上 下
12 / 23
可及的速やかに、離婚したい。

2

しおりを挟む
あぁ、お姉様は、お姉様が3歳の頃に馬車の事故により亡くなられた先妻様とのお子ですの。
その後、お姉様が5歳の頃に、子は望めぬだろうと言われながらも政略の為にと後妻となった私の母が、お姉様が6歳になられた頃に
『可愛いリディに妹を産みますの!』
と、周囲の反対を聞こえない振りをしてまで押し退けて、渋るお父様を脅は...説得して、私を産んで直ぐに儚くなられました。
2度も母を亡くしたお姉様は、2度も妻を亡くし府抜けてしまったお父様のお尻を、ぐずる赤子の私を抱きながらも幾度も平手打ちして奮起させ、時には姉として時には母として私を見守り愛してくださいましたの。

特に変な性癖もなく黒い噂もなくいつも紳士なお父様には、2度も妻を亡くしたというのに幾人もの未婚の女性から婚姻の申し出が度々ありました。
ですが、妻を3度も失うなんて耐えられないからと、私達が2人共成人したのにも関わらず未だに愛人すら作らずに逃げ回っております。
それぞれの母に似たお姉様や私を溺愛してくださっておりまして、権力を濫用し私と婚姻しようとなさるあの男の家へと直接乗り込もうかとさえしておりましたのよ?
今回は一応私の希望もありまして婚姻式を行うことにいたしましたので、執事長と協力いたしまして家の執務室に閉じ込めて参りましたの。
お父様に動かれてしまうと、王妃様と立てた計画が狂いますわ。

「まぁ!そうなの?
それは安心ね!良かったわ!」

「このこともお話ししたかったのに、お姉様ったら逃げるのだもの...。」

「だって、私は貴女を助けてあげられないのだもの......。」

あの男の家はお姉様の嫁ぎ先よりも高位ですものね...私を助けられないなんてこと、仕方ありませんわ。
けれどね?お姉様に会えるだけでも話せるだけでも、私は幸せなのですわ。

「お姉様がお話しを聞いてくださるだけで、とても助かりますわ。」

「本当に天使なんだから!
あぁ、今からでも遅くは無いわ!
やっぱり、可愛い妹をあんな馬鹿共に渡すなんて嫌よ!
無理矢理に行われた婚姻の無効を申し立てますわ!」

「それなら、陛下が代表となって申し立ててくださってる筈ですわ。」

「...えぇ、それは知っているわ。
でもね?妻のお気に入りを護りたいと願う陛下の申し立てだけよりも、貴女を溺愛している姉である私の申し立てもあるということが重要なのですわ!
ウフフ、今に見てらっしゃい!
陛下に楯突いたとしても、古くからある家柄だから大丈夫だと思ってらっしゃるようですけれど、目にもの見せて差し上げますわ!」

「王妃様と立てた計画にはありませんでしたけれど、お姉様が申し立ててくださるなんてとても嬉しいですわ!
ただ、お父様も申し立ててくださってはいるのですが...握り潰されているようなのですわ。
もしかしたら、お姉様の申し立ても握り潰されてしまうかもしれませんわ。」

「あら、そうなの?
それなら、陛下を通してなんとしてでも申し立てをいたしましょう。
それで、お父様にも陛下を通して申し立てをしていただけば良いのですわ!
お父様は、陛下を通すということが権力の濫用になりはしないかと考えているのでしょうけれど、元々はあちらが権力を濫用なされておりますものね。
きっとお母様もそれを望んでおられる筈ですもの!」

部屋に入って早々に、重苦しくて私の体型に合わない既製品の婚礼衣装を脱ぎ捨てて、王妃様直属の文官の制服を身に付けた私を抱きしめてくださるお姉様。
あの男の家が勝手に用意した婚礼衣装は、裕福な商人が良く利用する店の既製品だったからか、お腹はユルくて同色のコルセットを上から締めなければならなくって大変でしたし、胸の所が少しばかりキツくて...式の間ずっと、余計な動きをすれば縫い目がハチ切れるのではないかと心配だったの。
せめて、事前に試着させてもらって、多少の手直しくらいしてほしかったわ。





*
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~

紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの? その答えは私の10歳の誕生日に判明した。 誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。 『魅了の力』 無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。 お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。 魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。 新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。 ―――妹のことを忘れて。 私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。 魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。 しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。 なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。 それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。 どうかあの子が救われますようにと。

愛する貴方はいつもあの子の元へと駆け付けてしまう~私を愛しているというのは嘘だったの?~

恋愛
熱烈なアプローチを受け、アッシュと付き合う事になったシェリー。 今日もアッシュとのデートのはずが、待ち合わせに現れたのはアッシュと幼馴染のミレル。 いつもそうよ。 アッシュ。あんなに私を愛していると言ってくれたのは嘘だったの?

夫に隠し子がいました〜彼が選んだのは私じゃなかった〜

白山さくら
恋愛
「ずっと黙っていたが、俺には子供が2人いるんだ。上の子が病気でどうしても支えてあげたいから君とは別れたい」

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

思い付き短編集

神谷 絵馬
ファンタジー
読みやすいように、書き方を変えてみました。 以前のものは、後々編集していきます! ただただ思い付いたお話しを書き綴っていきます。 順番通りとはいかないかもしれません。 取り敢えず完結したお話しに関しては、更新してから1週間程しましたら、(読み切り短編{完結してるもの})と(中編{完結してるもの})に章を振り分けます。 それ以外のもう少し続けたいお話しなどは、(最近更新。)に残します。 最新のお話しも(最近更新。)に...。 こちらに書いたお話しから、本編を書く可能性もあります。

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【完結】ハッピーエンドのその後は・・・?

夜船 紡
恋愛
婚約者のいるアイザックに惹かれ、秘密の愛を育んでいたクリスティーヌ。 ある日、アイザックはクリスティーヌと生きることを決意し、婚約者であるイザベラに婚約破棄を叩きつけた。 障害がなくなった2人は結婚し、ハッピーエンド。 これは、ハッピーエンドの後の10年後の話。 物語の終わりが本当に幸せなのだという保証は、どこにもない。

処理中です...