8 / 8
本編
8(義父視点)
しおりを挟む
「あぁ、あの頃は大変だったわ。
色々と文句を言う方々もいましたし...ね。」
たしかに...色々と大変な時期だったが、あの頃があったからこそ幸せな今があるのだろう。
文句を言う輩共は全て蹴散らしたが...あの頃は、陛下が一番イキイキとしていたな......。
朗らかな笑顔で振るわれる拳は、全体重の乗った...武術を知る者が見れば素晴らしく美しい、とてつもない力が込められていた。
「そうですわね...。」
「貴女もこんなに元気になって...可愛いままで成長してくれて嬉しいわ。
風邪にも滅多にかかりませんし、もう安心ね。」
本当に...娘となってからも幾度も生死を彷徨うから、アリーを神が呼んでいるのだと神殿より遣わされた神官に言われて、神を殺せば良いのかと思い詰めてしまったこともある。
まぁ、アリーから...
『神官様は、神こそが唯一と盲信している方々ですもの。
一々、反応するだけ無駄ですわ。
神が私を呼んでいるのならば、このように辛い思いをさせるようなことをいたしますかしら?
眠るように迎えてくださらないのなら、神の下へと参ったとしても遺恨が残りますわ。』
と言われていなかったら、神殿へと乗り込んでいたのかもしれない。
「ウフフ、おじ様が面倒なのは変わりませんのに...お母様の周囲は目まぐるしく変わりましたものね。」
「5人も生むことになるとは、全くの予想外よ...。
ただ、結婚したら可愛い娘を生んで、アリーと3人でお揃いのドレスを仕立てようと思っていただけなのよ?
それなのに、4人も男の子が続くなんてね...。
生まれてくる子供の、性別は選べないのだということを全く考えてなかったわ。」
そうだった...。
アリーのことがあったから、私達の結婚は結婚までの諸々を最短で進んだのだが...初めての顔合わせの際に、
『私は、可愛い女の子を生みたいのですわ!
そして、アリーと3人でお揃いのドレスを仕立てますの!
ですから、結婚した暁には、共に子作りに励んでくださいませね?』
と、私の手を両手で握りながら可憐な笑顔で言われたのだった...。
『ルシルフ様を選んだ理由...ですか?
そうですわね...もしも私が男の子を生んだ場合に、後々に後継者問題が勃発すると面倒ですから、長兄様が跡をお継ぎになられている伯爵家の3男であるルシルフ様を選んだのですわ。
あぁ、アリーが、ルシルフ様を気に入ったということも理由の1つですわよ?
あの子は、人を見る目がございますの。
ですから、あの子が気に入ったのであれば、ルシルフ様はとても優しい人柄で、将来幸せな家庭を築けるのだろうと判断いたしましたの。』
とも言われたか...。
王族の血が入った男児を当主に!と言い出す輩も少なくはないから...家族で争うのは私も避けたかった。
両親や兄夫婦の前で、あっけらかんと話してくれたのは好印象だったな。
「どちらでも、きっと可愛いですわ!
けれど、また男の子でしょうか?
それとも、今度こそ女の子かしら?
女の子なら、おじ様の寵愛がこの子に移りますかしら?
そろそろ、家出でもしたくなってきましたわ。」
「ご自分が娘に恵まれませんでしたから、王族の女の子には、特に格別に愛情を注ぎますのよねぇ...悪い癖だわ。」
2人共、愁う顔も可愛い...。
たとえ生まれるのが女の子であっても、アリーへの陛下の寵愛は変わらないのだろうけれど...家出はしないでくれるとありがたい。
嫁ぐまでまだもう少しあるのだし、寂しいじゃないか...。
~完~
*
色々と文句を言う方々もいましたし...ね。」
たしかに...色々と大変な時期だったが、あの頃があったからこそ幸せな今があるのだろう。
文句を言う輩共は全て蹴散らしたが...あの頃は、陛下が一番イキイキとしていたな......。
朗らかな笑顔で振るわれる拳は、全体重の乗った...武術を知る者が見れば素晴らしく美しい、とてつもない力が込められていた。
「そうですわね...。」
「貴女もこんなに元気になって...可愛いままで成長してくれて嬉しいわ。
風邪にも滅多にかかりませんし、もう安心ね。」
本当に...娘となってからも幾度も生死を彷徨うから、アリーを神が呼んでいるのだと神殿より遣わされた神官に言われて、神を殺せば良いのかと思い詰めてしまったこともある。
まぁ、アリーから...
『神官様は、神こそが唯一と盲信している方々ですもの。
一々、反応するだけ無駄ですわ。
神が私を呼んでいるのならば、このように辛い思いをさせるようなことをいたしますかしら?
眠るように迎えてくださらないのなら、神の下へと参ったとしても遺恨が残りますわ。』
と言われていなかったら、神殿へと乗り込んでいたのかもしれない。
「ウフフ、おじ様が面倒なのは変わりませんのに...お母様の周囲は目まぐるしく変わりましたものね。」
「5人も生むことになるとは、全くの予想外よ...。
ただ、結婚したら可愛い娘を生んで、アリーと3人でお揃いのドレスを仕立てようと思っていただけなのよ?
それなのに、4人も男の子が続くなんてね...。
生まれてくる子供の、性別は選べないのだということを全く考えてなかったわ。」
そうだった...。
アリーのことがあったから、私達の結婚は結婚までの諸々を最短で進んだのだが...初めての顔合わせの際に、
『私は、可愛い女の子を生みたいのですわ!
そして、アリーと3人でお揃いのドレスを仕立てますの!
ですから、結婚した暁には、共に子作りに励んでくださいませね?』
と、私の手を両手で握りながら可憐な笑顔で言われたのだった...。
『ルシルフ様を選んだ理由...ですか?
そうですわね...もしも私が男の子を生んだ場合に、後々に後継者問題が勃発すると面倒ですから、長兄様が跡をお継ぎになられている伯爵家の3男であるルシルフ様を選んだのですわ。
あぁ、アリーが、ルシルフ様を気に入ったということも理由の1つですわよ?
あの子は、人を見る目がございますの。
ですから、あの子が気に入ったのであれば、ルシルフ様はとても優しい人柄で、将来幸せな家庭を築けるのだろうと判断いたしましたの。』
とも言われたか...。
王族の血が入った男児を当主に!と言い出す輩も少なくはないから...家族で争うのは私も避けたかった。
両親や兄夫婦の前で、あっけらかんと話してくれたのは好印象だったな。
「どちらでも、きっと可愛いですわ!
けれど、また男の子でしょうか?
それとも、今度こそ女の子かしら?
女の子なら、おじ様の寵愛がこの子に移りますかしら?
そろそろ、家出でもしたくなってきましたわ。」
「ご自分が娘に恵まれませんでしたから、王族の女の子には、特に格別に愛情を注ぎますのよねぇ...悪い癖だわ。」
2人共、愁う顔も可愛い...。
たとえ生まれるのが女の子であっても、アリーへの陛下の寵愛は変わらないのだろうけれど...家出はしないでくれるとありがたい。
嫁ぐまでまだもう少しあるのだし、寂しいじゃないか...。
~完~
*
0
お気に入りに追加
39
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
婚約破棄?それならこの国を返して頂きます
Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国
500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー
根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる