思い付き短編集

神谷 絵馬

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私、王女なんですけど?5

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「どちら様でございましょうか?」

ん?自国の王女の馬車に誰何するって、馬鹿なのかしら?
貴方執事長でしょう?

「エスリル王女様の馬車です。
紋章を確認してください。」

紋章を見れば分かる筈だけど、もしかして惚けてるのかしら?

「エスリル王女様?はて?」

あらまぁ、とうとう耄碌したの?
それとも、意図的に惚けてるのかしら?
まぁ、どうせここで降りるしいっか!

「あら?王女である私のことをお忘れだなんて、執事長は耄碌なさっておられるようだわ。
お仕事が大変過ぎて、お疲れなのよ...そろそろ、もう少し若い方と交代なさったら?」

結構な歳だもんね...そろそろ交代の時期なのかもしれない。
うん。侍女長とお祖父様に進言しとこー。

「...何のご用でしょうか?」

あー、剥れてる...60超えたおっさんの剥れてる顔とか誰トクなのかしらね?
気持ち悪いから止めてくれる??

「お父様に呼ばれましたの。
至急、とのことでしたわよ?
あら、もしかして、貴方には知らされておりませんの?
それならば、誰に聞けば良いのかしら?」

あれ?もしかして...知らされてないの?!
それは驚いたわ!!周知しておきましょうよ。

「...そうでございましたか!
確認して参りますので、少々お待ちくださいませ。」

あら、ここでは待たないわよ?
一応釘指しとこうかな?

「そうね...部屋で待っているわ。」

だから、部屋まで呼びに来てくださいませね?
来なかったら、この時間なら謁見中だろうからこちらから乗り込もうかしらねー。

「......かしこまりました。」

仕えている王族に対して渋々とか...子供か!

「本当に、耄碌してきたのかしら?」

少し心配になるわね。
この国は大丈夫なのかしら?

「執事長は、元々お嬢様のことを嫌っておいででしたから...。
そうですわね...ウフフ、顔、握り潰して差し上げようかしら?」

あらら、出てる出てる。

「ミリー?出てるわよ?」

漏れたら大変!

「...失礼いたしました。」

まだ漏らさないでね?
我慢させるのももう少しだけの予定なのよ?

「ごめんなさいね?
ミリーにも辛い思いをさせているわ。」

辛いわよね...でも、ミリーにしか頼めなかったの。

「いえ、お嬢様の謝罪は必要ありませんわ。
まぁ、王家の方々や使用人の方々からは誠意の篭った謝罪をいただきたいですが。」

うーん、あの人達が誠意の篭った謝罪とかするかしら?しなさそうよね。

「そうね...。」

あれ?ここ、私の部屋よね?
貴女は誰?なんでここにいるのかしら?

「あのー?」

何故か、私の部屋には、私の誕生日にお祖父様からいただいたオルゴールを勝手に抱いている少女?がいましたの。
はぁ?!勝手に人様の物を抱いて、何をしているのかしら?
困惑してるって顔でこっちを見ているけど、一番困惑してるのはこっちだわ!!
せめて名乗りなさませ!

「あら、どちら様かしら?
ここは私の部屋なのだけれど...何をしているのかしら?
貴女の持っているそれは、私の大切な物よ?
勝手に触らないでちょうだいね?」

普通、部屋の物に勝手に触る?
しかも、まるで自分の物かのように抱いて...不愉快だわ。

「この部屋を好きに使っても良いと...国王陛下より賜りました。」

私の部屋なのに勝手に賜れるか!
アイツ、誰の部屋かとか確認せずに適当に承諾したとか言わないわよね??
もしもそうならば、本当にふざけてるわー。

「ミリー、取り敢えず捕らえておいてもらえるかしら?
後でお父様に確認するわ。

さて、私の物が壊されていないかとか確認しなければならないわね。
全く...主のいない間に勝手に人を入れるなんて、なんという侮辱なのかしらねぇ?」

本当に、死に急いでいるとしか思えないわ。
簡単には殺さないけど...。

しかも、この子未だに名乗らないわね!
あ、私も名乗ってないわ。
身分が上の者から名乗るのが普通だったかしら?
いや、私はどちら様?って訊ねたし、それでも名乗らないこの子がおかしいのよね?
うん、そうよね。

「そうですわねぇ...。」

ハァー、こっちもこれも触られてるわ。
壊れてはないけど...勝手に触られたのだと思うと気持ち悪いわね。
ドレスとかは、体形が違うから着れないだろうけど...あぁ、勝手に手直しする可能性もあるわね。
一応確認しておきましょう。

「ん?勝手に、他人のドレスを貴女の体形に合わせて直したのかしら?
あらあら、こちらも...これもだわ......ここの警備は本当に最低ね。
執事長の様子がおかしかったのは、きっと、これを知っていたからだったのね?
処罰確定だわ。
あぁ、勿論勝手に人様の物を触れた貴女もよ?
例外は無いわ。」

ハァー、お祖父様が私のデビュタント用にと仕立てたドレスまでサイズ直しされてるわ...これは、お怒りになられることでしょうね。
ハァー、今更震えないでもらえるかしら?
殺しはしないわよ。





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