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4 : 成績が良いのは王子妃教育の賜物ですわ。

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証言の為に前に出てきていた皆様が元の場所に戻られて、勘違い殿下による断罪...という名の裁判が続けられますわ。
今度は何を語られるのか私には分かりませんけれど、そろそろ疲れて参りましたので、パパっと終わらせましょう?

「この女は!学園の教授陣に命じて、試験内容を事前に入手していたのです!」

「...何か証拠はあるのか?」

「はい!!こちらに、この女が書いた手紙があります!!
学園長??こんな事が罷り通ってきたなんて、これは由々しき事態ですよ?!」

私が試験内容を事前に入手?どうしてそのような面倒なことをしなければなりませんの?
え?そんな黄色い紙で、手紙を書いた記憶がありませんが?
書いていない手紙なんて、どこにも存在しないものをどうやったら入手出来るのかしら??
ちょっとその手紙、見せていただきたいわ!

「手紙ですか...それはどうやって手に入れられたのですか?」

「グレーフィル教授の落とし物を拾ったらこの女が教授に試験についての便宜を命じる手紙で、処遇に困ったフェリスから相談を受けたのです。」

「グレーフィル教授の落とし物だと分かっているのに、何故中身を見られたのですか?」

「そっそれはぁ、そのぉ手紙がぁちょぉっと開いててぇ、見えちゃったんですぅ。
いっつも次席のぉユーティリカがぁ、そんな事していたなんてぇ、フェリスぅ、びっくりしましたぁ。」

あぁ、グレーフィル教授に宛てられた手紙なの...それなら、確実に私ではありませんわね。
私、グレーフィル教授の授業を採っておりませんもの、これについては学園長も両陛下もご存知ですし、何を言われても大丈夫ね。
それから、平民の貴女が公爵令嬢である私を、許可なく呼び捨てですか?
それに、いつも次席って...きっと馬鹿にしているのよね?
万年補講受講者のフェリスさん?

「グレーフィル教授、どういう事ですか?」

「...学園長、その手紙は、確かに...試験前日に私の教授室宛に届けられた物ではありますが、ユーティリカ様からの物ではありません。」

「そんな言い訳が通じると思うのか?!!
この手紙にユーティリカと名が記されている!!」

「それは、ユーティリカ様の字ではございません。
私では信用していただけないかと存じますので、陛下に見ていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ!そうしよう!!
父上!これが雌狐の本性です!!」

グレーフィル教授は神経質そうなぴっしりと調えられたオールバックの銀髪をした、一度も目を見せたことのない細いつり目の方です。
にこりともせず、真面目に真摯に問答をされておりますが、少しイライラしてらっしゃいますわね。
教授は見た目通りに神経質で、曲がったことの大嫌いな方ですもの...不正をしていたと言われて、傷付くと同時にお怒りになられているのね。
そうね、陛下に見ていただいた方が早いわね。
何を言ってもこの阿呆殿下は納得しないでしょうから。
ありもしない勝利を確信しているのでしょう。
鼻息荒く陛下の元へ手紙を持っていくと、その場で腕を組んでふんぞり返ります。
その態度、王妃陛下の不況を買っているわよ?
至近距離で睨まれているのに、よく気付かないでいられるわよね。
先程から頓珍漢な事ばかり言っているのに、随分と偉そうだ事。
さて、本当に手紙を書かれたのは誰なのかしら?

「??これは、手紙の字も署名の字も、ユーティリカ嬢の物ではないな。
それに、中身と署名は別人によって書かれているようだが、何故だ?」

「みっ自らの字でバレないように、侍女にでも代筆させたのでしょう?」

「それならば、署名までその者が書くだろう?
グレーフィル教授、この手紙について心当たりはあるのか?」

「はい、この手紙を書かれたのは、ルセーヌ侯爵家の長女であるマーベル嬢です。
署名を書いたのは、そこのフェリス嬢ですよ。
この手紙は、ルセーヌ侯爵家の封蝋がされた正式な書状でしたから、確かです。」

「何を?!我がルセーヌ侯爵家が!
そのような不正をする筈、無いだろう!!」





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