阿呆共の集い

神谷 絵馬

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「さて、学園長に用があって来たのだが、これは何の騒ぎかな?」

「王太子殿下!
このような場に、どうされたのですか?」

「?えっと...済まない、君はどちら様だったかな?」

「はい?私は、貴方の側近です!
忘れたなんて、」

「君が私の側近??
私が、側近の顔を忘れるとでも思っているのかな??」

「そうですよね、冗談にしては質が悪いですよ!王太子で」

「君が側近候補だったのは、5年も前のことだよね?
それも、失態続きで半年ともたなかった筈だ...私はきちんと覚えているとも、名前は覚える価値もないからと忘れてしまったようだがね。
まだ貴族社会に残っていたんだね...君のご両親は、馬鹿なのかな?
あれだけの失態をしておいて、廃嫡していないなんて恐ろしいね。」

「?!何を言っているんですか??!」

「あ、口を開かないでくれる?
まるで馬鹿丸出しだから...そもそも、謹慎してる筈じゃあなかったかな?」

「なっ?!」

「あ、学園長!
丁度良い所に、詳しい説明をお願い出来ますか?」

にこりと底冷えのする笑みであしらう王太子殿下が怖いです。
そして、学園長を見付けたときの眼光が鋭かったなぁ...学園長、ご愁傷さまです。
横にいる学園長が小刻みにフルフルと震えてますね。
隠密してる私には何も出来ませんし、目をつけられたくもありませんから...頑張ってください!!

「私も途中からしか知らないんじゃがの?
それでも良ければ、説明をしようかのぉ?
王太子殿下、後悔しても知らんぞ?」

「えぇ、学園長がご存知のことを教えてください。」

「ふむ、分かったよ。」

王太子殿下に促されてため息を1つ吐き、話し始める学園長。
そんなに話したくないの?

「そこの阿呆2人の脳内がお花畑での?
変な薬でも飲んだのではないかと疑うくらいには、中身のない阿呆丸出しの会話を続けておったのだよ...。」

え、まさかそれがこの場の説明? 
まぁ、付き合いが長いらしい王太子殿下ならば分かるのかな?
さっきよりも目付きが怖いんですけど...これって大丈夫なの?

「相変わらず説明が下手ですね...学園長?」

「私に説明を求めた君が悪いのだろう?
説明はどうにも苦手でのぉ...。」

「それもそうですね...そろそろ出来るのではと期待したのですが。
では、こちらのレディにお願いしましょうか?」

ん?レディって、もしや私のことでしょうか?
いやいや、私はちゃんと隠密してるし、きっと後ろにいるご令嬢ですよね?
ほら、後ろに...は男しかいない?!
え、嘘でしょ?!
ハッ!..........うわぁ、王太子殿下が素敵にニコニコしてらっしゃるわ。
こんなにも目が合うのは何故かしら?
私、ちゃんと元々薄い気配をもっと薄めて隠密してるのに!
あぁ、背中の汗が半端ないのですが...誰か変わって。

「おや?聞こえていないのかな?」

「王太子殿下?そちらには、ご令嬢は誰もおりませんが?」

「ん?いるじゃないか...ほら、ここに。」

「ヒェッ!降ろしてくださいませ!
どうか、お願いいたします。
降ろしてくださいませ!
どうか、お願いいたします。
降ろしてくださいませ!」

「触るだけでは理解してもらえないかと思って...突然抱き上げてしまって、申し訳無いね。」

「はぅ...。
こちらこそ、デビュー前の子供でございまして、レディだなんて呼ばれたことがありませんでしたので、全く気付かずに申し訳ございません。」

「あ、そっか、まだデビュー前か...それなら気付かなくともしかたないね。
驚かせてしまったようで、済まない。
説明をお願いしても?」

「はい。」

王太子殿下のお申し出を、そこにいることをバラされてしまった子爵家の末っ子如きが断れる訳がありません。
たとえ、デビュー前の小娘であることを知っていて、それでもしれっと突然抱き上げてくるような方であっても、立太子なされた王太子殿下ですもの。
あぁ...どうして気付かれたのだろう?
うーむ、王太子殿下の侍従さん達にもバレなかった私の隠密は完璧だと思っていたのに...もっと修行をしないといけないなぁ。

「まず、私はこの学園の生徒ではありますが高等部の生徒ではありません。
母方の伯母である王太子妃殿下より依頼がございまして、こちらにおられます第3王子殿下へと突撃なされておりました不穏分子の調査をしておりました。
こちらが、王太子殿下へと提出する予定であった報告書です。」

「そう、君がアリシーラの言っていた姪っ子ちゃんなんだね...フフフ、やっと会えたな。
あ、ありがとう。
読みながら聞くから、どうぞ続けて?」





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