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本編

8(義父視点)

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「あぁ、あの頃は大変だったわ。
色々と文句を言う方々もいましたし...ね。」

たしかに...色々と大変な時期だったが、あの頃があったからこそ幸せな今があるのだろう。
文句を言う輩共は全て蹴散らしたが...あの頃は、陛下が一番イキイキとしていたな......。
朗らかな笑顔で振るわれる拳は、全体重の乗った...武術を知る者が見れば素晴らしく美しい、とてつもない力が込められていた。

「そうですわね...。」

「貴女もこんなに元気になって...可愛いままで成長してくれて嬉しいわ。
風邪にも滅多にかかりませんし、もう安心ね。」

本当に...娘となってからも幾度も生死を彷徨うから、アリーを神が呼んでいるのだと神殿より遣わされた神官に言われて、神を殺せば良いのかと思い詰めてしまったこともある。
まぁ、アリーから...
『神官様は、神こそが唯一と盲信している方々ですもの。
一々、反応するだけ無駄ですわ。
神が私を呼んでいるのならば、このように辛い思いをさせるようなことをいたしますかしら?
眠るように迎えてくださらないのなら、神の下へと参ったとしても遺恨が残りますわ。』
と言われていなかったら、神殿へと乗り込んでいたのかもしれない。

「ウフフ、おじ様が面倒なのは変わりませんのに...お母様の周囲は目まぐるしく変わりましたものね。」

「5人も生むことになるとは、全くの予想外よ...。
ただ、結婚したら可愛い娘を生んで、アリーと3人でお揃いのドレスを仕立てようと思っていただけなのよ?
それなのに、4人も男の子が続くなんてね...。
生まれてくる子供の、性別は選べないのだということを全く考えてなかったわ。」

そうだった...。
アリーのことがあったから、私達の結婚は結婚までの諸々を最短で進んだのだが...初めての顔合わせの際に、
『私は、可愛い女の子を生みたいのですわ!
そして、アリーと3人でお揃いのドレスを仕立てますの!
ですから、結婚した暁には、共に子作りに励んでくださいませね?』
と、私の手を両手で握りながら可憐な笑顔で言われたのだった...。
『ルシルフ様を選んだ理由...ですか?
そうですわね...もしも私が男の子を生んだ場合に、後々に後継者問題が勃発すると面倒ですから、長兄様が跡をお継ぎになられている伯爵家の3男であるルシルフ様を選んだのですわ。
あぁ、アリーが、ルシルフ様を気に入ったということも理由の1つですわよ?
あの子は、人を見る目がございますの。
ですから、あの子が気に入ったのであれば、ルシルフ様はとても優しい人柄で、将来幸せな家庭を築けるのだろうと判断いたしましたの。』
とも言われたか...。
王族の血が入った男児を当主に!と言い出す輩も少なくはないから...家族で争うのは私も避けたかった。
両親や兄夫婦の前で、あっけらかんと話してくれたのは好印象だったな。

「どちらでも、きっと可愛いですわ!
けれど、また男の子でしょうか?
それとも、今度こそ女の子かしら?
女の子なら、おじ様の寵愛がこの子に移りますかしら?
そろそろ、家出でもしたくなってきましたわ。」

「ご自分が娘に恵まれませんでしたから、王族の女の子には、特に・・格別に愛情を注ぎますのよねぇ...悪い癖だわ。」

2人共、愁う顔も可愛い...。
たとえ生まれるのが女の子であっても、アリーへの陛下の寵愛は変わらないのだろうけれど...家出はしないでくれるとありがたい。
嫁ぐまでまだもう少しあるのだし、寂しいじゃないか...。





~完~
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