お金の力は偉大だからな。」
「生徒会会計がそれを言うんですね……」
琉威の発言に、東風さんは少し引き気味の様子だった。確かに彼の金銭感覚は何処かズレている。もちろん、プライベートに限った話ではあるが……。
しばらく順番を待ち、遂に来てしまった。並びながら見ているだけでも、さっきの比にならないことは一目瞭然だ。
「何で人々はスリルを求めてしまうんだろうか……」
「ここまで来て何言ってるんだ?去年何を経験したのか忘れたか?」
「感覚が忘れてないのが怖いね。」
「はぁ……俺は先行くぞ。列が詰まるから早く来いよ。」
見かねた琉威は先に水流に乗り身を委ねた。
「相葉君、行きましょう。どのみち引き返せないところまで来ているので……」
確かに東風の言う通りだ。時間を長引かせるわけにはいかない。
「はぁ…腹をくくりますか……」
「はい。」
僕達も身体を浮き輪に任せ、流れ始めた。開幕から速度の違いを痛感させられ、何故これを好む人が多いのかますます分からなくなった。
「流石にグダり過ぎだろ……苦手なら苦手って言えよ……」
鬼のような速さで上下する水流を何とか完走したものの、琉威からは完全に呆れられた様子だった。
「限度があるんだって!」
「限度が低い……」
彼は小さくそう呟くが、全然聞こえている。むしろわざとな気がしてならない。
「というか東風さんはけっこう楽しそうにしてたな。」
「は…はい。やってみたら案外……」
横を見ると東風さんの瞳は明らかにワクワクしている様子だ。
すると、今度は東風さんから提案してきた。
「じゃあ次は……あれに乗りましょう!」
そう言って東風さんが指を指したのは、ブーメランツイストだった。
「冷たっ!」
「まだ身体が慣れてないからな。出る頃には外の方が冷たくなってるだろうけど。」
「いや冷静なこと言ってるけどさ……めっちゃ身体震えてるじゃん!」
「悪いかよっ!」
「冗談冗談。」
「何が……?」
学校では絶対に見せないような困惑した表情を見せる琉威は完全にプライベートモードの様子。
生徒会の仕事も頑張っているし、彼は何処か疲れている雰囲気もあった。アクティビティで申し訳ないけど、しっかりと休暇を取ってほしい。
「何でもないよ。今日くらいは色々忘れてもいいと思うな……」
「……?」
そう濁した返しをしてプールサイドに目にやると、僕達より少し後ろを歩いていた東風さんが辿り着いたようだ。
「水の温度はどうですか?」
「うーん…ちょうどいいくらいだと思うよ。」
「そうですか………ひゃっ!冷たいっ!」
プールサイドに座って足を水につけると、想像以上に冷たかったのかピクリとした。
「あはは……まぁ入っていれば慣れると思うよ?琉威もこんな感じだし。」
「ん?まぁそうだな。瞬間的なものですぐ馴染む。」
「あ…本当ですね……こう話している間に慣れてきた気がします……」
顔色的にもかなり落ち着いてきたようで、足を深く浸からせて目線が同じ高さになった。
「とりあえず軽く身体を動かそうか……」
「そうですね、私もプールに入るの一年ぶりなので……」
日本最大級と称されるここに来たということは、勿論ウォータースライダーとかにも乗っておきたい。
しかし、水の抵抗を受けることが丸一年なのでまだプールの身体になりきれていない。
プールの身体になってからの方が楽しめるため、ちょっと水慣らしをすることにした。
「なぁ二人とも……運動は苦手か?」
体感5分ぐらいゆったりとした水に身体を委ねていると、突然琉威はそう質問を投げ掛けてきた。
「え?全然苦手じゃないよ?」
「私も得意とは言えませんが、苦手ではないです。」
「そうか……もう身体は十分に慣れたはず。ついて来い。」
そう言って彼は流水プールを上がり、こちらの様子を伺いながら何処かへと歩いていった。
「…琉威さん行っちゃいましたけど追わなくていいんですか?」
「追うには追うけど……彼があのキャラになった時は大体裏があるけど大丈夫?」
