思い付き短編集

神谷 絵馬

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本の虫と賢者様(兄)の、視点は(侍女)3

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「いっそのこと、第2王子に国王を変わった方が国民の為なのでは?
陛下もお疲れのようですし...そろそろ退位されて、余生を送られてはどうでしょう?」

「あ、それいいですね。
イシス伯母様も楽が出来ますし、皆様もあの不快なお顔を見ているのもとても辛いでしょうし...。
元々、役に立たない国王陛下の代わりに国政を仕切っているのは第2王子ですもんね。
この前は愚痴を聞かされて大変でした...あ、」

「第2王子と会ったのですか?」

ふぃー、やっと退けれたわー。
後ろから甲冑の隙間に膝とか爪先とかをガンっと入れても起きねぇし、周りを見てみれば他のヤツらはとっとと逃げてていねぇし、ハァー、今度しばきに行ったろ。
玉座の間の床に、甲冑による傷が出来てるけど仕方ないよね?
か弱い侍女である私1人で、重たい甲冑を着てる兵士を傷なく退かすのとか無理だから。

アイリス様がやっちゃったって顔してるのが、めちゃくちゃ可愛い。
ん?はい?あー、分かりました...リュイ王子が着いたんですね?
はいはい、直ぐにお迎えに行きますとも。

「あー!」

サササッと扉の辺りに寄ると、怯えた様子の乳母殿からニコニコしたリュイ王子を渡され、リュイ王子の示す通りにアイリス様方の側へと寄ってくと、リュイ王子がアイリス様に抱っこをせがむ。
抱っこをせがむリュイ王子にパッ!と顔を明るくしたアイリス様が直ぐに抱き上げてくださったので、皆様を邪魔しないように定位置である壁に戻ろう。
さて、玉座の間には常に侍女や侍従が十数人いる筈なのに、なんで自分しかいないのだろう?
皆同じタイミングで催したとか?
せめて一言残して行けば良いのに...職務怠慢だと侍女長に密告しとこー。

「キャー!可愛い!!
ほぅら賢者様、私の従兄弟なんですよ?
アレの血が入ってると思えないくらいに、可愛いでしょう?」

「オォー!」

ご満悦のご様子でニコニコ笑顔のまま賢者様を見てるリュイ王子の愛らしさと、なんとか騙せないかと思ってるアイリス様の愛らしさが尊い。
乳母殿にはあまりニコニコ笑顔は見せないらしいから、アイリス様がどれだけ気に入られているのかが分かりやすい。
ん?私が抱いてても笑顔だったって?
んなもん、私に抱っこされればアイリス様の所にいけるからに決まってるでしょ。

「えぇ、このクルミ色の髪がとても愛らしいですね。
フフフ、第2王子とのことは、後で話していただきますよ?
私の可愛いアイリス本の虫?」

2人の髪に触れる賢者様はブレない。
えぇ、えぇ、アイリス様もリュイ王子も同じクルミ色の髪ですもんね。
そして、やっぱり騙されてはくれない賢者様。

「ヒィッ!」

怯えたように縮こまるアイリス様をお助けしたいけど、賢者様が怖いので止めときます。
氷り漬けは勘弁してください。

「ンフフー!」

大好きなアイリス様に抱っこをされてご機嫌なリュイ王子は、賢者様の指をムギュっと握って悦んでる。
あぁ、賢者様のことも気に入ったんですね?
リュイ王子を抱く賢者様が見られるかもしれないと、賢者様ファンのアマリーに教えとこう。
きっと、鼻血を出して倒れるんだろうからチリ紙を沢山用意しとかないとね。

え?現実逃避をするな??
見て見ぬふりをしてるだけで、逃避はしてないよ?
王妃陛下が国王陛下に絞め技をかけてるけど、そんなのはいつものことだし、なんならもっとヤレ!って思ってるから止めようなんて気もないもん。
侍女失格?イヤイヤ、私は王妃陛下のお付きの侍女であって、国王陛下のお付きの侍女ではないからね?
王妃陛下のお心のままにスムーズに動いていただくのが使命なのであって、あんなにも生き生きと動いておられるのならば止めることは出来ません。
流石に殺しはしないでしょうから、あっちは放っといても大丈夫でしょ。





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