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6 : 裁判を終えて...待ち人の元へ参りましょう。

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じぃやが来てくださらなかったら、スリゼルの服がズボンだけになるところでしたわ。
じぃやに撫でられて嬉しそうに尻尾をフリフリとしながら、自分の身体をじぃやにスリスリしている姿が、可愛いわね。
スリゼルの周りの空気がほんわかとしていて、本当に和むわ。

「まだズボン1着しか決まってませんものね。
まずは、あのズボンに合うシャツを決めなければなりませんわ。」

「ねぇ、服ってさ?僕、1人で着れるのかな?」

「...あ、その問題があるわね。
スリゼルのお兄さん達はどうしてますの?」

「えっと、獣化しているときの着替えは、人化した奥さんが手伝ってたよ。」

「それなら、貴方に奥様が出来るまでは、お兄様や私、じぃやを含めた使用人達が手伝いますわ。
女性である私やメイドさんのお手伝いでは恥ずかしいかしら?」

「うん、やっぱり女の人はちょっと恥ずかしいから、グレイシオとかユークリスさんに手伝ってもらう!」

「はい、私もお手伝いいたしますね。」

「えへへ、ユークリス、ありがとう。」

スリゼル...そうよね、狐さんが自分で服を着るなんて難しいですわよね。
肉球がプニプニしている貴方の手では、きっとボタンが止められないわ。
やっぱり、お兄さん達も家族の手伝いが必要なのね。
スリゼルも男の子ですもの...私やメイドさんでは嫌よね。
ここは、同じ男性のお兄様やじぃやにお願いするのが一番ですわね。

「あ、これ、動きやすそう。」

「シンプルですし、普段使いに良さそうね。」

「そうですね。
こちらのベストを合わせれば、外に出掛けることも出来ますよ?」

「まぁ、そのベスト!とっても格好良いわ!
ベストの色は、ズボンと合わせましょう。
シャツの色は、白と生成りのどちらが良いかしら?」

「うーん、白は眩しいから、生成りが良いな。」

「それなら、生成りにしましょう。」

モフモフの可愛らしい手で、1つのデザイン画をポムポムと叩くスリゼルの目が輝いております。
肩回りに複数のタックが入っていて、前側よりも広くなっておりますのね...他のものよりもボタンが多くて小さめですけれど、着替えはお兄様やじぃやが手伝われるのですから、きっと大丈夫ですわね。
ただ、外出するにはジャケットなどの羽織ものが必要なのですが、ジャケットって肩回りが動きにくくなりそうですから悩むわよねぇ。
えっと?......ねぇ、じぃや?そのベストって、お兄様のデザイン画ではありませんこと?
まさか、お兄様もスリゼルの服をデザインなさっておりましたの?
お兄様って、色々と多才すぎてなんだか憎たらしいですわね。
でも、とっても格好良いのよねぇ。
きっと、スリゼルに似合うと思うわ!
うん、お祖父様とお兄様、誰のものでも構わないわよね。
スリゼルが格好良くなるのですもの。
...お揃いのジャケットをお兄様用に仕立てたら、もっと喜んでくださるかもしれないわよね?
じぃや、もしかして、このベストとお揃いの人用のジャケットのデザイン画がありませんか?
あぁ、やっぱり...お兄様ったら、こっそりとお揃いのデザインをされてましたのね?
もう、お兄様のジャケットとスリゼルのベストをお揃いで作らないといけませんわね。
とても格好いいし可愛いから良いけれど、少し妬けますわ。





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