「裏……ですか?」
「うん。…あ、別に悪いことを企んでる訳ではないと思うよ。面白いこと……なのかな?」
確か去年に訪れた時は、昼食直前にスチールドラゴンに連れて行かれた。楽しかったけど、お陰で喉に飯が通らなかった。
今になってはそれも唯一無二のいい思い出になった気がしてる。だから信頼して乗っかっている節はある。
「面白いことですか。……折角来たなら色々体験しておきたいですし、行きましょう。」
「だね。」
僕と東風さんもプールサイドに上がり、遅れて彼について行った。
案の定と言ったところだ。さっきまでのようにのんびりなんてできない。アクティビティを全力で楽しませようとしてくる。
「入場から10分でハードル上げてくるね……」
「分かります……琉威さんは運動が好きな方なんですか?」
「僕よりはね。絶叫マシンとかが好きなタイプの人だよ。」
今、目の前にある列は超激流プールの列。既に迫力が違う。
そうこう話していると、琉威と合流できた。
「お、二人とも追いついたか。喜べ、予想よりも待ち時間が少ないぞ。」
「待ち時間はあってないようなものでしょ。優先チケットがある以上ね……」
「ああ、お金の力は偉大だからな。」
「生徒会会計がそれを言うんですね……」
琉威の発言に、東風さんは少し引き気味の様子だった。確かに彼の金銭感覚は何処かズレている。もちろん、プライベートに限った話ではあるが……。
しばらく順番を待ち、遂に来てしまった。並びながら見ているだけでも、さっきの比にならないことは一目瞭然だ。
「何で人々はスリルを求めてしまうんだろうか……」
「ここまで来て何言ってるんだ?去年何を経験したのか忘れたか?」
「感覚が忘れてないのが怖いね。」
「はぁ……俺は先行くぞ。列が詰まるから早く来いよ。」
見かねた琉威は先に水流に乗り身を委ねた。
「相葉君、行きましょう。どのみち引き返せないところまで来ているので……」
確かに東風の言う通りだ。時間を長引かせるわけにはいかない。
「はぁ…腹をくくりますか……」
「はい。」
僕達も身体を浮き輪に任せ、流れ始めた。開幕から速度の違いを痛感させられ、何故これを好む人が多いのかますます分からなくなった。
「流石にグダり過ぎだろ……苦手なら苦手って言えよ……」
鬼のような速さで上下する水流を何とか完走したものの、琉威からは完全に呆れられた様子だった。
「限度があるんだって!」
「限度が低い……」
彼は小さくそう呟くが、全然聞こえている。むしろわざとな気がしてならない。
「というか東風さんはけっこう楽しそうにしてたな。」
「は…はい。やってみたら案外……」
横を見ると東風さんの瞳は明らかにワクワクしている様子だ。
すると、今度は東風さんから提案してきた。
「じゃあ次は……あれに乗りましょう!」
そう言って東風さんが指を指したのは、ブーメランツイストだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
青春ヒロイズム
月ヶ瀬 杏
青春
私立進学校から地元の近くの高校に2年生の新学期から編入してきた友は、小学校の同級生で初恋相手の星野くんと再会する。 ワケありで編入してきた友は、新しい学校やクラスメートに馴染むつもりはなかったけれど、星野くんだけには特別な気持ちを持っていた。 だけど星野くんは友のことを「覚えていない」うえに、態度も冷たい。星野くんへの気持ちは消してしまおうと思う友だったけれど。
からふるに彩れ
らら
青春
この世界や人に対して全く無関心な、主人公(私)は嫌々高校に入学する。
そこで、出会ったのは明るくてみんなに愛されるイケメン、藤田翔夜。
彼との出会いがきっかけでどんどんと、主人公の周りが変わっていくが…
藤田翔夜にはある秘密があった…。
少女漫画の主人公みたいに純粋で、天然とかじゃなくて、隠し事ばっかで腹黒な私でも恋をしてもいいんですか?
