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本編

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「あらまぁ!本当に、幼い頃のお姉様に似ておりますこと!
んふふ!眠っていても、とっても可愛らしいわ!
あの家の方々は、どうして今まで隠しておられたのかしらね?
身体が弱いのなら、私に預けてくださればよろしいのに...私、全力で治療いたしますわよ?」

「王妹殿下、ご報告が遅くなりまして...申し訳ございません。」

「あら、それは仕方無いわ。
雇われの身ではなかなか思うように動けなかったのでしょう?
そもそも、報告の義務があるのは両親よ。
今回のことは貴方達の不手際などではありませんもの...どうか謝らないで?

どうせ、あの脳筋が、少ない脳をフル回転させて裏で手を回していたのでしょう?
もしかしたら、誰かしらが何かしらの意図をもって入れ知恵なさっていたのかもしれませんわ。
『末子との少ない時間を大切にしたいのです。』
だなんて、白々しいわ!
この状態を診れば誰でも分かるわよ!
大切にしたいとか宣っておきながら、最低限の治療しかしていないではないの!
体力を少しずつでもつけていけていれば、風邪などの病気の治療も切り傷や骨折などの外傷の治癒も楽になるでしょう?
身体の弱かったお姉様も、少しずつ体力をつけていったからこそ!
子供を3人産んだ今も元気に過ごすことが出来ておりますのよ?」

「んぅ?」

「あぁ、起こしてしまったわね...ごめんなさいね?
どう?目は見えているかしら?」

「...ぁぃ。」

「あ、喉が渇いているわよね。
アリー、少しお水を飲みましょうね。」

「...ぁりがと...ぅございます。」

「お礼なんていらないわ。
私には、貴女が受けた痛みを和らげることしか出来ないのだもの...このくらいことは、お手伝いさせて?ね?」

「はぃ、ありがとぅございます。」

目を覚ました私を見て焦ったお顔をしながらも嬉しそうに微笑まれた王妹殿下は、
『私、お身体の弱いお姉様がとても心配ですの。
ですから、私は何処にも嫁ぎませんわ。
お姉様の主治医として、お姉様の婚家へと付いていきますわ!』
と宣言されて、本当に王姉殿下の主治医となられて...王姉殿下が寛解なされてからも研究を続けられていて、未だに何処にも嫁がれずにおられるのだとネムリスさんに聞いたことがあります。
そして、王妹殿下が身体の弱いと聞く私のことを心配して、何度も我が家を訪問されていたということもネムリスさんから聞いていました。
王姉殿下も共に来られているという噂を聞いてチラッと覗きに行ったネムリスさんから、王妹殿下も王姉殿下も、私と同じ黒い髪に私と同じ琥珀の瞳なのだとも聞いていましたが、このような色なのですね...綺麗です。
私は寝室より出ることが殆ど出来ませんでしたので、部屋に備え付けられた鏡台に座ることが出来ませんでした。
生まれてからずっと、鏡を見たことがありません。
それに、大人用の鏡台に子供が座っても鏡を見ることが出来る筈ありませんよね...。
持ち運べる手鏡は高価らしく、ネムリスさんも持ってはいないのだそうです。
何度かネムリスさんが私を抱いて鏡台の鏡を見せようとしてくださいましたが、ネムリスさんは小人族という種族の方でして、身長は1メートル程ととても小柄なのです。
私を抱くことは出来ても、鏡台まで歩けなくなってしまったので無理でした。

因みに...私はまだネムリスさんの身長を越せてません。
通常であれば、5歳くらいで1メートル程だと聞きましたが、身体が弱く鍛えることも出来ませんから仕方ありません。

「ウフフ、お姉様も貴女に会いたがっていたのよ?
お手紙を出したから、きっと直ぐに会いに来るわ。
アリー?貴女は、何も心配しなくて良いのよ。
身体を治すことだけを考えなさいね?」

「はぃ、分かりました。」

「何か心配なことがあるのなら、私達がなんとかするわ!
いつでも、何でも言ってね?
貴女は、まだ動けませんからね?分かった?

今まで通りにネムリスも付いているし、ネムリスの伯母であるミムリアもいるわ。
後、私も出来るだけここに来るし...あ、ノーレン先生もいたわね。
んふふ、ごめんなさいね?
決して、ノーレン先生のことを忘れていた訳では無いのよ?」

「分かっております。」

「あぁ、見て?眠そうにトロンとしているわ!
なんて可愛いのかしら...大丈夫よ?
安心して、ゆっくりお眠りなさい?」

「おやしゅみなさい...。」

「えぇ、おやすみなさい。」





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