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3:冒険者ギルド

ギルド再び。4

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「リンダール、ガルド、どうやら、この子はまだ大丈夫そうだ。」

「そうでしょうね。
クリスは、なんだか大人びてるんですよねー。」

「あぁ、今回はどんな理不尽な目に遭うのかと緊張していたが、この子は子供なのに受け答えもしっかりしていて、話しやすい。」

あー、子供って急に泣いたり笑ったり喚いたり怒ったり悲しんだり、何故か無視してきたり、突然奇声を発する子もいるし大変だもんね。
ま、ワタシはそういうのは無いと思うよ?
中身が、外見よりも少し大人に近いからね。

「うんうん、そうなんですよねー。
因みに、クリスはクルスク家の血筋らしいですよ。」

「クルスク家の?!」

「昨日、クリスを森で保護したっていう報告をしに大官邸に行ったら、代官様にそう言われたんです。
クルスク家の血筋って、何故なのかは分からないけど声に出さなくても目と目で通じ合うことが出来るらしくて、クリスとも出来るみたいなんですよねー。
代官様曰く、
『クルスク家の当主である自分がクリスのことを認識したから、今後は鑑定したらクリス・クルスクって出るようになっていると思うよ。』
とのことでした。
ギルドマスターが鑑定して確認されますか?」

「いや、鑑定は...あー、一応、身分を確定させるためにもしといた方がいいのか?
君、あー、クリスと呼んでも良いか?」

「うん、いいよ。」

「では、クリス、名前と年齢のみの鑑定をしても良いか?」

「うん、どうぞ?」

「ありがとう......ハァー、まじか...。」

「ん?」

「あー、ギルドマスターのことは気にするな。
クリスはそのままで大丈夫だ。」

「はーい!」

アハハ、ワタシを鑑定して直ぐギルドマスターが頭を抱え始めたんだけど、大丈夫?
ガルドさんは気にするなって言うけど、ブツブツと呟きながら髪の毛をグシャグシャにしてるのは止めなくてもいいの?
もれなく鳥の巣が出来ちゃうと思うんだけど?

「相変わらず権力に弱いよね...一応このギルドのトップであるギルドマスターをやってるんだから、もう少しうまく付き合わないといけないのに...。」

「...ん。」
-一応権力は持ってるけど、ウチは理不尽なこととかしないのに...いつもこんな感じで悩んでる。-

-あー、ギルドマスターさんって権力に怯えてる感じなの?-

-うん、多分?-

「便利よねぇー、それ。
ザイル君、クリスちゃんとナイショ話ししてるでしょ?」

「...ん、楽。」
-目を合わせないと出来ないけど、話さなくてもいいから、楽。-

ティルダさん、これはめっちゃ便利です。
ザイルさんと目が合っていれば、声に出さずとも言いたいことが理解できるので楽ですよー。

「ギルドマスター、ザイルは代官の息子ですが、成人してからは家を出て冒険者になっているんですよ。
因みに、僕も領主の息子ではありますが、成人して後継者候補から抜けて正式に家を出ています。
そろそろ慣れてください。」

「慣れろ?...いや、無理だ。
こっちはただの平民なんだぞ?
どうやっても慣れるなんて無理なんだよ。」

「いえ、僕らが拠点を変えることはないので、ギルドマスターは僕らに関しては早く慣れてください。
敬語を使わずに、ただの冒険者とギルドマスターとして普通に話せるようにはなったんですから、大丈夫ですよ。」

「う、うぅー...分かった。
頑張ってみるよ......。」

「はい、お願いします。」

ギルドマスターったら、リーダーさんに言い包められてるよー。

「で、説明はどこまでしたんだったか?」

「2人組についての話しですね。
彼らが依頼を受けた街のことと、クリスの住んでいた町のことを話していた筈です。」

「あー、そうか...なら、依頼内容について話すぞ?」

「おねがいします。」

ギルドマスターが少し落ち着いたので、話しを戻してくれるみたい。
えっと、グシャグシャの髪の毛はそのままでいいの?
いや、話しの腰を折るのも気が引けるし、一通りの話しが終わってから教えた方がいいかな?





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