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2:女のバトルと男のバトル

代官邸です。10

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「クリスちゃん、そのイモムシ君の周りに、黒いモヤモヤしたものが見えているのね?」

「うん。イモムシのからだにまとわりついてる。」

「ウフフフフ!私の出番ね!」

あ、忘れてたけど、汗を流しに別行動していたルーザさんも合流してます。
任務が終わったら、汗を流した後に母様から貰った服に着替えてから来るのがいつもの流れなんだって。
フリフリのフリルやレースがあしらわれた、薄い黄色の...たしかドレスシャツ?って名前だったと思うんだけど......まぁ、可愛いゴージャスな七分袖のシャツを着てます。
そして、向こうが透ける程に薄い深緑色の布が段々と5層になってて、足首まであるロングのスカートを着てるの。
膝までが深緑色で多分5層あって、少しずつ長さが変わってるから色が薄くなってく感じ?で、足首の辺りは渋めの黄緑色。
シャツのフリルもスカートも、ふんわりと揺れ動いててスッゴク可愛い!

あ、ルーザさんの可愛らしさを説明してる場合じゃなかったよね...イモムシ、ごめん。
謝るから、私の手の上でウニョウニョしないでくれる?
めっちゃくすぐったいんだけど!

[モヤモヤ?]

「さぁ!イモムシ君のモヤモヤを祓っちゃおうね!」

「うん。おねがい!」

何をしようとしてるのかよく分からないけど、このモヤモヤがウゴウゴしてると視覚的にもかなり気持ち悪いから、さっさと解決すべきだよね!
ルーザさん、一思いにバシッとお願いしまーす!

[ヤダヤダヤダ!コワイヨォ!]

「ルーザ、なにするの?」

短い手?足?を器用に使って、ムンクの叫びばりに悲愴な顔をするイモムシが、なんだかお茶目に見えてきた。
エメラルドみたいに綺麗な目が涙を湛えてるので、多分イモムシの言葉は私にしか聞こえていないだろうから、代わりにルーザさんに聞いてあげよう。

「ん?黒いモヤモヤは悪いものだから、光魔法で祓うのよ?
あ、少しピリピリするだろうけど痛みは殆ど無いわ!」

[ホント?イタクナイ?ナラ、オネガイシマス。]

「イモムシ君も大人しくなったわね。
じゃあ、祓うからね?」

ルーザさんは、私の手の上にいるイモムシに手を翳して、何事か呟きながら柔らかい輝きの光を発生させると、それをイモムシの周りに蠢くモヤモヤに当て始めた。

[ア...ピリピリスルゥ......。]

「イモムシ、だいじょうぶ?」

[ピリピリガマンシタラ、ワルイノ、ナクナルンデショ?
ボク、ガンバル!]

多分ピリピリするのがちょっとどころじゃなく、痛くてなのか気持ち悪くてなのか...それは分からない。
けど、堪えられないのか身体がフルフル震えてるのに、必死に目をギュッと瞑って我慢しててかなり健気。
とっても純粋そうなイモムシが、何故だか可愛く見えてきた。
こういうニョロニョロ系苦手なんだけど...。

「はい、そろそろ仕上げね?」

[ア......チクチクシテタノ、ナクナッタ!]

「これ、聖水。飲んでね?」

[アリガトウゴザマス!
イタダキマスデス...ウンマーイ!]

なにやら高価そうな瓶から、私の手に少しだけ出した普通っぽい水はどうやら聖水らしい。
チクチクしてたのが無くなって喜んでたイモムシが、律儀に頭を持ち上げてからコクコクと上下に振ってお礼を言ってるんだけど、それお辞儀のつもりなの?
そして、聖水に気付いてから直ぐに飲んだんだけど...聖水って美味しいらしい。
見た目は、普通の水っぽいんだけどなー。





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