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4 : 成績が良いのは王子妃教育の賜物ですわ。

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───ガチャッ───

「ただ今、戻りました。
筆跡鑑定の出来る者も到着いたしました。」

「こちらへ。」

「「はい!」」

大きめの木箱を両手に抱えた衛兵さん達が、王城の文官さんを伴って戻って参りましたわ。
これから再開ですのね...。
あら?皆様席に戻られておりますのに、お兄様はまだ戻られませんの?

「お兄様、お席にお戻りくださいな?
お兄様がここにいては、裁判が再開出来ませんわ。」

「ティリー、僕達のことは心配しなくて大丈夫だから、お前のしたいようにしなね?
お祖父様も僕も、何よりもティリーが大事なんだからね?」

「はい、分かっておりますわ。」

お兄様、とてもお優しい声音で、私のしたいようにしても構わないと仰ってくださるのは嬉しいですわ?
けれど、それは私の頬をムニュムニュしながらでなければ言えないことなのかしら?
淑女の頬をたとえ家族と言えど、ムニュムニュと揉むなんて...無遠慮過ぎますわよ?
せめてお家の中だけにしてくださいませんか?
私にも、令嬢としての体面がございますのよ?
......もうっ!そんなに蕩けた笑顔をするなんて、可愛い過ぎますわ!
お兄様ったら...萌えぇーですわ!!

「それでは、裁判を再開する。」

「押収したその者のノートなどはここへ...筆跡鑑定をする文官はこちらに...。
こちらが、貴方に鑑定してほしい手紙になります。
署名の字を鑑定して、報告を。」

「こちらが家から押収してきた物ですが、母親や父親の物もあると思います。
全く整理整頓されておりませんでしたので、片っ端から全て持って参りました。」

「構いません、私達の方で文字を見て仕分けますので...。」

「よろしくお願いします。」

「では、少々お時間をいただきます。」

「構わぬ、始めよ。」

「「はい!」」

これからまた待たなければなりませんのね...。
まぁ、騎士団には騎馬が常駐しているので馬が使えますけれど、衛兵さん達は基本が徒歩ですから仕方ありませんわね。
退屈ですけれど、私の無実を証明する為ですもの...待ちましょうか。

「お前らはっ!フェリスの家に不法侵入したのか?!
誰がそんな許可を出した!!」

「...陛下ですが?」

「ぐぅ...!
何故、家人であるフェリス達を同行させないんだ!!」

「...陛下が家人を同行させるようにとの指示をされませんでしたので、命じられた私達だけで参りました。
そもそも、裁判にかけられている罪人を裁判の場から出すことは、あり得ませんが?」

「フェリス達が罪人だと?!!
罪人はあの雌狐の方ではないか!!!」

「今回、陛下より私達が命じられたのは、その女が行った署名の偽造についてを鑑定する為のノートなどを探すことです。
この場合は、その女が容疑をかけられておりますので、罪人はその女となります。」

「痴れ者が!!恥を知れ!!」

「第2王子、お前は黙っておれ!
衛兵の言うことは事実である。
鑑定の邪魔をするでない!」

「うぐっ!父上もあの雌狐の肩を持つのですか...!!
こんなに心優しいフェリスを罪人呼ばわりするなんて!!
父上とて許せません!!」

「...第2王子、お黙りなさい。
それとも、その者達と同様に、捕縛されますか?」

「王妃ぃー!!!」

「衛兵!その阿呆も捕縛して猿ぐつわをさせなさい。
これでは、五月蝿すぎて進められませんわ。」

「なっ?!何をぉうぐぅん!!!んぅヴ!!」

「鑑定が終わるまで、そこで大人しくお待ちなさい。
貴方は、駄々をこねる子供ですか?
恥を知るのは貴方の方よ!」

今は、その方の署名偽造という罪についての検証中ですのに、一々突っかからないでいただきたいわ。
事件の証拠を探す為に犯人の家に踏み込むのですから、衛兵さん達は決して不法侵入ではありませんわ。
こんなことは一般常識ですのに...殿下レベルのオツムでは、そんなことも理解出来ませんのね。
衛兵さんが、丁寧に言葉を尽くして説明されてますけれど、逆上するだけで無意味ですわね。





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