思い付き短編集

神谷 絵馬

文字の大きさ
上 下
109 / 123
最近更新。

妹の方が良いと婚約を破棄されました。え、本当に?!1

しおりを挟む
「申し訳ないのだが、君との婚約を破棄させてもらう。」

女癖の悪い貴方との婚約を、そちらから破棄してくださるのはとても嬉しいですわ!
どんなに有効な証拠を揃えて、何人もの女性と不貞を行ったのだと訴えても、公爵家の権力でもって軽く揉み消されましたもの。
ですけれど、全く申し訳なさそうに見えないのは何故かしら?
ここへは謝罪にきた筈ですのに、こうしてソファにだらしなく座り居丈高な態度をとられることは、普段の言動から垣間見えておりましたけれど、公爵子息であるから自分は偉いと勘違いしているみたいですわね。
スペアですらない3男ですから、伯爵家を継ぐ私と婚姻させることにより体裁を保とうとして、殆ど無理矢理に結ばれた婚約でしたけれど、それを破棄してどうなさるのかしら?

「...何故でしょう?」

一応、理由を聞いておきますわね。
私にも理解できる内容ならば良いのだけれど...この方の思考回路は分かりませんわ。

「理由?あぁ、説明が必要か...君の妹君と婚約を結ぶことにしたからだ。」

「そうですか......え、正気ですか?!」

あぁ、そういう...ん?ちょっと待ってくださいませね?!
私の妹と婚約を結ぶことにしたですって??
理解できる範囲を軽々しく飛び越えないでくださいませ!
頭がおかしくなったとしか思えませんわ。

「正気に決まっている!失礼だぞ?」

「私の妹は、まだ、生後半年ですのよ!
それなのに、貴方との婚約など、たとえ公爵家のお力をお使いになられたとしても結べる筈ありませんわ。」

失礼?いいえ、貴方が馬鹿な発言をなさったのは明白なのですから、正気を疑われるのは仕方ないでしょう?
そもそも、私には既に婚約者がいたにも関わらず、存分にお力をお使いになられて無理矢理に結ばれた婚約を、理不尽にもそちらから破棄されるのですよ?
全ての責はそちらにありますのに!!
無理をして結ばれた姉との婚約を破棄なさるのに、その妹と婚約など結べる筈ありませんわ。

「君の妹君は、かの有名な魔女マグナレーダ殿の娘だろう?
我が家に利益をもたらすのは妹君の方だ。」

えぇ、たしかに、マグナレーダは有名な魔女ですし、妹の母でもありますわね...ま、私の母でもありますけれど。

私が5歳の誕生日を迎えた直ぐ後に、とある教会の孤児の中から魔女見習いが現れまして、母はその方の教育の為にと、その教会へと足を運んでおりましたの。
それから10年経って、魔女見習いがやっと一人前の魔女となられましたので、我が家へと戻ってきましたわ。
5歳以前の記憶は朧気ですし、特に手紙もなく、母は遠いところに行ったのだと言い聞かされておりましたから、10年も経てば母は亡くなったのだと理解しておりましたの。
今更、魔女見習いの教育をしていたと聞かされましても、恋しい母とは思えませんわ。
あ、生きてたのね?と、そのことはとても喜ばしいと感じましたけれどね?
父や使用人による説明が大雑把すぎましたし、母も手紙くらい送れたのではないかと思いますの。
まぁ、私のことなどはどうでもよろしかったのでしょうけれど...。
本当に今更でしたけれど、妹を生んでくださったことには感謝しておりますわ。
とても可愛いですもの。





*
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

お花畑な人達には付き合いきれません!

ハク
恋愛
作者の気まぐれで書いただけ。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

信用してほしければそれ相応の態度を取ってください

haru.
恋愛
突然、婚約者の側に見知らぬ令嬢が居るようになった。両者共に恋愛感情はない、そのような関係ではないと言う。 「訳があって一緒に居るだけなんだ。どうか信じてほしい」 「ではその事情をお聞かせください」 「それは……ちょっと言えないんだ」 信じてと言うだけで何も話してくれない婚約者。信じたいけど、何をどう信じたらいいの。 二人の行動は更にエスカレートして周囲は彼等を秘密の関係なのではと疑い、私も婚約者を信じられなくなっていく。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

処理中です...