────これは1人の人生を変えた青春の物語────
※恋愛系初めてなので、物語の進行が遅いかもしれませんが、頑張ります!宜しくお願いします!
金色の庭を越えて。
碧野葉菜
青春
大物政治家の娘、才色兼備な岸本あゆら。その輝かしい青春時代は、有名外科医の息子、帝清志郎のショッキングな場面に遭遇したことで砕け散る。
人生の岐路に立たされたあゆらに味方をしたのは、極道の息子、野間口志鬼だった。
親友の無念を晴らすため捜査に乗り出す二人だが、清志郎の背景には恐るべき闇の壁があった——。
軽薄そうに見え一途で逞しい志鬼と、気が強いが品性溢れる優しいあゆら。二人は身分の差を越え強く惹かれ合うが…
親が与える子への影響、思春期の歪み。
汚れた大人に挑む、少年少女の青春サスペンスラブストーリー。
LIFE ~にじいろのうた~
左藤 友大
青春
2088年6月。第三次世界大戦が終戦してから2年経った日本の経済は回復し徐々に復興していた。人々は大きな悲しみを乗り越え生きる為、そして新しい未来を目指す為に戦争が終わった平和を噛みしめていた。
羽藤虹は、母の故郷 宮古島で祖父母と暮らしている小学五年生の少年。虹は、3年前に帰ることができない戦地へ行った兄の願望によって宮古島に来た。しかし、両親を失ったうえ最愛の兄を亡くしたショックで大好きだった音楽と歌が嫌いになる。そんなある日、近所に静岡から引っ越してきた中学生 藤目神馬と出会う─
家族と兄の死を乗り越え、自由に生き人々に幸せを与える羽藤虹が歩んでいく人生の物語
本当の春
あおなゆみ
青春
僕たちは、自分を何と呼べば良いのかも分からない曖昧な存在で、それでも、出会いたいと願う一人がいて、それなのに、出会ってしまえば臆病になって手放す始末だーーー
高校入学に合わせて東京から引っ越してきた西山くんと、クラスに馴染めない浅田さんは、お互いの優しさを頼りに親しくなる。
北海道の本当の春の中、自然と始まった二人の下校時間は、穏やかで、優しい時間だった。
でも、恋とか友情だと断定しない、曖昧な関係を続ける二人には、当たり前のように噂が流れ始めてしまう。
本当の自分が何なのかも分からない不安定さは、穏やかな青春さえも奪ってゆく。
「わたしの異世界転生先はここ?」と記憶喪失になったクラスの美少女がいってるんだが、いったいどうした!?
中靍 水雲
青春
「わたしを召喚したのはあなた?」って…雛祭さん!!どういうことだよ!?
「雛祭ちかな(ひなまつりちかな)」は、おれのクラスのまじめ女子。
対して、おれ「鯉幟大知(こいのぼりだいち)」はクラスのモブ。ラノベ好きなオタクだ。
おれと雛祭さんは、同じクラスでもからむことのない、別世界の住人だった。
あの日までは———。
それは、校舎裏で、掃除をしていた時だった。
雛祭さんが、突然現れ何かをいおうとした瞬間、足を滑らせ、転んでしまったのだ。
幸い無傷だったようだが、ようすがおかしい。
「雛祭さん、大丈夫?」
「———わたしの転生先、ここですか?」
雛祭さんのそばに、おれが昨日読んでいた異世界転生ラノベが落ちている。
これはいったいどういうことだ?
病院の検査の結果、雛祭さんは「一過性全健忘」ということらしい。
だがこれは、直前まで読んでいた本の影響がもろに出ているのか?
医者によると症状は、最低でも二十四時間以内に治るとのことなので、一安心。
と、思ったら。
数日経ってもちっとも治らないじゃない上に、自分を「異世界から転生きた人間」だと信じて疑わない。
どんどんおれに絡んでくるようになってきてるし。
いつになったら異世界転生記憶喪失は治るんだよ!?
表紙 ノーコピーライトガールさま
【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】
猫都299
青春
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。
「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」
秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。
※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記)
※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記)
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベルに投稿しています。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる