思い付き短編集

神谷 絵馬

文字の大きさ
上 下
114 / 123
最近更新。

妹が婚約することになったので、兄達が暗躍します。2

しおりを挟む
「兄上、お帰りなさい。」

かなり飛ばしたのだろう、城から借りただろう馬軍馬が疲弊しまくっているな...厩番に美味しい人参を食べさせるように指示しておこう。

「クリス...美人になったな。」

城で時折会っていたのに、言葉だけ懐かしむようにおかしなことを言い出した...無表情過ぎるし、これは末期だな。
ミシェルに会わせてやりたいが、少し間をおいた方が良いだろう。

「そうですか?
フフフ、婚約の打診が来ましたから、そうなのかもしれませんね。」

指摘はしないでおこう。
取り敢えず、さっさと話し合いをしないと...母上もあまり起きていられないからな。

「王家はアホしかいないからな...いっそ滅んでしまえば良いものを。
あぁ、そう言えば、グレマス副団長から謝罪の手紙を預かった。」

おや、グレマス副団長からの手紙?どんな内容かが気になるな。
まさか、仕掛けがあったりは...

「グレマス・クウェスティン副団長は何も悪くないのに、わざわざ謝罪の手紙を?
ありがとうございます、後で読みますね。」

うん、特に何を仕掛けられているわけでも無さそうだし、後で読んでみようかな。

「あぁ、ミシェルの婚約について、詳しく聞かせてほしい。」

手紙は侍従に預けて自分の執務室に届けておいて貰おう。
さて、兄上?案内もなく階段を登ろうとしてますが、そっちじゃないんだけど?

「兄上、父上の執務室ではなくサロンにて待っておりますよ。
母上を仲間外れになど出来ませんから...ね?」

母上を仲間外れにしたことがバレたら、確実に拗ねる。
母上が口を聞いてくれなくなるのも嫌だし、過程が分かっていなくともミシェルも追随する恐れもあることだし、話し合いに参加してもらう方が無難だよね。

「...大丈夫なのか?」

兄上、もしかして忘れてる?

「えぇ、母上が動く前にこちらで動いてしまえば良いのですよ。
皆、母上とミシェルに関しては先回りして動いてくれますから...安心してください。」

家の使用人達の母上とミシェルに対する愛は計り知れないんだから、大丈夫大丈夫。
元聖女のマリジェラも側にいるし、専属の医師も呼んでおいたし。

「そうだったな...あぁ、ミシェル、婚約などしなくともずっとこの家にいれば良いのに。」

それは皆も思ってるよ。
まぁ、いつかは誰かに嫁ぐんだろうけど、政略とかではなくミシェルが愛する人に嫁げるのが理想なんだけどね。

「相手の態度次第では?」

こっちで精査してさっさと潰す方が良いと思うんだけど、まだ幼いから矯正出来るとか言われそうで...決定的になってからじゃミシェルの評判に傷がつくんだけど、そんなことどうでも良いんだろうね。
臣下のことを嘗めてるとしか思えないよね。

「そうだな...あぁ、側近についてもだが、近衛騎士団にも辞表を出してきた。
暫くは荒れるだろうな...アイツラの自業自得なんだが、この家にも煩く集る筈だ。」

あ、予想通り近衛騎士団も辞めてきたんだ?

「あぁ、それならば既に対処してありますからきっと来ませんよ。
余程の馬鹿じゃない限りは...。」

早めに手を打っておいて良かった。
やっぱり、暴れたんだろうなぁ...近衛騎士団に属している軍馬で帰ってきたからまさか辞めてないのかと焦ったけど、鞍がついてなかったから少し安心したんだ。
それにしても、あの軍馬、かなりの暴れ馬だって聞いた馬にそっくりなんだけど、鞍無しで乗れるとか尊敬するよ。

「そうか...馬鹿でもアホでもないことを祈るか。」

別に、馬鹿でアホでも良いんだけど?

「いえ、熊太郎も熊次郎も熊子も熊美も熊助も楽しみに待ってますから、来てくださっても良いんですよ?」

皆、爪を研いでヤル気満々で待ってるんだよね。
諸々をグレイブスが聞いちゃったみたいで、あの子達にも教えちゃったんだよなぁ...使用人達の結束が固いのは嬉しいが、5頭で爛々とした目で爪研ぎしてるのはなかなかに怖かったよ?
そう言えば、誰なんだろう?
あの子達にガラス製の爪やすりをあげたのは。

「クリス、熊助とは初耳なのだが、増えたのか?」

嬉しそうだね、兄上って意外と動物好きだよね。
微かだけど、表情が現れてきてくれて嬉しいよ。

「はい、熊太郎と熊美の子供です。
ミシェルを背に乗せて、よく遊んでくれていますよ?」

熊助は、使用人達にも優しい子なんだ。
使用人に軟派野郎が絡んでいた時には、その軟派野郎のお尻にカジリついてなかなか離さなかったし、転けそうな子がいれば下敷きになりに行くしね。

「そうか...子熊の頃に見たかったな。」

熊助はもう大人の体格だから、子熊とは言えないか...戦力として数えちゃうもんなぁ。

「あぁ、サロンに熊次郎と熊子の子供がいますから、後で会わせますね。
ん?あ、兄上!あの子が熊代です。
熊代、迎えに来てくれたのか?」

少し落ち込んだ様子の兄上に、朗報。
熊代ならばまだまだ子熊だよ?
ほら、サロンの扉からヒョコッと見てるのが熊代。

[クゥォッ!]

兄上の周りをクルクル回って一声。

「はい、兄上、兄上の匂いを嗅がせてください。
熊代、この人が兄上だ。」

あ、そっか...兄上には初めて会うから戸惑ってるのか。

[クゥォッ?クキュァ!]

兄上に抱っこしてもらって、満足気な熊代。

「ふふふ、気に入った?
兄上、暫く抱っこしててやってもらえますか?」

兄上の胸にダラリと頭を預けて、気を抜いてる感じが可愛い。

「あぁ、子熊も可愛らしいな。」

熊代の背中をポンポンとして、熊代の頭に頬を寄せる兄上も癒されてるなら良いんだけど。

「爪には気を付けてくださいね。」

子熊の爪も意外と鋭くて危険だからなぁ。





*
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

連帯責任って知ってる?

よもぎ
ファンタジー
第一王子は本来の婚約者とは別の令嬢を愛し、彼女と結ばれんとしてとある夜会で婚約破棄を宣言した。その宣言は大騒動となり、王子は王子宮へ謹慎の身となる。そんな彼に同じ乳母に育てられた、乳母の本来の娘が訪ねてきて――

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...