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リカルドに突き飛ばされて私が階段を転げ落ちたと聞かされた日から、お義父様とグレイ様は毎日神殿へと通い私の回復を願うための祈りを捧げ、毎日我が家に訪れては門前払いをされながらも謝罪をなさっておられたそうです。
そんなお2人の真摯な態度を見ていた父は、私が目覚めた5日後に、私の目が覚めたことを伝えることにしたのだと仰っておられました。
連絡を受け取ったお2人は、直ぐに父や母へと正式に謝罪したいと幾度目かの申し出をなさってこられたのだそうですわ。
その書状にて、被害者である私への謝罪は私の怪我が回復して落ち着いて、被害者である私の了承を得てからさせてほしいと希望されたそうなのです。
父は、
『伯爵はこんなにも真摯で気遣いの出来る方なのに、何故息子の教育を間違えたのか?』
と不思議そうにしておりましたわね。

それに、怪我は殆ど回復したけれども顔や足などに少なからず傷跡が残ると聞いたときには、傷跡を治すことの得意な方を見付けてきてくださって、お蔭で顔の傷跡は殆どなくなりましたの。
傷跡を治すことの得意な方でもやはり全ては治せず、顔や腕などの見える場所を優先させた治療をしていただきましたので、ドレスなどで隠せる場所の...お腹や背中、太腿の辺りにはまだ残っておりますのよね。

あぁ、そうそう、その時のリカルドは、国王陛下や王妃陛下により、今回の事件についての沙汰が決まるまでは自室にての謹慎を言い渡されていたのだそうです。
お義父様は、家庭教師を呼びマナーなどを学び直させると同時に、窓には全て内側から開けられない鍵を新たに設置して、扉の前には監視のために護衛を置いて部屋から出られないようにしていたそうですわ。
王妃陛下の姪である公爵令嬢を害そうとしたことも立派な罪ですけれど、王妃陛下の従姉妹の娘である私を害したことは紛れもない事実ですから、衛兵見習いとして辺境へと送る案もあったのだと聞きました。
けれど、リカルドがまだ成人前だということもありましたし、第2王子殿下の命令により行ったことであると証明されたこともあり、王都での衛兵見習いをすることとなりましたのよね。

「そもそも、責任を取らせる為に結ばせた婚約を、狼藉を働いた本人がきちんと理解出来ていないなんて愚かにも程がありますわ。
伯爵夫人は、どんな教育をしていたのかしらねぇ?」

「普通に、貴族として当たり前の教育をしておりましたわ!!
......そもそも、あの時のリカルドがしたことは、元第2王子殿下の指示により行ったことですわ!
ですから、あの子がしたことではありませんわ!!」

「えぇ、確かに、元第2王子の指示だったわねぇ?
けれど、たとえ王族の指示があったとしても、階段から人を突き落とすなど許される訳がありませんわ!

もしかして、貴女は許せるとでも??
自分の、大事な可愛い5歳の息子が、王族の理不尽な指示で...それも人違いで、殺されかけたとしたら??!」

「そんなの、絶対に許しませんわ!!!
そんなことが許されるだなんて、そんなの、王族による横暴でしかないわ!!」

あらまぁ、王妃陛下にのせられて、お可哀想ですこと...まぁ、私は止めませんけれど。
こうして、勝手に自爆していただけるのならばとても楽ですものね。

「えぇ、これは、許されざる横暴ですわ...本当に理不尽なことですわ!
けれど、第2王子を諌めることも出来た筈なのに、きっぱりと断ることも出来た筈なのに、その横暴で理不尽なことを王族の指示であるから仕方ないことなのだと...そう判断して、実際に実行したのは、貴女の息子であるリカルドよ!!!」

「あ......ぁあ、それは、その、えっと...でも、リカルドは、きちんと償った筈ですわ!!」

「リカルドが!きちんと!償ったですって?!
衛兵見習いを1年しただけで、償ったことになどなりませんわ!!
レフィーナやその家族のことを、その心を、どれだけ愚弄いたしますの?!!

私共王家は、レフィーヌの受けた傷の重さや突き落とされたことによる階段への恐怖心という様々な要因を加味して、リカルドの生涯をかけて償わせることと決めましたの。
そして、両伯爵家との話し合いにより、レフィーヌとリカルドとの婚約が結ばれましたわ。
ですが、貴女の息子であるリカルドは、自分が殺人未遂を犯した犯罪者であるということを忘れ、最低の行いでもって王命での婚約を反故にしましたのよ。
本来であれば、そのような馬鹿を輩出した伯爵家は即刻取り潰し、領地を王家へと返還させ、一族郎党連帯責任として強制労働や財産没収などの処罰を与えますわ。
そして、当事者であるリカルドと男爵令嬢の2人には強制労働を課してレフィーヌへの賠償をさせ、返還された領地から一部をレフィーヌ個人へと与え、賠償とするところですのよ?」

「そ、そんなぁっ?!
その女は、い」

「まさか、貴女は、被害者が生きているのだから構わないでしょうとでも言うのかしら?」

「だって、その女は普通・・に生きてるじゃないの!!
そもそもリカルドは、ぶつかって落としてしまっただけで殺してないわ!!!」

「貴女、本当に馬鹿なのね...?」

「ぬぁっ?!
ば、馬鹿ですってぇ?!!」

憐れむ目で見られるのは、当然だと思いますわよ?
義母の発言はあまりにもお粗末で、ろくでもない教育を受けたのだと自ら喧伝しているようなものですもの。





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